マーサーとクロール、アジア・太平洋地域の企業による
クロスボーダーM&Aに関する最新レポートを発表
マーサー及びクロールが委託したmergermarketによる最新のグローバル調査によると、過去3年にクロスボーダーM&Aを実施したアジ ア・太平洋地域の企業及びプライベートエクイティ・ファーム(以下PE)の回答企業155社のうち、83%が今後18ヵ月間でアジア・太平洋地域に拠点を置く企業によるクロスボーダーM&Aが増加する、と回答したことがわかった。
調査によれば、日本企業及び日本のPEによるクロスボーダーM&Aにおいて中国が最も志向されたマーケットであり、日本の回答企業の73%が今後 18ヵ月間に中国で買収を行う可能性があると回答している。2位は東南アジアで、全回答企業の27%、続いて北米とインドにおいては全回答企業の18%が 同地域における買収の可能性があるとした。日本における買収を計画すると回答したのは、全回答企業の1%に過ぎず、アジアで買収を行う企業にとって日本が 最も志向されていないマーケットであることを示唆する結果となった。
日本企業は積極的に新たな地域へ事業を拡大しようと模索しているものの、その多くは現地の労働法や法的要件の理解から対象企業およびその無形資産の背景、レピュテーション、信頼性の評価に至るまで、潜在的な問題を抱えていることも浮かび上がった。
コンサルティング、アウトソーシング、インベスト分野でグローバルにサービスを展開する組織・人事コンサルティングファームであるマーサー、および世界有 数のリスクコンサルティング・ファームであるクロールは、mergermarketと協働し、調査結果をレポート「アジア・太平洋地域の企業によるクロス ボーダーM&Aのリスクと成功の鍵」(Asia on the Buy Side: The Key to Success -The human capital and hidden risks in cross-border acquisitions)にまとめた。本調査は2010年3月〜4月の間に実施され、過去3年間にクロスボーダーM&Aを実施したアジア・太平 洋地域に拠点を置く企業及びプライベートエクイティファームの経営層155人に対し、買収の成功に影響を与えたリスクマネジメントや人事関連問題に関する見解について調査を行った。同レポートは、調査結果の概要に、マーサー及びクロールのコンサルタントからの分析・コメントを加えたものである。
マーサー ジャパンのグローバルM&Aコンサルティング部門代表の堀之内順至は、以下のように述べている。「日本企業がクロスボーダーM&Aを通じ て成長機会を追求する必要性は、共通認識になっています。本調査結果は、デューデリジェンスからPMI(ポスト・マージャー・インテグレーション)に至る クロスボーダーM&Aを行う際の課題に焦点を当てています。特に、日本のグローバル企業にとっては、過去のクロスボーダーM&Aの経験か らどのようなアクションを採るべきかを慎重に検討しなければなりません。買収により成長し続けるための知見は、一握りの経営陣だけではなく、組織全体にナ レッジとして蓄積されることが必要です。」
同調査によれば、直近のクロスボーダーM&Aについて「完全に成功した」もしくは「非常に成功した」と捉えているのはアジア・太平洋地域の企業の 40%に留まっている。日本企業に至っては、「完全に成功した」とする回答はなく、「非常に成功した」も18%に留まった。香港の企業が47%、オースト ラリアの企業が45%、シンガポールの企業が50%であったのと比較すると対照的である。同レポートは、プレディールからポストディールに至るまで、ディールに成功する企業は何を的確に行い、失敗した企業は何が原因なのか、といった点にも触れている。
クロール東京支社のマネージング・ディレクターの佐藤剛己は次のように述べている。「日本企業は全体としてリスク・デューデリジェンスの重要性について認 識し始めてはいるものの、この調査結果を見ると長期的にディールの成功に影響を与える諸問題を見落としがちなことがわかります。また、監督官庁の規制に よってビジネスが阻害されるリスク(規制リスク)の存在や、経営陣の経歴、鍵となる社員の信頼性を把握することは、企業がディール後に直面する可能性のある問題を明らかにし、ビジネス上の失敗による損失を軽減することにつながります」
【 調査結果の概要 】
■ 回答企業の83%がアジア・太平洋における クロスボーダーM&Aは今後18ヵ月間で増加すると考えており、近い将来のアジア・太平洋地域のクロスボーダーM&Aについてポジティブ に捉えている。香港に拠点を置く回答企業の94%がこのように見ており最も強気であるのに対し、日本企業の回答は71%に留まっている。
■ アジア・太平洋地域の企業が最もリスクが大きいと見ている地域は、東欧、ロシア、アフリカ及び中国である。
■ アジア・太平洋地域のクロスボーダーM&Aを実施する企業は、人事関連の問題の重要性を認識しており、80%以上の回答企業がディールに際しては、無形資産や文化の違いが重要な検討事項であると考えている。
■ 年金制度や資産の債務にまつわる隠れたコストは、文化の問題と同様、ディールを頓挫させる要因として大きいことから、回答企業の55%が人事関連の財務リスクは、デューデリジェンスに際して精査すべき最も重要な分野の一つと指摘している。
■ アジア・太平洋地域の企業がディールに際し て重要であると答えた要素のうち、ディールの長期的な成功に影響を与える諸問題を見落としがちである。例えば、鍵となる社員の信頼性(17%)や経営陣の 業績(4%)、規制リスクの存在(1%)等である。日本企業の回答率はそれぞれ0%、21%、64%であった。企業の市場評価についての回答が0%であっ たことと合わせ、日本企業は当局の法規制については懸念するものの、企業そのものや実行チームの第三者評価については関心が低いことがわかる。
■ リスク・デューデリジェンスの実施は、ディールの結果にポジティブな影響を与える。直近のクロスボーダーM&Aにおいてリスク・デューデリジェンスを実施した回答企業のうち、約82%が、当該買収が完全に成功した又は非常に成功したと回答している。
■ 直近のクロスボーダーディールにおいて、対象企業の不正を発見したと答えた回答企業は47%に上り、ディール終了後に再交渉もしくはエグジットを余儀なくされたとしている。
レポート全文(4.5MB)をダウンロードするにはこちら、エグゼキュティブ・サマリー(200KB)をダウンロードするにはこちらをクリックしてください。 また、日本語版の要約を近日中に公開する予定です。
◆ 本リリースの詳細はこちらをご確認下さい。
マーサー ジャパン http://www.mercer.co.jp /同社プレスリリースより抜粋・8月20日