現在、福利厚生施策の中で、社員同士や家族連れで自由かつ気楽に利用できる「会員制リゾートホテル」の人気が高まっています。では、なぜ多くの企業が利用しているのでしょうか?また、どこにメリットを感じているのでしょうか?『日本の人事部』編集部では、全国24ヵ所に会員制リゾートホテルを展開している「東急ハーヴェストクラブ」の施設を体験・見学。その秘密を探りました。場所は、東京から約2時間で、豊かな温泉と四季折々の自然が楽しめる鬼怒川温泉郷にある「東急ハーヴェストクラブ鬼怒川」。総支配人である福田聡さんに同ホテルの魅力や福利厚生面でのメリットなどをうかがったインタビューのほか、編集部の体験レポートも合わせてお届けします。
- 福田 聡さん
- 東急ハーヴェストクラブ鬼怒川 総支配人
1967年栃木県今市市(現日光市)生まれ。「東急ハーヴェストクラブ鬼怒川」が開業した1992年に入社。その後、自身の希望から一貫して同ホテルでレストラン、フロント、管理業務など、調理現場以外のホテル業務全般に関わるというこだわりを持つ。2007年に支配人、11年より総支配人。
ホテルの便利さと、別荘の気軽さを兼ね備えた
「温泉」「料理」「スタッフのサービス」が特長
東急ハーヴェストクラブ鬼怒川の魅力について、お聞かせください。
鬼怒川温泉のある日光・鬼怒川地域には、日光東照宮や中禅寺湖をはじめ、華厳の滝、鬼怒川ライン下り、日光江戸村、東武ワールドスクウェアなど、さまざまな人気の観光スポットがあります。また、四季折々の自然が非常に豊かです。当ホテルで自然の景観と名湯を堪能しながら、ここを拠点に周辺の観光スポットにも足を伸ばし、楽しく滞在することができます。交通のアクセスもよく、東京(浅草:東武日光線、新宿:JR線)からは2時間ほどで来ることができます。
当ホテルの魅力としては、まず「温泉」があります。大浴場には、新緑や紅葉など、季節ごとに鬼怒川の自然を感じることができる露天風呂から、寝湯、足湯、サウナ、ジャグジーなどのお風呂と、屋内温水プールが完備されています。東急ハーヴェストクラブを利用されるお客様からも、温泉の施設は当ホテルが一番との評判をいただくことが多いですね。
二つ目が「料理」です。例えば、夕食では和食会席、フランス料理、和洋折衷の七つのコースを用意しています。コースの内容は毎月替わるので、リピーターのお客様からもご好評をいただいています。もちろん、朝食にはバイキングもご用意しています。食材は、料理長が自ら探し求めたこだわりの地元の野菜・果物、お米・和牛などをふんだんに使っており、お好みに合わせて楽しく食事をすることができます。さらに、地ビールや地酒も取り揃えてあります。特に、人気が高いのが辛口のオリジナル日本酒「福鬼の宴」。この名前は、会員の方からの公募で決定しました。
そして三つ目が、「スタッフのサービス」です。私たちはお客様を迎える心構えとして、笑顔をとても大事にしています。「スマイリー・フレンドリー・ハッピー」をスローガンにしているのですが、これは笑顔でおもてなしし、親しみやすい接客をして、お客様にハッピーとなっていただくということです。ベースが会員制ホテルですから、リピーターのお客様がとても多く、アットホームな接客と雰囲気づくりが重要となります。実際、顔見知りのお客様も大勢いらっしゃいますので、従業員もお客様とちょうどよい距離感を保ち、フレンドリーに対応させていただいております。この「温泉」「料理」「スタッフのサービス」の3点が、ホテルの便利さ、別荘のような気軽さを兼ね備えた東急ハーヴェストクラブ鬼怒川のウリだと思っています。
企業が定期利用するメリットについて、お聞かせください。
当ホテルのメンバー構成は、法人が半数を占めています。東急ハーヴェストクラブの中でも、法人メンバーの高い施設と言えるでしょう。企業の福利厚生施設として、非常に高い利用率を誇っています。利用が多いのは週末や繁忙期ですが、当ホテルにアットホームな雰囲気があるからでしょうか、企業の方には家族連れでいらっしゃっても安心して楽しめるという評価をいただいています。私たちも、来ていただいたお客様には、気持ちよくお帰りいただくことを常に心掛けています。
企業が自社で別荘やリゾートマンションなどを所有する場合、まずは購入する資金が必要です。また、その後は維持・管理が必要になりますが、これがとても大変です。しかし、会員制リゾート施設を利用すれば、さまざまなメリットがあります。例えば、福利厚生のアウトソーシング契約とは異なり、利用状況に応じた費用算出が可能です。効率的に経費を削減でき、手間もかかりません。さらに予約代行サービスがあるので、福利厚生担当者の手間も省けます。こうした初期費用や維持管理コストが抑えられることが、コスト面において大きなメリットをもたらします。
自社所有では、決まった施設・場所での利用に限定されてしまいます。その結果、だんだんと利用率は下がっていきます。その点、東急ハーヴェストクラブなら、全国に24ヵ所展開していますので、いろいろな施設を手軽に相互利用することができます。また24ヵ所ある施設は、海の近くにあるものもあれば、鬼怒川のように温泉と山が近いものもあるといったように、利用者の目的やニーズに応えるだけの選択肢の幅を持っているのが特徴です。この点でも、利用者としてのメリットは大きいと思います。
研修や会議など、企業の利用状況についてお聞かせください。
よくあるのは、金曜日に来て一泊し、土曜日に帰るというパターンです。当ホテルには、会議室とレストランを兼ね備えた、貸切の宴会などに使用できる「多目的室」を用意しています。ここを使って、社外研修やオフサイトミーティングなどが行なわれています。気軽に会社の行事や研修で利用できるというメリットが大きいのではないでしょうか。
「多目的室」は今年の1月にリニューアルを行い、レストランのような雰囲気にして、会議の後の懇親会などでも利用できるようにしました。自社施設を使った会議や研修だと、どうしても日常の延長となりがちで、言い出しにくい雰囲気もあって、形式的なことで終わってしまうことが少なくありません。しかし、自社から離れた別世界の環境で行うと気分が一新され、違ったアイデアや意見が出てくるなど、実施効果が一段と増すようです。また、懇親会など宴席の場を設けることによって、組織としての一体感も高まります。特に、若い社員からはそうした意見や感想が多いと聞いています。このような「場」を提供するという点からも、会議や研修などを伴った宿泊プランなどを提案していきたいと考えています。
今後は、どのような展開をお考えですか。
企業にとって、人材は付加価値を生み出す財産です。これからは、従業員満足度の向上やワーク・ライフ・バランス関連への対応が求められます。その際に、福利厚生施設をうまく活用することで、優秀な人材の獲得や定着につながり、働く人のモチベーションは高まって、企業の成長へとつながっていきます。
当ホテルは1992年に開業し、来年の4月で満20周年を迎えます。元来の魅力である温泉施設に加え、美味しい料理やスタッフのホスピタリティをよりいっそう向上させていき、多くの企業の方や利用者が魅力と感じるようなサービスや施設を展開していく考えです。
編集部が体験!東急ハーヴェストクラブ鬼怒川の魅力とは?
福田総支配人がお勧めする「温泉」「料理」「スタッフのサービス」を中心に、『日本の人事部』編集部が読者に代わって、東急ハーヴェストクラブ鬼怒川を体験・見学しました。以下、そのレポートを報告します。
広くて種類が多く、使い勝手の良い「温泉」
同ホテルの大浴場は、東急ハーヴェストクラブの中でも、最もスペースが広く、お風呂の種類が多いとのこと。小鳥のさえずりや爽やかな風を感じることができる天然の露天風呂のほか、腰掛け湯、寝湯、足湯、かぶり湯、ジャグジーバス、サウナ、ミストサウナなどがあります。今回は一泊二日の滞在でしたが、それだけでは全てを利用しきれないほど。今回は、小鳥のさえずりをBGMに露天風呂とサウナをフル活用し、日々の疲れをほぐすことにしましたが、これだけで十分に心身ともにリフレッシュできました。また、湯上りのラウンジも広く、使い勝手は大変良いものでした。隣には室内温水プールもありましたが、これは、次の機会にチャレンジすることにしましょう。
こだわりの食材を使った「料理」を堪能
レストランメニューは、日本料理、フランス料理、そして和洋折衷料理からなる七つのコースから選ぶことができます。この日は、おすすめ和洋折衷料理「文月~和魂洋才」を試食させていただきました。伝統的なフレンチをベースに、新たな味を開拓した新旧融合の料理を楽しめます。5種類の前菜を皮切りに、御碗、御造り、主菜、御食事、デザートと続くフルコース。伊達鶏や高根沢産コシヒカリ、現地の野菜などこだわりの食材を使った多彩な料理を2時間かけて、ゆっくりと堪能することができました。
何より、周囲を美しい木々に囲まれたレストランでの食事は、食前に地元の辛口日本酒「福鬼の宴」を口にしたこともあり、食がよりいっそう進みました。ちなみにこれで、6825円は超リーズナブルなお値段ではないでしょうか。翌朝は、ダイニングブッフェで、バイキングをお腹いっぱい食べて満足したことを、付け加えておきます。
お客様との「距離感」が良い「スタッフのサービス」
日頃、いろいろな意味で都会のホテルサービスに慣れている身として、同ホテルのスタッフの笑顔や心からのおもてなしには、別世界に来たような印象を持ちました。福田総支配人のインタビューにもあったように、お客様との「距離感」がとてもいいのです。何もない時には遠くから笑顔で眺めてくれていて、何かあると、こちらから何も言わなくても「どうなさいました?」「何かお困りではないですか?」と声を掛けてくれるのです。また、私たちの質問に対しても、丁寧に、かつ具体的に説明してもらえました。
こうしたマニュアル的なものではなく、お客様一人ひとりの状況に合わせた対応、大人の距離感を持ったサービスというのは、とても一朝一夕にできるものではありません。20年近くの年月をかけて培われてきたものだと思うと同時に、会員制ホテルがベースにあるからこそ、このようなサービスが実現できるのでしょう。
利用価値の高い「多目的室」
『日本の人事部』編集部では、企業研修の場に取材に行くことも多いのですが、改めて、同ホテルのような日常から切り離された場所で、宿泊を伴った研修や会議を開催することの効果・効用を強く感じました。事実、大企業でも、自社施設を使わないで、事業部や部署ごとに自社とは違った環境下で研修を行うケースが増えています。その際、とりわけ「多目的室」(コンベンション&レストラン「マロニエ」)は、利用価値が高い施設だと感じました。40~50人を集め、会議だけでなく立食パーティなども可能なつくりとなっています。スクリーン設備なども整っており、さまざまな演出も可能です。ここなら、新しい「気づき」を覚えることも多いことでしょう。
また、各部屋は8種類ものパターンが用意され、人数や家族構成などに合わせた、利用者の多様なニーズに応えるものとなっています。和室と洋室が巧みに取り合わせてあり、幅広い年代層に方々にくつろいでもらえる設計となっていたのが印象的です。一度、従業員アンケートなどを取って、こうした宿泊施設での研修や会議、キックオフ・ミーティングなどを考えてみてはいかがでしょうか。
総括~戦略的な福利厚生に向けて
今、福利厚生の意味が、大きく問われています。人材の確保、定着という点からだけではなく、社内コミュニケーションを深め、モチベーションを向上させ、組織としての一体感を高めてよりレベルの高い仕事にチャレンジしてもらう、という戦略的なアプローチを行う企業が増えてきているのです。こうした傾向は、今後、さらに強まっていくと予想されます。
東急ハーヴェストクラブでは定期契約を結ぶことで、同クラブの全国にある24の施設が利用可能となります。個人的にも、これは大変魅力的だと感じました。また、会員制だから低コストで、さまざまなシーンや利用目的に合わせて使うことができます。ここまで見てきて思うのは、これもまた、“戦略的な福利厚生”であるということ。実際に体験してみて、企業の福利厚生施策が新たな時代に入ってきたことを、実感しました。
東急リゾートサービスは、新たな時代のリゾート産業を構築するリーディングランナーとなるべく、全国41事業所、75施設(平成23年4月現在)のリゾート施設のオペレーションを一手に手がける運営会社として事業展開を行っています。会員制リゾートホテル(東急ハーヴェストクラブ)やゴルフ場、スキー場や保養所、別荘管理の運営を通して、人材・施設・情報のもつ価値を最大限に発揮し、運営施設一体となったCSやチェーンオペレーションを推進し、バランス感覚あふれる企業を目指しています。現在は、約40年に及んで培ってきた実績をもとに、運営ノウハウを多様なリゾート施設の受託業務にも活かし、地域の発展と経済活性化に貢献しています。