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ニュース
人事サービス 人事労務・管理
掲載日:2005/03/07

「成果主義」長期視点ならやる気がでる
3大都市圏の社員1000人に意識調査

組織・人事コンサルティングサービスを提供するクレイア・コンサルティング(東京都港区、草間徹・代表)はこのほど、3大都市圏の民間企業に勤める社員1000人に対して「成果主義と職場風土に関する意識調査」を実施、その結果を分析しました。

導入効果が問われている成果主義ですが、能力評価と連動することによって「処遇への不満」を抱く社員が少なくなり、上司は部下の育成に熱心になることがわかりました。反対に、短期的な結果に偏った成果主義では「処遇への不満」が増加することがわかりました。また、成果主義を導入した企業では、「勝ち組」と「負け組」の選別が進んでおり、自らの能力、将来のキャリアを認識できない社員が「負け組」意識を持ってしまうことがわかりました。

今回の調査から、成果主義によって社員のやる気を引き出すためには能力評価や人材育成のような長期的視点が不可欠であり、種まき(育成)することをせずに果実(成果)だけを刈り取ろうとするタイプの成果主義は、大幅なモチベーションダウンを引き起こすことが明らかになったと言えます。

以下はその調査結果です。

成果主義で渦巻く不満は能力評価の反映で解消する――今回の調査では、評価と処遇が上下に大きく変動する人事制度を「成果主義」と定義しました。さらに、能力評価も処遇に反映される「能力反映型」成果主義と、短期的な結果評価を中心に処遇が上下する「短期結果型」成果主義に分類しました。まず、成果主義企業の社員が給与・賞与、人事異動、昇進・昇格などの人事処遇にどの程度不満を感じているかを分析しました。

「能力反映型」成果主義の企業では、人事処遇に対する不満の声が30%前後と少ない一方で、「短期結果型」成果主義の企業では、人事処遇に対する不満の声が50から60%と圧倒的に多く、「不満なし」の4倍に達しています。給与・賞与に関する不満の声は、「能力反映型」成果主義を導入した企業と年功主義を続ける企業と比較すると、半分以下と低くなっている半面、人事異動や昇進・昇格に関する不満の声は「短期結果型」成果主義を導入した企業と年功主義を続ける企業と比較すると20から25%も高くなっていることがわかりました。 社員は、成果主義によって評価や処遇の格差が開くことは容認しているが、それが短期的な視点で行われることには強い不満を感じていると言えます。

能力重視の成果主義は、上司の部下育成意欲を高める――「成果主義を導入すると、上司は自分自身が成果をあげることに注力し、部下育成がなされなくなる」という成果主義批判がよく聞かれます。ここでは、成果主義企業における部下育成や能力開発の実態を分析しました。

「短期結果型」成果主義の企業では、部下に対してアドバイスやキャリアアップの支援を行っている上司はわずか20%程度であるのに対し、「能力反映型」成果主義の企業では、上司の部下育成が積極的になされており、50%程度の部下が「上司は的確なアドバイスやキャリアアップの支援をしてくれる」と回答しています。また、年功主義を続ける企業では、「短期結果型」成果主義企業と同じくらい部下育成が行われていないことがわかりました。「能力重視」と「格差がつく成果主義」が組み合わされることで、上司は部下育成に真剣になるのだと考えられます。そのどちらかを欠いたとき、上司は部下育成のパワーを緩めてしまうのでしょう。

次に、社員に「能力やキャリアに関するアドバイスを受けたい相手」について聞いたところ、第1位は「外部の専門家」であり、「直属の上司」は第2位でした。社員は、「直属の上司」による指導やアドバイスだけで満足しているとは言えないようです。年功主義では能力開発やキャリアアップは会社主導で行われていましたが、成果主義の導入とともに、社員の自己責任が強調されるようになってきました。外部の専門家への期待の大きさは、会社や上司だけに頼っていては成果主義時代を生き残っていけないという社員の危機意識の現れであると思われます。

今後のキャリアパスや身につけるべき能力が不明確な社員が「負け組」化する――成果主義は「勝ち組」と「負け組」の選別を加速します。今回の調査でも、「社内で『勝ち組』と『負け組』が明確に選別されている」と感じている社員は、年功主義企業ではわずか12%であったのに対して、成果主義企業では40%以上に達しています。 自分を「負け組」と思ったとき、モチベーションは大きくダウンするでしょう。ここでは、社内において自分自身を「勝ち組」と考えている社員と、「負け組」と考えている社員に分類し、彼らが「勝ち組」意識や「負け組」意識を持つに至る背景を分析しました。

25%の社員が「勝ち組」意識を持っていますが、一方で「負け組」意識をもつ社員も10%弱に達しています。企業の競争力や組織風土への影響を考えると、明らかにやる気を失った「負け組」社員が1割近くも存在するという状況は問題と言えるでしょう。彼らの意識を分析してみると、「勝ち組」は今後のキャリアパスや身につけるべき能力を明確に認識していますが、「負け組」は今後のキャリアパスが不透明で、自らに必要な能力も把握できいていないことが明らかになりました。

社員は将来の道筋を想定して「勝ち組」「負け組」という意識を抱いていると言えます。しかし成果主義は、現在の貢献に報いてくれますが、将来の道筋は示してくれません。能力開発やキャリアパスという長期的な視点が欠落したままの成果主義を続ければ、「負け組」意識の社員を大量に発生させてしまうのではないか、そんな懸念を強く感じます。


(クレイア・コンサルティング http://www.creia.jp/同社プレスリリースより抜粋・3月7日)

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