テレワークの普及などで「働きやすさ」の改善を感じた人は多いだろう。一方で、「働きがい」や成長を実感できている従業員は、まだそれほど多くはないようだ。日立ソリューションズでは、従業員個人が主体性を持って日々の行動を振り返り改善することで、より良い働き方を習慣づけ、働きがいを生む仕組みを提供している。人事総務本部 担当本部長の井上正人氏、ワークスタイルイノベーション企画部 グループマネージャーの村井睦子氏に、同社のエンゲージメント向上の取り組みや、それを支援するソリューションについて聞いた。
- 井上正人さん
- 株式会社日立ソリューションズ 人事総務本部 担当本部長
いのうえ・まさと/1988年日立ソフトウェアエンジニアリング(現 日立ソリューションズ)に入社。以来一貫して人事・労務分野に従事。かつて、業績悪化による赤字とこれに伴う従業員のエンゲージメントダウンを実感して以来、「企業の成長と従業員の幸せの両立」のための施策を模索中。
- 村井睦子さん
- 株式会社日立ソリューションズ ワークスタイルイノベーション本部 ワークスタイルイノベーション企画部 グループマネージャー
むらい・むつこ/2006年日立システムアンドサービス(現 日立ソリューションズ)に入社。人事総合ソリューション「リシテア」の提案、導入構築、保守に従事。2021年4月より「リシテア」を含む人事関連製品のマーケティング・プロモーションを担当。
会社の成長と従業員の幸せの両立が人事の大命題
新常態を通じて見えてきた、エンゲージメントの課題をどう捉えていますか。
井上:当社を例にお話しすると、「働きやすさ」の観点では、以前からさまざまな人事施策を推進し、一定の成果を出していました。新常態でテレワークが普及したことで、想定以上に働き方の変化が進んでいるとも感じます。今、当社のテレワークの実施率は8~9割ほどです。個人が裁量を持って仕事をしており、働きやすさは相当実現できていると思います。
ただ、「働きやすさ」を追求することはややもすると不満足要因を取り除くプロセスに主眼が置かれがちで、「働きやすさ」の実現は必ずしも「働きがい」にはつながりません。テレワーク以前は、組織で協同で仕事をすることで得られるダイナミズムや、大きな仕事の達成感や社会に与えるインパクトを実感することがありました。働く場所が分散し、対面コミュニケーションがとりづらくなっている今、組織にいるからこその働きがい、エンゲージメントをどう感じられる会社にしていくかが、人事戦略上の大きな課題です。
その課題への対応として、当社は、仕事を通じて多様な一人ひとりが成長や働きがいを実感すること、これを一言で「EX(Employee Experience)の向上」というキーワードに据えていますが、この取り組みを進めていくことでエンゲージメントを高めていきたいと考えています。
石山先生は、これからは「戦略人事」と「サステナブル人事」を両立し、経営、従業員どちらの視点にも立って施策を進めていくことが必要と話されています。
井上:当社では、これまでも「会社の成長と従業員の幸せの両立」を大命題として取り組んできたので、石山先生のお考えにはとても共感します。会社の利益と従業員の利益のどちらにも偏らず、双方がWin-Winになれる戦略をとることがより大事だと思います。
貴社では、エンゲージメント向上のために、どのような取り組みを行われているのでしょうか。
井上:まずは、先ほどもお話しした「働きやすさ」向上の取り組みです。ここ2年ほどで、従業員全員がテレワークのできる環境を整え、仕事の進め方の裁量を大きく個人に委ねました。
働き方を変えたことで、従業員のエンゲージメントがどう変化したかもパルスサーベイを実施して定点観測しています。コミュニケーション上の課題や仕事の効率が落ちたという指摘もありましたが、一つひとつ解消してきました。環境に合った働き方にすぐ切り替えられる会社であることも、従業員エンゲージメントの向上につながっていると思っています。
「働きがい」の観点ではいかがでしょうか。
井上:働きがいを実感するためには、「目的」「人」「仕事」「報酬・成長」の四つの観点が大事だと思いますが、中でも最も重要なのは「仕事」で、従業員がやりたい仕事に携われているか否かが大事だと考えています。当社では、従来からFAや社内公募制度を実施していましたが、さらに本人の意思で仕事を選択できるチャンスを増やすことを目的に、2022年度から「ジョブマッチング制度」を導入することにしました。入社3年目の従業員は、働きたい部署を宣言できます。受け入れ先の部署が同意すれば、現所属の上長の意思にかかわらず異動できます。従業員が主体的に仕事を選択できる機会を増やし、働きがいや納得感を高めていきたいと思います。一方で、やりたい仕事が明確でない人、自分が何に向いているのか、どうしたら「働きがい」を得られるのかわからない人もいるので、特に若い世代へのサポートもしていきたいと思います。
村井:「サポート」の観点での取り組みが「ジョブ・クラフティング」です。やりがいを持って働けるように、従業員自身が働き方を工夫する手法ですが、本人が仕事の改善点を見つけることや、習慣化に難しさがありました。そこで、当社のソリューション「リシテア/従業員エンゲージメント」を活用しています。
「ジョブマッチング」と「ジョブ・クラフティング」には、どのような効果を期待していますか。
井上:最終的には会社の成長と従業員の幸せの両立を実現することが、人事の大命題です。従業員のエンゲージメントを高めることによってこれを実現していきたいと思います。従業員が、組織に所属するからこその大きな満足感や成長実感を得られること。そして、会社にとっては、従業員が成長してくれることを期待しています。
「リシテア/従業員エンゲージメント」で従業員自らがより良い働き方を習慣付けられる
貴社のソリューション「リシテア/従業員エンゲージメント」についてお聞かせください。
村井:「リシテア/従業員エンゲージメント」は人事総合ソリューション「リシテア」の製品の一つです。「リシテア」は、勤怠管理、人事・給与管理、タレントマネジメントなど人事に関する幅広い製品群をご提供しています。今回、企業の人財マネジメントで重要な課題になっている、従業員のエンゲージメント向上や自律的なキャリア形成に対応するため、「リシテア/従業員エンゲージメント」を提供することになりました。
「リシテア/従業員エンゲージメント」は、ワーク・エンゲイジメント研究の第一人者である慶應義塾大学 島津明人教授との共同研究で誕生したものです。従業員のセルフマネジメントによるエンゲージメント向上にフォーカスしています。「リシテア/従業員エンゲージメント」では、サーベイを通じて従業員自身が日々の業務で抱える「悩み」や「困りごと」「もやもや」を本人が把握できます。それらの改善方法を、「仕事のやり方への工夫」「周りの人への工夫」「考え方への工夫」の三つの視点で考え、1ヵ月の行動計画を立て、実行します。
従来のエンゲージメント向上に関する施策は、サーベイ結果の確認や改善計画の立案など、現場の管理職に主導してもらうことが多く、彼らの多忙さゆえに定着しないという課題もよく耳にします。「リシテア/従業員エンゲージメント」は従業員がセルフマネジメントできる仕組みになっているため、管理職の負担も軽減できます。
「リシテア/従業員エンゲージメント」を導入することで、組織や従業員にどのような変化が期待できますか。
村井:まず、従業員の自律的なキャリア形成や生産性向上につなげられます。また、従業員が主体的にやる気を高められるため、持続的なエンゲージメント向上を支援することができます。さらに「リシテア/従業員エンゲージメント」には、コミュニケーションツールの機能もあります。他の従業員の行動計画や進捗を確認し、それを「いいね」ボタンで評価することもでき、テレワーク下での会話やつながりの創出が期待できます。「リシテア/従業員エンゲージメント」のデータを使うことで、1on1での対話も充実するでしょう。
石山先生によれば、人事が「戦略人事を最優先に取り組む部署」と位置づけられるためには、「何らかのきっかけでトップの認識を変える」、または「現場の実践によって変える」というきっかけがあるようです。貴社ソリューションは、このきっかけにどのように寄与できるでしょうか。
村井:まず、セルフマネジメントの仕掛けを取り入れていますので、現場の従業員が変わっていきます。また、トップの認識を変えるという点では、経営層が見る離職率低下や生産性向上といった指標が変わることで、意識も変わってくるでしょう。このソリューションの根底にあるジョブ・クラフティングなどのエンゲージメントを向上させる仕組みは、学術的にも会社の成長につながるとされています。
ソリューションを導入したものの、うまく活用できていないという声もしばしば耳にします。貴社からのサポート、工夫などがあればお聞かせください。
村井:従来のエンゲージメント向上のための施策には、トップダウンのアプローチが多く、従業員にやらされ感が出てしまったり、従業員一人ひとりに浸透するまでに時間が掛かったりしていました。「リシテア/従業員エンゲージメント」は、従業員自身が働き方を見直し、主体的に取り組み、楽しみながら継続できる仕組みのため、より良い働き方が習慣付けられます。また、周囲とのコミュニケーションを取りながら成長していける点も特徴です。
何が正解かわからないなか、まずは小さな一歩を踏み出す勇気を
最後に、人事の皆さまへメッセージをお願いいたします。
井上:新常態によって働く環境が大きく変わり、従業員の意識や働き方はコロナ前に戻ることはないと思っています。こうした変化にどう対応していくのか。人事の皆さんは相当悩みながら取り組んでいるのではないでしょうか。何が正解かは後で振り返ってみてわかるものだと思いますが、そのときに、「あのターニングポイントで正しい判断ができた」と思えるように試行錯誤を重ねながら努力していきたいですね。
村井:従業員のエンゲージメントは、働きやすさだけでは高まりません。働きがいを感じられる職場で自律的に働くことが、会社にとっても従業員にとっても幸せにつながるのではないかと思います。しかし、リソースが限られる中で、何から始めたらいいのかわからない会社も多いと思います。まずは、コストを抑えて小さく始めるうえでは、「リシテア/従業員エンゲージメント」が活用できると思います。
もともと当社は人事施策に積極的に取り組んでおり、世の中の一歩先を行くノウハウを多数持ち合わせています。提案・サポートできることも多いので、パートナーとしてお役に立てればと願っています。
※「リシテア」は株式会社日立ソリューションズの商標または登録商標です。
「リシテア/従業員エンゲージメント」は、従業員が主体的にやる気を高め、持続的なエンゲージメント向上を支援するクラウドサービスです。
セルフマネジメントのためマネージャーの負担を軽減でき、クラウドサービスでコストを抑えて、すぐに始めることが可能です。
まずは少人数で効果を検証するなど、ご要望にあわせてご対応いたします。