ミック経済研究所、「アウトソーシング総市場」規模を発表
情報・通信分野分野専門の市場調査機関であるミック経済研究所(東京都港区、有賀 章・社長)は、国内の主要ITサービス企業45社への調査をまとめた戦略マーケティング資料「人材ビジネス系・専門アウトソーサ系 アウトソーシング総市場の現状と展望 2010年度版」( 調査期間2010年1月〜4月)を2010年5月18日に発刊したと、発表しました。
同マーケティング資料は、国内の主要な人材派遣企業、請負企業 45社を対象に、各社の派遣・請負サービス売上高や、その収益性、事業戦略などについて調査をしています。アウトソーシング総市場を12の職種カテゴリ、9業種カテゴリ、に分けて調査、集計・分析を行っています。また、派遣法の改正がなされた場合の影響を加味した上で、2015年度までの中期予測を試みています。
< アウトソーシング総市場 >
【 9兆5000億円の市場が 2年間で3分の2の規模に 】
派遣・請負から成るアウトソーシング総市場は、世界的な不況が始まった2008年度には 9兆4,883億円と10兆円を目前にしていたが、景気減速と同時に急激な需要の減退に見まわれ、縮小の道をたどった。2008年度からのわずか2年間で市場の3分の1にあたる 3兆1,708億円が消滅。2010年度の市場規模は、6兆3,175億円にまで縮小の予測となっている。2008年度の市場規模と比べれば、実に3分の2という急速な市況の悪化である。
市場減退への影響が大きかったのは、顧客企業の業務縮小と業績悪化に伴うアウトソーシング予算の縮小である。いままで派遣や請負を活用していた業務を自社社員で対応する「 内製化」に流れた顧客企業が多かった。また、とりわけ製造業ユーザでは、生産調整のため案件の中止、解約が相次ぎ、いわゆる「派遣切り」によって、市場が縮小した。
さらに、市場縮小の要因が景気悪化だけではなかったのが、今回の急激な市場後退である。まず、携帯電話業界で営業・販売の派遣・請負案件が減少した。販売制度の変更で端末価格が上昇したことで、2009年度の携帯電話の出荷台数が大きく落ち込み、それに伴って、営業・販売キャンペーン案件などが激減したためである。また、施行が見込まれる派遣法改正の影響もあった。登録型派遣や製造業派遣の禁止対象になる派遣法改正が見込まれているため、コンプライアンスリスク回避のために、顧客企業が直雇用へとシフトするケースが発生し、アウトソーシング総市場にとってはマイナス材料となった。
【 法改正のインパクト 】
……直雇用へのシフトにより猶予期間中に市場金額 3,300億円程度が消滅との試算
労働者派遣法の改正案は2010年3月19日に閣議決定となり、今国会での成立が見込まれている。改正のポイントは、(1) 専門 26業務や高齢者派遣などを除いた登録型派遣の原 則禁止、(2) 常用型派遣を除く製造業派遣の原則禁止、(3) 短期派遣の原則禁止である。ただし、改正法公布後に3年の猶予が認められており、(1)の業務については一部で最大2年の猶予期間の延長が認められる見通しである。
この改正法の影響で禁止対象となる市場規模は、2008年度ベースで、約375,600人、1兆3,071億円(弊社推定)となる。
ただし、これだけの規模の市場が全て消滅するわけではない。確かに、法改正の主旨のひとつは雇用の安定であり、具体的には正社員の増加、企業による直雇用の増加であるから、派遣先企業が直雇用へシフトする可能性は高く、派遣市場にとってマイナス要因となる。しかし、禁止とならない形態での派遣や、業務の請負といった形であれば、派遣先企業では引き続き外部リソースを活用できるため、アウトソーシング企業にとっては、禁止対象となる領域での売上が全てなくなってしまうわけではない。
法改正により禁止対象となる派遣については、おおむね以下の4つのシナリオが考えられる。
弊社の試算では、上述の禁止対象となる市場1兆3,071億円のうち、約4分の1にあたる3,266億円が直接雇用へとシフトし、市場から失われる。残りの4分の3は、特定労働者派遣(2)、 請負化(3)にシフトする。なお、直接雇用により市場から失われる市場金額3,266億円は、1ヵ年で消滅するのではなく、猶予期間(3〜5年)をかけて消滅していくことになる。
なお、市場規模レベルでは影響がない請負化であるが、参入企業レベルで見れば、影響は大きい。請負ノウハウがない派遣企業は、禁止対象となる派遣案件を失うことになりかねないからである。数社から数十社の派遣企業と取り引きのある顧客企業が、請負化を機に、派遣元を絞り込むことが予想される。そのため、請負化に対応できない派遣事業者はシェアを失い、請負ノウハウを持った事業者がシェアを拡大させていくことになる。
【 体裁・価格 】
同資料体裁は A4版(ファイル製本)で、全1026頁。価格はハードカバー版 199,500円、CD-ROM版399,000円、ハードカバー版とCD-ROM版のセット567,000円( いずれも消費税込み)。
◆ 調査資料の詳細はこちらをご覧下さい。
ミック経済研究所 http://www.mic-r.co.jp/ /同社プレスリリースより抜粋・5月18日