東京大学社会科学研究所
請負社員・派遣社員の働き方とキャリアに関するアンケート調査結果を発表
(調査概要のポイント)
(1) 正社員やパート・アルバイト等としての就業経験がある者が多く、収入や「ものづくり」への関心から現在の働き方を選択。
(2) 仕事満足では、仕事内容や労働時間、人間関係の満足度は高いが、他方で、処遇や雇用の安定性、今後のキャリア見通しへの満足度は低い傾向。
(3) 製造派遣禁止に関する意見では「反対」が半数強。
(4) 労働者派遣法の改正は失業をもたらすと認識。
(5) 今後希望する働き方:当面では正社員希望は少ない。
(6) 働いている工場からの正社員採用へは応じる者が多いものの、そうした提案の可能性はほとんどないと認識。
■ 調査の目的
調査の目的は、生産現場で派遣社員や請負社員として働く人々の就業実態とキャリアの現状と課題、さらに労働者派遣法改正による製造派遣禁止に関する評価などを明らかにすることにある。
■ 調査の実施方法
(1) 日本生産技能労務協会の会員企業を通じて調査票の配付を依頼し、調査対象者が調査に回答したのち、調査対象者が調査票を東京大学社会科学研究所宛に投函する方式で実施した。
(2) 4000人を調査対象として、従業員規模に応じて各企業の調査対象者数を割り当てた。
(3) 工場で生産業務に従事している請負社員・派遣社員を対象として、管理のみを担当している社員は調査の対象外とした。調査の実施方法では、取引先の職場の最小の管理単位(例えば班、グループなど)を選んで、その管理単位の下で働いている請負社員・派遣社員の全員に調査票を配付することを原則とし、特定の人だけに調査票が配付されないように留意した。
(4) 調査の実施時期は、2010年8月19日から調査票の配付を開始し、9月1日を投函の締め切りとした。
(5) 締め切り後に到着した調査票や無効票を除いた有効回収数は2277票で、有効回収率は56.9%である。
(6) 調査は、科学研究費補助金( 基盤研究(B))「企業の外部人材の活用と戦略的人的資源管理」(課題番号:22330110)を利用して実施した。
■ 調査の実施主体
東京大学社会科学研究所の研究組織である人材フォーラムの「請負会社・派遣会社の生産現場で働く人々の働き方とキャリア意識に関する調査プロジェクト」
佐藤 博樹 (代表・東京大学社会科学研究所教授)
佐野 嘉秀 (法政大学経営学部准教授)
島貫 智行 (一橋大学大学院商学研究科専任講師)
■ 調査結果の概要
本概要では、調査の結果の中から労働者派遣法の改正による製造派遣の「禁止」に関する評価や将来のキャリア展望などに限定して紹介する。調査全体の概要に関しては、2010年11月末頃に人材フォーラムのホームページで公開する予定である。
本概要は速報のため、最終報告と数値が多少異なることもあるので、その点に留意されたい。
(回答者の属性)
回答者の属性をみると、性別は男性が66.1%、女性が33.5%で、年齢は24歳以下が11.5%、25歳から29歳が19.2%、30歳から34歳が19.2%、35歳から39歳が18.1%,40歳以上が30.7%で、平均年齢は35.3歳となる。学歴は高卒が69.2%と主となり、高専・短大卒が13.1%、大卒が9.8%である。役職では、「役職のない現場社員」が59.2%と多く、「リーダー・管理者(現場作業も行う)」が24.8%である。就業形態では、請負社員が46.3%で、派遣社員が32.8%で、就業形態が「わからない」とした者が20.1%になる。雇用契約期間が定められている者(有期契約)が56.0%、定められていない者が34.3%、「わからない」が8.6%となる。請負社員では雇用契約期間が定められてない者が39.1%と多くなる。現在の請負会社・派遣会社での雇用継続期間は、1年未満が24.5%、1年以上3年未満が19.9%、3年以上が53.2%になる。
リーマンショック後、製造業における派遣社員・請負社員の活用が急減したため、派遣会社・請負会社における採用の停止や削減など生じたため、若年層の派遣社員・請負社員が少なく、比較的継続的に雇用されたり就業している派遣社員・請負社員の回答者が多くなったと思われる。また、自分の就業形態を「わからない」と回答した者が2割も占める点は、留意が必要となる。派遣会社・請負会社として自社の社員に対して就業形態を正確に説明することが求められよう。
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東京大学社会科学研究所 http://jww.iss.u-tokyo.ac.jp/ /同研究所プレスリリースより抜粋・9月29日