スタートアップビザ
スタートアップビザとは?
「スタートアップビザ」とは、短期間での成長を目指すスタートアップ企業を起業する外国人に対して、一時的な在留許可を認めるビザのこと。近年、欧州や南米を中心に、20ヵ国以上でスタートアップビザが導入されています。これまで起業家ビザを発行して対応している国もありましたが、従来の制度では大きな経済発展が見込めないという理由から、イノベーションや雇用の創出を目指してスタートアップビザを新設するようになっています。
世界中で増えるスタートアップビザ
日本での状況は?
世界では、欧州諸国、オーストラリア、韓国、タイ、マレーシア、台湾、中国(上海)、ブラジル、チリなどの国・地域がスタートアップビザを整備しています。ビザ取得のための条件は国によって異なりますが、次のような要素が多くの国で求められています。
まずは、事業に革新性があること。飲食店などの従来から存在していた分野ではなく、既存の市場に存在しない商品・サービスであることが重要です。さらにグローバル展開が見込める事業であることや、ベンチャーキャピタルやアクセラレーターなど、民間機関による認定が条件になっていることもあります。また、起業のためのビザでありながら、創業直後は安定的な収入を得ることが難しいことから副業を許可している国もあります。
日本国内においては、スタートアップビザの整備は十分とは言えませんが、国際的な潮流に乗って、一部の自治体がスタートアップビザの取り組みを始めています。
日本で外国人が創業する場合、通常は「経営・管理」という在留資格の取得が必要になります。そのためには、事務所の確保のほか、500万円以上の資本金(または出資総額)、または2名以上の常勤職員雇用が条件となっており、外国人が日本で起業する際には高いハードルが存在します。
そこで2015年7月に始まったのが内閣府による「外国人創業活動促進事業」です。外国人起業家の受け入れ促進を図る国家戦略特区を認定し、「経営・管理」の在留資格を取得するための要件を緩和する取り組みです。2021年8月時点で、東京都、神奈川県、京都府、愛知県、広島県、新潟市、福岡市、北九州市、仙台市、今治市が特区に認められています。
福岡市は、国内初のスタートアップビザをスタートさせ、独自の支援を行っています。申請時に「経営・管理」の認定要件を満たしていなくても、創業活動計画書などを福岡市に提出し、要件を満たす見込みがあると福岡市に認められると、入国管理局が審査し、6ヵ月間のビザが認められます。さらに、福岡市は6ヵ月後に本人が要件を満たしてビザを更新できるよう、官民連携の「スタートアップカフェ」で支援しています。外国人起業家が、事業を進めながらビザの手続きを進められる仕組みです。
一方、特区内での要件緩和があったとしても、6ヵ月以内に起業を成功させ、事務所設立や雇用を行うことのハードルは依然として高く、当事者からはさらなる柔軟な対応が求められています。
【参考】
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