シェアリング・エコノミー等が雇用・労働市場に与えるインパクト~多様なプロフェッショナル人財による「デジタル+α」の価値創造で世界をリードする:経済同友会
公益社団法人経済同友会は、提言「シェアリング・エコノミー等が雇用・労働市場に与えるインパクト」を5月26日に発表しました。
<シェアリング・エコノミー等が雇用・労働市場に与えるインパクト(概要)>
1.新産業革命やシェアリング・エコノミー等が雇用・労働市場に与えるインパクト
(1)新産業革命やシェアリング・エコノミー等の進展によって生まれる産業・事業を中心に、雇用を前提としない就労形態と働き方が急速に拡大する。
(2)「デジタル+α」の価値創造を担うプロフェッショナル人財に対する需要 が拡大し、その獲得競争が激化する。
(3)産業構造の変化のスピードが加速し、労働市場も柔軟化が進む。
⇒メンバーシップ型雇用からジョブ型雇用へのシフト、プロフェッショナル人財を中心とした「人財のシェアリング」が進展していく。
2.2025年以降の多様な働き方の姿
こうしたインパクトによって、組織で働く人財は、以下の9タイプに分類されていく(各人財の専門性と就労形態による分類)。
【企業内プロ】
(例)高度プロフェッショナル制度の対象となるような人財
【兼業型プロ】
(例)左記「企業内プロ」が、兼業・副業で、ベンチャー企業やNPOで働いているイメージ
【自立型プロ】
(例)高度な専門能力(IT、法務、マーケティング、人事コンサル、財務等)を持ち、個人事業主(インディペンデント・コントラクター)として働く人財
【セミ・プロ】
(例)裁量労働制の対象となるような人財
【高度コンティンジェント・ワーカー】
(例)賃金水準の高いスキルを持ち、契約社員、派遣社員、パートタイム社員等の働き方を選択している人財
【高度フリーランサー】
(例)賃金水準の高いスキルを持ち、フリーランスで働く人財
【ワーカー】
(例)雇用された一般社員
【コンティンジェント・ワーカー】
(例)一般的な契約社員、派遣社員、パートタイム社員
【フリーランサー】
(例)一般的なフリーランサー
3.こうした多様な働き方を見据え、2025年に向けて企業、個人、政府がすべきこと
<企業>
●メンバーシップ型人事制度の見直しとプロフェッショナル人財の拡大
・優秀な人財の外部採用を可能にする採用・育成・登用の制度設計
・職務や役割等を明記した契約による権利義務関係の明確化
・企業内プロの育成プログラム・キャリア教育の導入
・成果に応じた公正な評価と適正な報酬の実現
・新卒一括採用偏重・一括退職の見直し
・通年採用・ダイナミックな中途採用等の展開
●生産性が高くイノベーティブな未来志向の組織・風土への変革
●自立型プロとの協業促進
・自立型プロの相互評価の実施による透明性の確保
・自立型プロを惹き付ける魅力ある福利厚生オプションの提示
●企業における人財マネジメント力の向上
・三つのT【Technology(顧客ニーズを捉えた技術開発)、Talent(多様な人財の活用)、Time(迅速な意思決定)】の最適化
・グローバルレベルで、AI/ DBMS等を活用し、タレント・マネジメントの仕組みを可視化
・多様な就労形態の人財のエンゲージメント向上に結び付く、客観的な市場価値に基づいた評価・報酬制度の確立
・兼業や複数職務制度の導入
・守秘義務等の契約規程の管理
<個人>
●ライフステージに応じた自立したキャリア・デザインの策定
・自らが主体的に最適な就労形態と働き方を選び取っていくという意識の醸成
・社会人となる前の教育でのキャリア・デザインに対する意識の醸成
●プロフェッショナルとしての能力習得と継続的自己研鑽
・複数の分野やテーマに跨った複線的なスキルや専門性を身に付けるための自己研鑽
●守秘義務の遵守等のプロとしての矜持
<政府>
●自立型プロ、高度フリーランサー、フリーランサー等の雇用を前提としない就労形態と働き方を支える権利保護の整備
・市場ルール(独占禁止法や下請法等)の運用面の適正性確保
・自立型プロ等の交渉力の確保(役務の最低対価や組合・団体の組織を定める法律等の整備、労働者過半数代表制の見直し等)
●欧米型を参考にした契約付き「インハウス・プロフェッショナル」(企業内プロ)の拡大および法的基盤整備
・高度プロフェッショナル制度の創設等を柱とする「労働基準法改正案」の早期成立
●「適時・適所適財」を可能にする労働市場の再構築
・プロフェッショナル人財に関する人財バンクや職能別協会組織等の推進
・多様な人財のマッチング機会の向上(同一価値労働同一賃金の浸透、企業等が求めるスキルや能力等の労働条件に係るウェブサイトの機能向上等)
・企業横断的な高度かつ汎用的なプロフェッショナル・スキル教育の実施
・ワーカー、コンティンジェント・ワーカー、フリーランサーの人財タイプに対する支援の強化(トランポリン型のセーフティネット整備、公的職業訓練機関と企業との連携強化等)
●新しい就労形態と働き方に対応した社会インフラの整備
・個人認証システムや評価システム等の信頼性強化
・雇用を前提としない働き手に対する労働保険や社会保険の適用
・保険制度・小規模企業共済制度や支払い・決済制度等の整備
●わが国のブランディング強化および特区制度の活用による多様な就労形態と働き方の推進
4.企業経営者の行動宣言
われわれ企業経営者は、新産業革命、シェアリング・エコノミー等の進展に伴い、産業構造が急激に変化している現状を認識し、最大のパフォーマンスを生み出す、自社に最適な人財のポートフォリオを「適時・適所適財」に構築していくことが重要になる。その際、多様な人財の力が最大限に発揮される環境整備を行うとともに、「デジタル+α」の価値創造の実現により、グローバル競争に打ち勝っていくことが重要になるため、以下の経営者としての行動宣言を行う。
1.「デジタル+α」の価値創造を組織に持ち込めるプロフェッショナル人財の獲得・育成を強化し、自社の企業戦略に基づく最適な人財のポートフォリオを実現する。
2.インディペンデント・プロフェッショナル(自立型プロ)等、外部人財との協働を促進するなど多様性を取り入れ、「デジタル+α」の新しい価値を創造できる未来志向型のイノベーティブな組織・風土に変革する。
3.多様な就労形態の人財のエンゲージメントの向上に結び付く、客観的な市場価値に基づいた評価制度および報酬制度を確立する。
4.自社の雇用・労働慣行を抜本的に見直し、スマート・ワークを可能にすることで、生産性向上と「デジタル+α」の価値創出に結び付く働き方改革を実現する。
5.人財のダイバーシティ(就労形態を含む)は経営戦略であると認識し、自らと社員全員の意識改革を行う。
◆本リリースの詳細は、こちらをご覧ください。
(公益社団法人 経済同友会 http://www.doyukai.or.jp/ / 5月26日発表・同会プレスリリースより転載)