レストランの予約や商品を購入する際、口コミを見て選ぶように、会社選びにおいても口コミサイトを閲覧することが今や当然になっています。その中で注目を集めているのが、今まさに活躍している社員の口コミだけを掲載することにこだわった、現職社員の口コミサイト「VOiCE」です。
求職者の不安を煽るようなネガティブな内容ではなく、その会社で働くことが楽しみになるような、現職社員が感じている自社らしさ・仕事の誇りなどを「今ここにいる理由」として、ふんだんに掲載しています。
今回は「VOiCE」創業・事業責任者の福田祐太郎さんに、メディア立ち上げの背景や、企業がVOiCEを活用することで得られるメリットについてうかがいました。

- 福田 祐太郎さん
- Zenken株式会社
ヒューマンキャピタル事業部 VOiCE事業責任者
ふくだ・ゆうたろう/早稲田大学卒業後、2015年にZenkenに入社。東京本社でWeb編集者として戦略的コンテンツマーケティングの制作に携わった後、2017年に沖縄オフィスのグロースに携わり、教育体制の確立、組織運用、チームマネジメントなどを行う。3年の赴任を経て本社に戻り、コンサルティング営業として戦略提案や新規開拓に携わった後、新規事業責任者として「VOiCE」を立ち上げ、現在に至る。
「VOiCE」事業立ち上げのきっかけは、
自社の口コミ内容と実際の様子にギャップを感じたこと
「VOiCE」を立ち上げた背景を教えてください。
私が沖縄オフィスの立ち上げに参加し、採用に携わったときに経験した出来事がきっかけです。
ある日、ハローワークの方から「Zenkenに興味を持っている人が口コミサイトを読んで不安になっているので、一度会って話してくれませんか」と連絡がありました。不安になったという口コミを読んでみると、入社後1週間ほどで辞めてしまった人が書いたと思われるもので、事実以外の想像が多分に含まれた内容でした。
その頃の沖縄オフィスは、30名ほどの組織から短期間で70名ほどに急拡大している最中でした。急速に成長すると、企業にも成長痛が起こります。確かに、立ち上げたばかりの組織ですから、仕事内容や体制の変化も多く、負荷の大きな環境ではありました。そのような状況でも多くのメンバーは「沖縄で一番入社したくなる組織を作ろう」という目標を掲げ、熱量をもって仕事をしていたんです。
しかし、口コミサイトに投稿された内容からイメージされるものは、実際の様子とあまりにもギャップがありました。口コミを見て不安に思っていた方とは直接お会いし、当社について説明。口コミよりも私たちの話に耳を傾けていただき、入社することになりました。
沖縄オフィスから本社に戻り、新規事業を任せていただくことになった時、この沖縄での体験をもとに「VOiCE」の発案に至りました。退職して、今はもう会社にいない人たちの口コミではなく、今まさに活躍している社員の口コミを読んだ上で、「自分もここで頑張りたい」と思える会社を選ぶことに意味があるし、その方がモチベーション・生産性高く働けます。成長ひいては昇進にもつながるでしょう。
またそんな人を1人でも増やせば、そんなふうに選ばれる会社を1社でも増やせば、世界で最低値と言われる、日本のワークエンゲージメントの向上にもつながると考えました。ネガティブな口コミを見比べて「この会社でいいや」と思うような、マシな会社選びではなくて、「ここで働きたい!」と思ってエントリーする、マジな会社選びに。そんな社会を実現したいと考えて「VOiCE」が生まれました。

活躍社員に聞くからこそわかる「自社らしさ」、
それを最大限表現することにこだわったコンテンツ
「VOiCE」の概要と特徴を教えてください。
VOiCEのミッションは「会社選びを、マシからマジへ。」です。わかりやすい条件のみで比較し、口コミで裏取り調査をして、自分が損や失敗をしないための「マシな会社選び」ではなく、その会社で活躍するエースたちの声を読み、自分の成長や明るい未来にワクワクしながら選ぶ「マジな会社選び」を増やしていきたいという想いを込めました。
VOiCEをご利用いただいている企業には、その企業らしさを言語化するため、社員の方々にアンケートを実施していただきます。アンケート結果で得られたデータを分析し、その企業の働きがいをVOiCEに掲載。求職者に向けて発信していく、という流れです。
VOiCEには、大きく2つの特徴があります。1つ目は、点数ではなく「テキストマイニング」という手法で企業の特徴を見せていること。一般的な口コミサイトは、給与や福利厚生、ワークライフバランスなど、いくつかの項目を設けて5点満点の点数評価を行うことがほとんどです。
しかし、すべての項目が高評価であるからといって、すべての方に合う企業とは限らないんですよね。
例えば、業務負荷の高さに関する項目があったとすると、ベンチャーなどの成長企業やコンサルティング会社は業務負荷が高い傾向があるため、点数評価をすると低くなりますが、短期間で急成長したいと考えている人にとっては、相性が良い企業であると言えます。
点数だけでは、実情を正しく把握できない。ですからVOiCEでは、点数評価をやめて、企業らしさは「言葉」で表すことにしました。それが「テキストマイニング」です。
まだまだ発展途上ではありますが、形態素解析という技術を活用して、「成長意欲」「ビジョン実現」「一体感」など、活躍社員の口コミに頻出しているキーワードを表示。その企業らしさを表現することに努めています。
2つ目の特徴は、口コミを分類するカテゴリーの独自性です。福利厚生やワークライフバランスなど、働きやすさの要素もありますが、「働く魅力」や「仕事の原動力」「仲間の魅力」などを語れる項目を主なコンテンツとして用意しています。これにより、活躍している社員がその会社にいる理由や、どういったことにモチベーションを感じているのかが明確になります。
例えば「仕事の原動力」は、業種や企業によってさまざまな口コミが集まります。成果を上げてしっかりとインセンティブをもらうことが原動力になっている人が多い企業もあれば、社会貢献性の高い事業をしていることに価値を感じている人が多い企業もあります。
待遇や評価制度など、業種問わず一律で評価されやすい項目に関しての声だけでは表現できない、企業ごとのカラフルさを表現できるサイトとなっています。
既存の企業口コミサイトの常識を打ち破る「VOiCE」
「VOiCE」は、他の企業口コミサイトとどのような点で違いがあるのでしょうか。
企業の口コミサイトを閲覧するには、自身が在籍していた会社の口コミを書く必要があります。この特性上、何らかの不満を持って転職活動をしている方、不満をもって退職した方が書き込むケースがどうしても多くなります。
一方「VOiCE」は、今活躍している社員の前向きな声を掲載する仕組みであることが、もっとも大きな違いです。
こうお伝えすると「それはヤラセにあたるのでは?」というご指摘をいただくこともあるんですが、辞めた理由を聞く口コミサイトがあって、今その会社にいる理由を聞く口コミサイトがないほうがフェアじゃないと考えています。
求職者が両方の意見に触れられたほうが、より正確な判断をできますよね。
また、社員の前向きなコメントを増やしていくには、会社側が組織を良い状態にする努力も必要です。「VOiCE」に賛同してくださる企業が一社でも増え、その社員の方々がワークエンゲージメントを高く保って働くことができるようになれば、社会全体の生産性も上がります。
活躍社員の声を取り上げるという点では、企業の採用ページの社員インタビューにも近い要素があります。違いはどこにあるのでしょうか。
違いは2つあります。1つ目は、採用ページの発信者はあくまで企業であることです。
社員インタビューは顔や名前が出ているため、イメージがわきやすい利点がありますが、公式である以上「企業が良い面をアピールするためのもの」だと読者側も認識した上で読むことになります。
2つ目は、VOiCEに掲載すると「社名 口コミ」と検索したとき上位に表示されるため、自社に興味をもって調べている求職者に閲覧されやすいことです。
「VOiCE」は他の企業口コミサイトと比べて後発のサービスですが「業界で唯一、現職社員の口コミに特化しているサイト」という独自性や信頼性、また更新性により、Googleの検索エンジンからも高く評価され、上位表示につながっています。
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「VOiCE」を活用することで、企業にはどのようなメリットが期待できるのでしょうか。
自社に合った求職者からの応募・入社が増えることと、早期離職が減ることです。
まず入社が増える理由ですが、求職者は求人情報を見て興味を持ったとき、 エージェントから紹介を受けたとき、 選考が進んで面接を受ける前日、面接で良い印象をもった帰り道など、採用のあらゆる過程で企業の口コミを見ています。
現状ここに「辞めた人の古くてネガティブな口コミ」が多いため、離脱を招いています。
しかし「VOiCE」があれば、現職社員の新しくポジティブな意見を届けることができ、不要な離脱を防ぐとともに「以前は課題があったのかもしれないけど、今は変わっているようだ」という気づきを与え、前向きな意思決定につながります。
結果、選考の歩留まりが上がりますし、それも自社らしさを理解した求職者が残るので、応募数・入社数と自社とのマッチング率が同時に上がっていくのです。
早期離職が減る理由は、そもそもマッチング率が高いということに加え、サーベイ結果や口コミの内容から、企業が自社の活躍社員の現状を把握し改善に活かすことができるからです。
例えば、口コミを書いた社員の年代ごとにどんな課題があるのかがわかります。
30代社員の業務負荷に対する評点が他の世代より低いとしたら、20代から頼られ、40代以上から負荷の高い仕事を任されている状況ではないかなどと推測できます。その結果、20代の成長支援に注力する、業務効率化のツールを導入する、といった改善策を実行することができ、組織改善、ひいてはエンゲージメントの向上へとつながるのです。
「VOiCE」にはすでに250社以上のサーベイデータが集まっているので、サーベイ結果をもとに、現職社員からの評価が向上するための施策を提案することもできます。取り組みを続けていくことで、現職社員のエンゲージメントを向上させ、早期離職を減らしていくことが可能です。
実際に「VOiCE」を活用し、効果を上げている企業の事例があればお聞かせください。
VOiCE導入の前後3ヵ月間を比較したところ、応募の母集団が倍増した事例があります。業種はSIerで、エンジニアが客先に常駐する事業や自社プロダクトも開発している企業です。
自社開発事業のほうが技術者派遣よりもエンジニアからの人気が高いので、採用の広報においては自社開発に関しての打ち出しを強めていましたが、現状は技術者派遣のプロジェクトのほうが多かったため、既存の口コミサイトでは「案件ガチャ」「〇〇という現場は最悪」といった、派遣先での不満を語る内容が多くなっていました。
実際は、技術者派遣のさまざまなプロジェクトで数年経験を積んだ後、スキルアップしてより上流工程の大規模プロジェクトを経験している方や、自社開発にも携われている方もいるのですが、ネガティブな口コミによって応募数が伸び悩んでいる状況でした。
そこで私たちは、入社4~5年の中核を担う社員の方々に口コミを書いていただくことを提案しました。すると、「下積みを重ねたことで金融系システムの知識が身につき、スキルアップできた」「経験を積んだ後に自社開発のプロジェクトにアサインされた」といった、現場で働いているからこそわかる魅力を語る声が多く集まったんです。その結果、求人サイトで伝えている情報と、活躍社員の状態にはギャップがないことが伝わり、「VOiCE」を利用後に応募者数も入社数も増加したのです。これは一例に過ぎず、応募や選考の段階での歩留まりが上がったという事例は、他にも数多くあります。
VOiCEを通じて、日本のワークエンゲージメントを高めていきたい
今後、貴社が事業を展開していく上でのビジョンや目標をお聞かせください。
私たちは「VOiCE」を通じて、日本のワークエンゲージメントを高めていきます。
直近で予定しているのは「VOiCE」のさらなるブラッシュアップ。ユーザビリティ、ワクワクをもっと加速させるインタラクティブな機能を搭載し、求職者の会社選びをよりポジティブにすることはもちろん、企業とのマッチングを高めるような紹介事業への展開、サーベイ結果から現職社員のワークエンゲージメントを高める支援の拡充も進めていきたいと考えています。
既に取り組んでいることとしては、社長の熱い想いに迫る「CEO VOiCE」というインタビューメディアも運営しています。すでに100名以上の社長が掲載されており、20代の求職者から閲覧されるメディアとなっています。
またこのメディアから派生して、公開インタビューという形で学生が直接社長の話を聞ける「CEO Talk」というイベントも始めました。「VOiCE」を進化させていくことはもちろん、今後はこうした「働くこと自体をポジティブに捉えられるようにする」事業やアクティビティをどんどん生み出していく予定です。
私たちは、あらゆる手段を通じて日本のワークエンゲージメントを高めていきます。
読者である採用担当者の方々に向けて、メッセージをお願いします。
「VOiCE」とは、地雷除去ではなく花を植える仕事。そして「VOiCE」で発信する口コミを増やす活動は、活躍社員を増やす活動です。会社や仕事に誇りと愛を持って働く社員様がいる、あるいはそんな会社にしていきたいと思う経営者や人事の方々から「VOiCE」は選ばれています。
一方で、社員様の声を募ること、発信することをためらう企業様がいるのも事実です。確かに、わざわざ社員様の声を聴くというのは恐い側面もあると思います。
しかしそんな中でも、その声に耳を傾ける、そしてそれを発信するという選択を取った「VOiCE」に掲載されているのは、そんな素晴らしい企業様ばかりなのだということを、最後にお伝えさせてください。
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現職社員の口コミに特化した、業界唯一のサービス「VOiCE」。2022年にリリース後、わずか2年で導入社数260社を突破した。2024年12月には「辞めた理由より、今ここにいる理由を。」というキャッチコピーのもと、現職社員の中でも「活躍社員」にフォーカスした内容へとリニューアルした。
一般的な企業口コミサイトには“退職理由”が散見されるのに対して、VOiCEでは、活躍社員が感じている“仕事のやりがい”や“会社の魅力”などを発信。世の中の“働く”をポジティブな意思決定に変えることを目指している。
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