企業は、若年女性の就労意欲・労働生産性が若年男性よりも高いと認識~『若年女性の雇用・育成・定着に関する調査』(大阪府)
労働力人口の減少や女性活躍推進法の施行(2016年4月1日)に伴い、女性の雇用や指導的立場への登用などの取組の進展が予測されますが、女性の活躍の実効性を高めるためには、若年女性(概ね34歳以下)が初職あるいは初職に準じる仕事を継続できることが重要だと考えられます。しかし、若年女性は、その就業観が多様であることに加えて、初職の段階から非正規雇用で就業する人も多いほか、正規雇用の初職を比較的短期間のうちに複合的な要因で離職してしまう現状などもみられ、離職後、円滑に再就職できない場合には、労働市場への参加が困難化するケースが少なからずみられます。
こうした現状に対し、大阪府では、平成27年度より『新たな人材育成プログラム開発事業(「しごと力(※)」開発プロジェクト)』を推進し、仕事や職業の枠を超えて活用できる、汎用的な力を習得する人材育成プログラムの開発に取り組んでいます(※「しごと力」については本資料の最終頁をご参照ください)。
本調査は、上記の問題意識や取組を受けて、企業における若年女性従業員の雇用・育成・定着の現状と、若年女性が雇用され働き続ける上で求められ、汎用性が高いと考えられる仕事上の技能や能力について、企業がどのように認識しているのか明らかにする目的で実施し、その結果を『若年女性の雇用・育成・定着に関する調査(OSAKA女性活躍推進プロジェクトに関する調査)』(資料№150)としてとりまとめました。
○調査結果のポイントと概要
『若年女性の雇用・育成・定着に関する企業アンケート調査』を実施。大阪府内の全業種の国内常用雇用者数50人以上の単一または複数事業所企業2,000社(無作為抽出)を対象に調査票を配布し、242社が回答(有効回答率12.1%)。
(1)女性の活躍推進に対する意識・取組
女性の活躍を推進する体制・部署等の整備が、計画・方針等の策定に先行
●女性の活躍を推進する体制や部署等を整備済みの企業は18.6%で、整備を検討している企業29.9%を含めると48.5%の企業が、整備する意向を有している。
●女性の活躍を推進する計画や方針等を策定済みの企業は13.4%で、策定を検討している企業35.1%を含めると48.5%の企業が、策定する意向を有している。
●現状は、体制や部署等の整備が、計画や方針等の策定にやや先行している。
(2)若年女性の雇用に対する意識・現状
企業は、若年女性の就労意欲・労働生産性が若年男性よりも高いと認識
●若年女性従業員の不足傾向(量的及び質的の両側面)は、資本金規模が1千万円以下の企業、サービス業の企業、創業年2000年以降の企業、経営状況が厳しい企業、若年女性の採用方針が中途採用中心などの属性の企業でみられる。全般的には、量的な側面に対して質的な側面の充足の程度を高める余地がある。
●約8割の企業が、正社員で長期雇用する採用方針を有し、非正規社員よりも正社員を増やす見通しである。製造、建設、運輸、情報通信などの業種では、非正社員を減らし、正社員を増やす見通しを有する。
●約7割の企業に女性管理職が在職し、今後5年間で約3割の企業が女性管理職を増やす意向を有し、創業年の新しい企業は登用に積極的である(創業年2000年以降の企業では47.5%が増加の見通し)。
●就労意欲と労働生産性が高いと考える割合は、若年女性従業員が若年男性従業員を上回る(就労意欲では、若年女性が55.9%であるのに対し若年男性は50.4%/労働生産性では、若年女性が38.8%であるのに対し若年男性は31.6%)。
●女性従業員が収益の向上に直接寄与すると考える割合は55.6%で、サービス業で直接寄与すると考える割合が高い(67.8%)。収益の向上に直接寄与すると考える企業は、若年女性従業員の能力向上に積極的に取り組んでいる。
(3)仕事や企業に対する若年従業員(男女)の貢献と働く力
企業は、女性の働く力が、男性の働く力よりも相対的に高いと認識
●仕事や企業への貢献度が高くなるのは26歳以降で、36歳以上でさらに上昇する。勤続期間が3~5年未満を超えると貢献度が高くなる。既就業者(転職入職者・中途採用者)の貢献度が相対的に高い。
●若年女性従業員に不足している働く力の要素として、主体的な判断や行動、目標設定などがあげられる。
●若年男女間で企業の認識差がみられるしごと力の区分は、女性では、セルフコントロールと気づき力が男性よりも低い(習得できていないと考える割合が高い)。
(4)若年女性従業員の能力向上の取組状況と今後への示唆
若年女性従業員の能力向上の取組はやや限定的
●仕事や企業への貢献度が相対的に低い若年女性従業員の能力向上に取り組んでいる企業は28.2%、内容を検討している企業は12.9%、取り組む必要性を感じていない企業は21.5%である。女性の活躍を推進する体制や部署等の整備及び計画や方針等の策定の取組意向によって差がみられる。
●回答企業の半数以上が、「能力給や成果給の実施」「賃金の引上げ」などの労働条件の改善、「男女や雇用形態間の待遇差の解消」「OJTによる人材育成・教育訓練」「責任ある仕事への配置・分担」など雇用の質を高める取組を実践している。4割前後の企業が、「目標に基づく定期的な指導や管理」「自己啓発の支援」「長期的な人材育成あるいは本人の希望を踏まえた配置や異動」「事業所内・事業所間での異なる仕事・職種への配置転換」など、キャリアの高度化に向けた取組を実践している。上記よりも実施率が低いのは、「Off-JTの機会の提供や利用」「ワークライフバランスの取組」「専門的人材や管理的人材の育成・教育」などである。「女性の活躍を推進する体制や部署等及び計画や方針等を、整備・策定済みか検討中」「若年女性の能力向上の取組に前向き」「若年従業員(男女)の就労意欲が高い」「女性が収益の向上に直接寄与すると考えている」といった企業属性によって、取組に差がみられる。
●上記の取組や企業固有の取組がみられる一方、「マンツーマンの業務指導を負担に感じ離職することが多い」「社内で様々な研修参加の支援をしているが、本人に意欲がなければなすすべがない」「話し合いの場で、自分の意見を主張し人の意見を聞かなかった傾向がある」などの課題を指摘する企業もみられる。
(5)調査結果のまとめと今後の方向性
●人口減少社会下で労働力の確保と経済成長に向けて、潜在的な労働力として、長期的な就業を期待できる若年女性(特に、無業者で就業希望者)に着目することが有効だが、量的な側面だけでなく、雇用や就業の質を高める上で、若年女性に固有の就業観や就業の現状に対応した人材育成の方法の検討と取組が求められる(第1章)。
●仕事に就き働き続けるためには、汎用的な技能・能力の習得が求められる。技能・能力に関する様々な考え方や枠組みがある中で、特に、無業者で就業希望の求職者等には、汎用的な技能・能力の測定結果と仕事にかかわる実務的な経験やワークショップ等を組み合わせ、両者を関連付けた継続的な支援が有効だと考えられる(第2章)。
● 若年女性従業員の働く力は、男性に比べて相対的に高く、継続就業の可能性に疑問を呈する統計的差別や固定観念を払拭し、潜在的な能力を開拓し向上できる余地がある。若年女性の能力向上の取組の進展や雇用・育成・定着の実効性を高める上で、女性の活躍に向けた体制や部署等の整備に加え、具体的な計画や方針等の策定にも取り組み、中長期的な観点から若年女性の働く場と働く力を戦略的かつ社会的に広げ高める必要がある(第3章)。
<報道提供資料>
概要(報道提供資料) [Wordファイル/117KB]
概要(報道提供資料) [PDFファイル/240KB]
<報告書>
全文 [PDFファイル/12.3MB]
<お問い合わせ>
大阪府商工労働部 商工労働総務課
(大阪産業経済リサーチセンター)
経済リサーチグループ 天野
TEL:06-6210-9937
e-mail:shorosomu-g06@mbox.pref.osaka.lg.jp
◆ 発表資料の詳細はこちらをご覧ください。
(大阪府 http://www.pref.osaka.lg.jp/ / 4月12日発表・報道発表より転載)