ビジネスにおけるミッションの考え方
ミッションを作ることによるメリットを得るためには、まず優れたミッションを作る必要があります。また、ミッションを浸透させるための「ミッション・ステートメント」を作成することが効果的です。
ミッションを考える上での条件
ドラッカーは、著書『Managing the Nonprofit Organization(邦題:非営利組織の経営)』の中で、優れたミッションの条件として三つの要素を提示しています。
ドラッカーによる優れたミッションの3要素
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社会のニーズ
機会は何か、ニーズは何か -
自社の強み
それはわれわれ向きの機会か。われわれは卓越しているか、強みに合っているか -
組織への浸透
心底価値を感じているか
営利組織であっても必要な要素は変わりません。ドラッカーは「これら三つの要素を折り込まなければ、目標は達成されず、いかなる成果も得られないことになる」と述べています。
社会のニーズ
機会は何か、ニーズは何か
組織として取り組みたいことがあっても、社会から望まれていなければそもそも事業として成立しません。人々が苦しんでいることや不便に感じていることを解消するといった観点が必要です。そうして発見したニーズに対して、自社が提供できる価値をミッションとして掲げる必要があります。
自社の強み
それはわれわれ向きの機会か。われわれは卓越しているか、強みに合っているか
社会にはさまざまな課題があり、解決方法も多岐にわたります。重要なのは、発見したニーズに対して自社が持っている強みや特性を生かしてアプローチすることです。ニーズと強みが合致し、社会に対してよりよい結果をもたらすことができると自信を持てるものこそ、会社が掲げるミッションにふさわしいと言えます。
組織への浸透
心底価値を感じているか
多くのミッションは「社会課題の解決」を目指すものであり、そう簡単に実現できるものではありません。事業のすべてが成功するとは限らず、ときには撤退を余儀なくされることもあります。そのようなときには、「会社が掲げたミッションの達成を信じられるか」が従業員を動かす大きなモチベーションとなります。ミッションを達成することで社会はどう変わるのか、個人にどのような影響を与えられるのかを従業員に理解させ、浸透を図ることが重要です。また、自社が掲げるミッションに本当に価値があるのか、定期的に検証を行うことも求められます。
ミッションステートメントとは
ミッションに掲げた抽象的なメッセージを具体化し、実際の行動に向けた指針・方針として具体的に明文化したものが「ミッションステートメント(Mission statement)」です。不確定要素がある中でも、一貫した判断軸の下に意思決定することができるようになります。企業によっては「社是」や「社訓」と呼ばれるケースもあります。
ミッションステートメントは、ミッションを常に従業員に意識させ、実現に導くために重要な役割を果たします。もともとは従業員向けにつくられるものでしたが、他社との差別化や株主へのアピールなど、社外へのPRツールとしても活用されるようになっています。
ミッションステートメントの作成方法
元・立教大学 経営学部教授の並木伸晃さんによると、ミッションステートメントには多くの場合、下記にあげる九つのトピックが含まれています。
ミッションステートメントに含まれる9つのトピック
- ビジネス・ゴール
- 国際化
- ビジネス・定義
- 製品定義
- 市場定義
- 技術
- 独自技術
- 新製品
- ファイナンス・ゴール
これらを盛り込むことを前提に、具体的な作成方法について紹介していきます。
チームの編成
ミッションステートメントはすべての従業員に納得感を持ってもらう必要があります。人数の少ない創業段階では創業者の思いを明文化することもありますが、経営陣だけでなく、多様な人を巻き込んで作成チームをつくる方がよいでしょう。さまざまな意見を取り入れることで、従業員はもちろん、ステークホルダーも納得できるものができあがります。
トピックの明確化
九つのトピックに関連する事項について、従業員らから意見を募ります。その中には、「その企業が大事にしている価値観」や「その企業らしさ」が含まれているはずです。それらを拾い上げ、メンバーの共通認識の擦り合わせを図ります。
言葉の認識に食い違いがあると、曖昧なミッションかできあがってしまうため、丁寧な擦り合わせを心がける必要があります。企業に根付くDNAを意識しながら社会の課題や自分たちの価値について取りまとめ、日々遂行するべき使命を明確にしていきます。
文章化
出てきた意見やキーワードをつなぎ合わせ、ブラッシュアップしていきます。ここで重要な視点は、ミッションステートメントが社内だけでなく、社会に広く公開するものであること。自社のパブリックイメージに直結することから、単に内容を理解してもらえればいいのではなく、多くの人から納得や共感を得る必要があります。受け手の目線に立ったときにも、ポジティブな印象を持ってもらえる表現を追求しなければなりません。
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