社会保険の適用拡大に伴い「見直しを行った」事業者のうち約7割が適用回避策を実施~『社会保険の適用拡大への対応状況等に関する調査』及び『社会保険の適用拡大に伴う働き方の変化等に関する調査』結果:JILPT
労働政策研究・研修機構(JILPT)では、『社会保険の適用拡大への対応状況等に関する調査』(事業所調査)及び『社会保険の適用拡大に伴う働き方の変化等に関する調査』(短時間労働者調査)を実施しました。
<事業所調査結果のポイント>
(適用拡大に伴う雇用管理上の見直し状況)
●一定の要件を満たす短時間労働者に対する社会保険の適用拡大が義務づけられた「特定適用事業所等」のうち、社会保険の適用拡大に伴い、雇用管理上、「見直しを行った」割合と「特に見直しを行わなかった」割合は、ともに1/3程度となった。
●「見直しを行った」事業所の内容を見ると(複数回答)、「対象者の所定労働時間を短縮した」等の適用回避策を実施した事業所が約7割あった一方、「所定労働時間を延長した」等の適用拡大策を実施した事業所が約6割あり、両方を実施した事業所が約半数となった。
(制度特例の活用意向)
●「特定適用事業所等以外の事業所」に、労使合意に基づき社会保険の適用拡大を行うことができる制度特例の認知度を尋ねたところ、半数以上が「内容まで知っている」と回答した。
●制度特例の適用を「既に申請した」か「申請する見通し」の事業所にその理由を尋ねると(複数回答)、「短時間労働者の処遇を改善し人材の確保・定着を図りたい」が最多となった。
(更なる適用拡大への対応意向)
●短時間労働者を「雇用している」か「今後、雇用する予定がある」事業所に今後、社会
保険の更なる適用拡大が行われた場合の対応を尋ねると、「適用拡大の内容や時期等にも
依るが、基本的には短時間労働者の希望に基づき、出来るだけ加入してもらう」が4割
を超え、これに「何とも言えない・分からない」が1/3程度で続いた。
●「何とも言えない・分からない」と回答した事業所に対応方針の決定要素を尋ねると(複数回答)、「短時間労働者自身の希望」が5割超でもっとも多く、これに「労働力確保の状況や見通し」が5割程度で続いた。
<短時間労働者調査結果のポイント>
(適用拡大に伴う働き方の変化)
●適用拡大前の第1号被保険者、第3号被保険者等のうち、社会保険の適用拡大に伴い、
働き方が「変わった」者の半数以上が、「厚生年金・健康保険が適用されるよう、かつ手取り収入が増える(維持できる)よう所定労働時間を延長した」と回答し、「適用されないよう所定労働時間を短縮した」を上回った。社会保険に加入した理由としては(複数回答)、「もっと働いて収入を増やしたい」と「将来の年金額を増やしたい」がともに4割を超えた。
●働き方の変化を被保険者区分別に見ると、第1号被保険者は「所定労働時間を延長した」が2/3を超えたのに対し、第3号被保険者でも同様の回答が半数を超えた一方、「所定労働時間を短縮した」も1/3超となった。
<調査の概要>
1.調査の趣旨・目的
「公的年金制度の財政基盤及び最低保障機能の強化等のための国民年金法等の一部を改正する法律」(平成24年8月公布)に基づき、平成28年10月1日より、常時の雇用者規模が501人以上の企業で、社会保険(厚生年金・健康保険)の適用範囲が、(これまでの週の所定労働時間が通常の労働者の(概ね)4分の3以上(一般に週30時間以上等)から)、(1)週の所定労働時間が20時間以上、(2)月額賃金が8.8万円以上、(3)雇用(見込み)期間が1年以上のすべての要件を満たし、学生でない短時間労働者に拡大された。また、「公的年金制度の持続可能性の向上を図るための国民年金法等の一部を改正する法律」(平成28年12月公布)に伴い、500人以下の企業についても、労使合意に基づき企業単位で、上記の要件を満たす短時間労働者に対する適用拡大が選択できるようになった。こうした制度改正に伴い、事業所における短時間労働者の雇用管理のあり方や、短時間労働者自身の働き方(就業調整等)にはどのような変化が見られるのか、その実態を把握するため、事業所とそこで働く短時間労働者等を対象に、表題の調査(厚生労働省年金局及び雇用環境・均等局要請)を実施した。
2.調査対象(標本の抽出):
16産業(農林漁業、鉱業を除き、公務を含む)における、5人以上規模の全国の事業所2万社(民間信用調査期間所有のデータベースから産業・規模別に層化無作為抽出)と、そこで働く短時間労働者約5.6万人。
3.調査期間:
平成29年7月21日~9月7日(原則として6月末現在の状況を記入)
4.調査方法:
郵送による調査票の配布・回収
5.有効回答数:
事業所5,523社(27.6%)短時間労働者6,418人(11.5%)
◆ 本調査の詳細は、こちら(PDF)をご覧ください。
(独立行政法人労働政策研究・研修機構 http://www.jil.go.jp/ /2月23日発表・同機構プレスリリースより転載)