2018年卒学生を主対象とするインターンシップの実施(予定)、半数以上が「実施(予定あり)」~企業・大学アンケート結果に見る『2017年卒採用の状況・2018年卒採用の展望』:学情
東京・名古屋・大阪・福岡の4都市で開催された株式会社学情主催「就職講演会・名刺交換会」には、多くの企業採用担当者ならびに大学就職支援担当者が来場した。各地区の来場者を対象に、採用活動状況や就職指導状況に関するアンケートを実施。その調査結果をもとに、2017年卒採用の現状や2018年卒採用の展望等についてレポートする。
1.企業アンケート結果
■2017年卒採用の状況について
経団連の「採用選考に関する指針」の改定により、3月採用広報解禁、6月選考解禁となった2017年卒採用。選考解禁から3ヵ月ほど経った時点での今回の調査では、各社の活動状況は「既に終了」が28.7%、「継続中」は66.0%となった。継続中が過半数を占めてはいるが、前年同時期調査では「既に終了」が14.5%、「継続中」が77.7%であったことを踏まえると、選考解禁時期の2ヵ月前倒しによってより早く活動を終えた企業が増加したことがうかがえる。「内々定を出した人数」「内々定承諾者数」についても、採用予定数に占める各人数の割合は前年度と比べ高まりが見られる。
数値だけを見れば採用活動をしやすい環境になったと言えそうだ。各社からも「スケジュールが短くなった分、学生が絞り込みを掛けてから企業セミナーに参加するため、最初から志望度の高い学生と出会いやすかった」「前年度は広報解禁から選考までの期間が長く間延びしてしまったが、今年度は学生の自社への気持ちを途切れさせずに内々定へと繋げられた」「6月に大手企業の選考から漏れた学生が相次いでエントリーしてくれ、6月以降の巻き返しが図りやすかった」といった肯定的な意見が聞かれた。
一方で「母集団形成に苦労した」「スケジュールがタイトになり、他社と選考がバッティングして学生を取りこぼした」「自社理解や志望動機形成を促す時間がなく、辞退者が増加した」といった意見もあり、一様に賛成というわけではないようだ。
採用広報解禁までの間に少しでも学生との接点を作ろうと、各社が注力したものがインターンシップである。2017年卒学生を主対象とするインターンシップを実施した企業は43.0%と半数に達する勢いだ。採用広報解禁日が12月1日→3月1日へと繰り下げられた2015年卒採用からインターンシップ実施企業は増大し、弊社調査では実施企業の割合は3年連続で上昇している。
しかし、「インターンシップを行ったことで自社への認知度、志望度が高まり、結果的に採用に結び付いた」というケースは珍しくないが、実施に関しての課題もあり気軽には実施しづらいものでもある。インターンシップ実施における課題として、「マンパワー不足」(58.1%)が1位に、次いで「社員の協力が得づらい」(35.1%)が上げられた。「採用に繋がらない」は24.2%に留まり、実施はしたいが人的要因により苦慮しているという企業が多いようだ。
■2018年卒採用の展望について
採用スケジュールの変動はなく、3月採用広報解禁、6月選考解禁で進行することが決まった2018年卒採用。大卒の求人倍率は2015年卒=1.61倍、2016年卒=1.73倍、2017年卒=1.74倍(出所:リクルートワークス研究所「ワークス大卒求人倍率調査」)とここ3年は高水準を維持しているが、2018年卒採用ではさらに採用意欲が高まりそうだ。採用予定数の見通し(前年度比)については、「並」が66.1%と過半数を占めるものの、「増やす」(18.0%)が「減らす」(2.9%)を15.1ポイント上回り、増加基調にある。採用予算(前年度比)についても、「増やす(「101~119%」「120%以上」の合計)」(20.7%)が「減らす(「80~99%」「51~79%」「50%以下」の合計)」(8.8%)を11.9ポイント上回った。採用予定数、採用予算の両側面から次年度の新卒採用に向けた各社の積極的な姿勢がうかがえる。
インターンシップの実施意欲も旺盛だ。2018年卒学生を主対象とするインターンシップの実施(予定)の有無について、「実施している・実施予定あり」が52.5%と過半数に達した。前述の2017年卒学生を主対象とするインターンシップ実施企業=43.0%を10ポイント近く上回っている。実施(予定)時期については「2016年12月~2017年1月」(50.5%)と「2017年2月」(48.0%)が「2016年7~9月」(46.2%)を上回った。インターンシップの主流ともいえる夏休み期間以上に冬期開催が盛り上がりを見せそうだ。2017年卒採用が長引き夏期開催に踏み出せなかったことや、2018年卒採用スタートが近づいた時期での開催により学生への印象付けを強化しようという意図が読み取れる。
2.大学アンケート結果
■2017年卒学生の状況について
各社の採用意欲がよりいっそう高まり、さらに採用スケジュールの短縮化で就職活動がスピーディーに進んだことを受け、2017年卒学生の就職活動環境は売り手市場に拍車が掛かった。各大学へ調査した内々定状況(前年度比)は「非常に良い~少し良い」が69.6%と、「悪い~少し悪い」(1.7%)を大幅に上回った。前年の同調査では「悪い~少し悪い」という大学が27.0%あったことを踏まえても、今年度はことのほか内々定を獲得しやすい環境であったと言える。
ただし何もせずに容易に内々定獲得に至ったわけではない。就職相談件数について「非常に増えた~少し増えた」(42.4%)が「減った~少し減った」(7.6%)を大きく上回っている。エントリーから選考までの過密スケジュールの中で学生たちはキャリアセンターのサポートをうまく受けながら就職活動を進めていったようだ。特に多かった相談がエントリーシート添削依頼である。「キャリアセンター開室前から添削希望者が列を成し、こんな状況は過去になかった」という大学もあったほどで、3月は多くの大学が添削対応に追われることとなった。
2017年卒学生の就職活動スケジュールに関しては「活動を早めに終えられた学生は、その後のゼミ活動や卒論制作に集中しやすくなった」「夏の暑い時期の活動を避けられた」「選考がうまくいかなくても再チャレンジの機会が増えた」など肯定的な意見が多く上げられた。
一方で「教育実習と選考期間が重なった」「海外留学から帰国した学生が選考に間に合わなかった」という声もあり、一部の学生が不利益を被る状況も生まれている。
3. 企業・大学アンケート結果
■「インターンシップと採用活動の関連付け」について
今年に入り、政府や経済団体等の間で議論されている「インターンシップと採用活動の関連付け」の是非。経団連の「『採用選考に関する指針』の手引き」では、“(広報活動開始日より前に実施する)インターンシップは、産学連携による人材育成の観点から、学生の就業体験の機会を提供するものであり、社会貢献活動の一環として位置付けられるものである。したがって、その実施にあたっては、採用選考活動とは一切関係ないことを明確にして行う必要がある”と記されており、採用との関連付けを否定している。一方で海外では採用活動の一環としてのインターンシップ実施が一般的だ。日本でもインターンシップ参加者限定のセミナーや選考を実施したり、そのまま内定を出すといったケースもあり、採用活動との関連付けはグレーな状態と言える。元々「ミスマッチを減らすうえでインターンは効果的」「社会貢献だけでインターンを行うのは無理がある」といった声もあり、今後インターンシップの在り方はこの議論を皮切りに変化する可能性がある。
企業採用担当者、大学就職支援担当者はこの「インターンシップと採用活動の関連付け」についてどう思っているのであろうか。各者とも現時点では「どちらとも言えない」が半数近くを占めるが、「賛成(賛成+どちらかと言えば賛成)」と「反対(反対+どちらかと言えば反対)」を比較すると、企業は「賛成」が43.3%、「反対」が12.5%、大学は「賛成」が35.1%、「反対」が19.4%と、企業、大学ともに賛成派が上回っている。賛成派からは「マンパワーや費用などを考慮すると採用に結び付けなければ企業としてメリットがない」「学生にとっても採用に繋がる方がメリットがあり、参加意欲が高まる」「現状として採用活動に結びつけており、建前だけのルールは不要」「就業体験を通して学生の働きぶりが分かり、自社に合っているのであれば採用に繋げていくのは当然」といった意見が上げられた。一方、反対派からは「採用活動の早期化に繋がるだけ。学業にも影響が出る」「インターンを実施する余力のない企業が不利になる」「大手企業、有名企業に学生が流れてしまう」「地方の学生はインターンに参加しづらく、エリアによっても格差が生じる」といった意見が上げられている。社会や仕事を知る上でインターンシップは有効な手段である。どのような立場の学生、企業であっても不利にならないルール作りはできるのか。今後の議論の行方が注目される。
<調査概要>
●調査対象:全国の企業採用担当者
大学就職支援担当者
●有効回答数:企業担当者1,485件
大学担当者361件
●調査方法:「就職講演会・名刺交換会」来場者
へのアンケート配布・回収
●調査期間:東 京/2016年8月23日~8月26日
名古屋/2016年8月30日~9月 2日
大 阪/2016年8月22日~8月26日
福 岡/2016年9月 7日~9月 9日
◆本リリースの詳細は、こちらをご覧ください。
(株式会社学情 http://company.gakujo.ne.jp/ /11月10日発表・同社プレスリリースより転載)