グローバル就業実態・成長意識調査
日本のはたらく幸せ実感はなぜ低い?国際比較調査を発表
日本企業の組織文化がはたらく幸せ実感を下げていることが判明
特に、非管理職のはたらく幸せ実感が低く、不幸せ実感を上げる要因に
株式会社パーソル総合研究所(本社:東京都港区、代表取締役社長:萱野博行)は、「グローバル就業実態・成長意識調査 -はたらくWell-beingの国際比較」の結果を発表します。
パーソル総合研究所では、2022年11月に、日本を含むアジア太平洋地域(APAC)および、欧米地域を含めた世界18ヵ国・地域の主要都市における就業実態・成長意識調査の結果を発表しました※1。その結果、日本のはたらく幸せ実感は他国に比べて低いことがわかりました。今回の調査では、昨年の調査データを用いて、「なぜ、日本のはたらく幸せ実感は低いのか?」を明らかにすることを目的に実施しました。
※1 パーソル総合研究所「グローバル就業実態・成長意識調査(2022年)」
【主なトピックス】
- 日本企業の特徴的な組織文化である「権威主義・責任回避」は、就業者(特に非管理職)のはたらく幸せ実感を低下させ、不幸せ実感を高めている
- 日本の就業者の「寛容性」は18カ国・地域の中で2番目に低く、異質な他者と積極的に関わろうとしない傾向が顕著にみられ、職場における相互尊重が低くなる要因に
- 日本は、他国と比べ、学習投資をしていても仕事や働き方の選択肢の増加につながらない傾向がみられた
【主なトピックス(詳細)】
1. 日本企業における特徴的な組織文化は、他国・地域と比べ「権威主義・責任回避」が相対的に強く、「職場の相互尊重」などが弱い点が、はたらく幸せ実感が低い一因となっている
① 日本の組織文化は、韓国と並んで「上層部の決定にはとりあえず従う」「物事は事前の根回しによって決定される」といった「権威主義・責任回避」が比較的高い傾向。
② 日本と18ヵ国・地域全体の組織文化得点の差分をみると、日本でははたらく幸せ実感とマイナスに相関する組織文化が相対的に高く、プラスに相関する組織文化が低い。日本は他国・地域と比べ、職業生活における幸福感を低下させる組織文化ほど強く、この点が日本の職業生活における幸福感が低い一因として考えられる
③ 日本において「権威主義・責任回避」の組織文化が強い場合、一般社員・従業員のはたらく幸せを感じる割合が低下し、不幸せを感じる割合が高まるが、管理職にはそのような傾向はみられない。「権威主義・責任回避」の組織文化のもとでは、特に非管理職のはたらくWell-beingが悪化し、日本において若手のはたらくWell-beingが低い遠因になっていると考えられる。
2. 日本の就業者の「寛容性」は18カ国・地域の中で2番目に低く、異質な他者と積極的に関わろうとしない傾向が顕著にみられ、職場における相互尊重の組織文化が低くなる要因に
① 異質な他者への寛容性をみると、「自分とは考え方や好み、やり方が違う人とも積極的に関わる」は、日本で最も非寛容な回答が多かった一方、「考え方や価値観の異なる人とは付き合わないようにしている(肯定ほど非寛容)」は、インドネシアに次いで2番目に寛容な回答が多かった。日本は、異質な他者と積極的に関わろうとはしないが、進んで付き合いを避けることもしないという特徴がうかがえる。
② 就業者の寛容性(異質な他者への非排他性)が高い国・地域ほど、はたらく幸せ実感が高く、はたらく不幸せ実感が低い傾向がみられた。異質な他者への寛容性は、他者への信頼感を高め、協調行動を円滑にし、集団の安定や統合、目標達成に貢献することが先行研究で指摘されている。日本の寛容性は香港に次いで2番目に低かった。
3. 日本は、他国と比べ、学習投資をしていても仕事や働き方の選択肢の増加につながらない傾向がみられた
① 日本は、他国・地域と比べ、学習投資をしていても仕事や働き方の選択肢の増加に繋がっていない傾向がみられた。企業横断的な職業意識が薄く、ジョブ型ではなくOJTを中心に組織内部で能力向上を行う日本では、業務外の学習・自己啓発が仕事の選択肢の増加に繋がりづらいと考えられる。この点が、学習意欲の低さを引き起こす一因となっていると考えられる。
② 日本においては、高所得者、正規雇用者、高学歴者ほど業務外学習を実施。日本の学習・自己啓発やその支援がホワイトカラーのエリート層に偏ってきたことが指摘されているが、国際的にも日本の業務外学習実施率は所得・雇用形態・最終学歴による差が大きいことが確認された。
【調査結果からの考察と提言】
日本の特徴的な「権威主義・責任回避」の組織文化ははたらく幸せ実感に悪影響
組織文化や雇用慣行について分析すると、日本は「上層部の決定にはとりあえず従うという雰囲気がある」「社内では波風を立てない事が何よりも重要とされる」などの文化的特徴が強く、日本の就業者のはたらく幸せ実感が低い主な要因であることが示唆された(とりわけ職位の低い若手層のはたらく幸せ実感が低く、不幸せ実感が高い)。日本の就業者は「所属組織に自分を捧げる」ことを調査国・地域中最も重視しない(帰属意識が低い)傾向とも整合すると考える。
日本の就業者の成長実感は低く、業務外の学習・自己啓発に対する自己投資も最も低い
「権威主義・責任回避」の組織文化は、成長実感の低さとも関連しており、就業者の自発的な学習意欲を阻害している可能性が示唆された。 また、日本では企業横断的な職業意識が薄く、組織内部でのOJTを中心とした能力向上を行う雇用慣行の影響もあり、業務外の学習が仕事の選択肢増加に繋がりにくいことが示唆された。成長実感はいずれの国・地域でもはたらく幸せ実感と相関しており、これらの点も日本のはたらく幸せ実感の低さと関連すると考えられる。
日本の就業者の寛容性※3は18カ国・地域で2番目に低く、はたらく幸せ実感の低さと関連
就業者の寛容性が高い国・地域ほど、職場の相互尊重の組織文化が強く、はたらく幸せ実感が高く不幸せ実感が低い。先行調査では、日本の人生における幸福感が低い一因として「他者への寛容性」の低さが指摘されているが※4、本調査からはたらくWell-beingにおいても同様の傾向が確認された。DI&Eの観点からも、組織や社会において、異なる意見や背景、特性を持つ個人やグループを受け入れ、尊重することがはたらく幸せ実感やワーク・エンゲージメントの向上、さらには、組織のパフォーマンスやイノベーションにも寄与すると考える。
※3 寛容性:異質な他者への非排他性
※4 国連「World Happiness Report 2022」
【調査概要】
調査名称:パーソル総合研究所 「グローバル就業実態・成長意識調査 -はたらくWell-beingの国際比較」
調査目的:世界18ヵ国・地域の主要都市の人々のはたらくWell-beingの実態やその要因について明らかにすることを通じて、日本のはたらくWell-beingがなぜ低いのかを考察する。
調査手法:調査会社モニターを用いたインターネット定量調査
調査時期:2022年 2月10日 - 3月14日
調査対象エリア :18ヵ国・地域(調査都市)
【東アジア】日本(東京、大阪、愛知)、中国(北京、上海、広州)、韓国(ソウル)、台湾(台北)、香港
【東南アジア】タイ(グレーターバンコク)、フィリピン(メトロマニラ)、インドネシア(グレータージャカルタ)、マレーシア(クアラルンプール)、シンガポール、ベトナム(ハノイ、ホーチミンシティ)
【南アジア】インド(デリー、ムンバイ)
【オセアニア】オーストラリア(シドニー、メルボルン、キャンベラ)
【北米】アメリカ(ニューヨーク、ワシントン、ロサンゼルス)
【ヨーロッパ 】イギリス(ロンドン)、ドイツ(ベルリン、ミュンヘン、ハンブルグ)、フランス(パリ)、スウェーデン(ストックホルム)
サンプル数:各国・地域 約1,000サンプル
割付:性・年齢による均等割付、収入による緩やかな割付(ソフトクォータ)
対象条件:・20~69歳男女
・就業している人(休職中除く)
・対象国に3年以上在住
実施主体:株式会社パーソル総合研究所
◆本リリースの詳細は、こちらをご覧ください。
(パーソル総合研究所 / 4月12日発表・同社プレスリリースより転載)