ワークポート、IT系人材の転職市場動向報告<2009年3月度>
IT系求人・転職サイト『IT転職ナビ』を運営するワークポート(東京都品川区、田村高広・代表取締役社長 CEO)は、人材紹介サービスと求人メディアの運営を通して、転職市場に流入してくるIT系人材、企業の採用状況、求人広告メディアの動向を調査し、エンジニアを中心とするIT系人材の雇用・採用状況を多面的に分析、定期的に発表してまいります。
■ 転職市場におけるIT系人材の流動
未曾有の不況・円高によって、日本の主だったメーカーが大きな打撃を受けている現状に、製造業と密接な関わりを持つ制御・組込系エンジニアは窮境に陥っている。特に業務請負(個人事業主)や技術者派遣として就労していた多くのエンジニアが「担当案件が無くなった」ことを理由に転職市場に流入している。現職中や正社員として就業していても「次の案件の見通しが立たない」といった企業への不信感から転職活動を開始する人も多く、制御・組込系エンジニアの抱く不安の大きさがうかがえる。
また、不況に強いと言われているゲーム業界でも、外資系ゲーム会社が日本での事業縮小を始めている。大手米系ゲームメーカーは日本での開発部隊撤退を決定し、リストラを敢行。韓国系オンラインゲーム企業数社も日本からのサービス撤退を決めた。このため、多くの優秀なゲーム系人材が転職活動を余儀なくされている状況ではあるが、ゲーム業界には業績好調な企業も多数存在し、採用意欲も高いため、比較的スムーズに転職を成功させるケースが多い。
好調と思われていたゲーム業界にまで不況の影響が出始めたことにより、業界・業種を問わず、多くの人材が転職市場に溢れている。このため、必然的に競争倍率は上がり、求職者たちの転職活動が長期化する傾向が強まっている。
■ 中長期的な採用戦略
多くの企業が採用計画の抜本的な見直しや採用の休止を迫られている中、内資系ゲーム企業と、通信・医療業界に特化したSI/NI/システム開発企業では、多くの企業が現在も積極採用を行っている。ゲーム、通信、医療業界は「不況の影響を受けにくい」という優位性のみならず、求職者が多い昨今の市況を好機と捉え、先を見通した募集を行うことで優秀な人材を確保しよう、という採用戦略が伺える。
また、積極採用を続ける企業では、中長期的な視野で継続的に募集を行っている企業が多い。特定の案件・事業に対する人材を募集するのではなく、「採用後、既存案件の中から適したプロジェクトをアサインする」スタイルで採用するケースも目立ち、これによって「案件が発生してから募集をかけても、採用が間に合わない」という問題の解決を図るだけでなく、「優秀な人材が採用できれば、新たな案件を受注できる」という目論みもあるようだ。
■ 求人メディアの動向
各企業の採用予算が下がり、求人広告出稿量も落ち込む中、求人メディアではサービスの充実・拡大で事態の打開を図ろうという動きが顕著だ。最近では特に、初期費用を抑えた成果報酬型のサービスが続々とリリースされている。初期費用を低価格に設定し、採用成功報酬料を一律料金とするサービスや、初期費用無料の完全採用成功報酬制サービスなども登場している。
また、スカウトメール送信対象を「1ヵ月以内に企業への応募実績のある<積極活動中>の登録者のみ」に限定するサービスも登場した。これによって、活動休止中の登録者など、レスポンスへの期待値が低い人材へのスカウトを減らすことができれば、より効率的な採用活動に繋がるだろう。
■ 新たなる課題
求職者の増加により、採用企業は応募者の確保が容易になったが、実際には求めるスキル・志向性を持つ人材の採用には至っていないケースも多い。しかも、求職者の増加は応募過多とも呼べる状況を発生させており、採用担当者は書類選考だけでも多くの時間・労力を割かれ、大きな負担となっている企業も少なくない。このため、採用担当者にとっての課題は、これまでの「応募者の確保」から「いかに低コスト、且つ採用業務工数をかけずに採用するか」へと移行しつつある。
こうした背景のもと、人材紹介会社に期待される要件も、「応募者数」から「書類通過率(応募者とのマッチング)」へと推移している。書類通過率の向上は、求人メディアでは精査することができず、コンサルタントを介した人材紹介だからこそ提供が可能な付加価値といえる。また、選考過程で発生する課題提出や適性検査の実施において、「求人メディアからの応募者よりも、人材紹介会社経由の応募者の方が期日を守る傾向が強い」として、人材紹介サービスが評価されている。
一方の求人メディアでも、書類一次選考代行などの採用業務アウトソーシングに乗り出す動きがあり、新たな付加サービスとして注目されている。
ワークポート http://www.workport.co.jp/ /同社プレスリリースより抜粋・4月28日