タワーズワトソンが「グローバル従業員意識調査」結果を発表
効果的な人事・財務及びリスクマネジメントを通して企業の業績向上を支援するグローバルコンサルティングファームのタワーズワトソン(本社ニューヨーク、東京オフィス:東京都千代田区、東京オフィス マネージングディレクター:淡輪敬三)はこのほど、「2010年グローバル従業員意識調査」の結果を発表しました。
今回が 3回目となる同調査は世界22の国と地域で働く2万人超(日本からは1,000人が参加)の従業員を対象に、会社が従業員に対して提供する職場環境や人事環境などについて行われたもので、リーマンショック後の従業員の働く意識に関する、最新かつ包括的な調査です。これから 3回に分けて主たるファインディングスをお届けします。
■ 日本で働く従業員のエンゲージメントに変化
本調査では、「従業員が会社の成功のために貢献しようとする意思と能力」を従業員エンゲージメントと定義し、全従業員を「非常に意欲的」、「意欲的」、「意欲的でない」、「全く意欲的でない」、という4つのグループに分類し、「非常に意欲的」と「意欲的」の回答の総和を「好意的回答」としています。
エンゲージメント度が最も高い「非常に意欲的」な従業員の比率を、リーマンショック後の環境激変期である今回と前回 2007年とで比べると、日本では2007年の調査3%から2010年には5%に増加しており、エンゲージメント度が二番目に高い「意欲的」な従業員の比率も25%から31%に増加しています。グローバルでは、
「非常に意欲的」な従業員の比率は2007年、2010年ともに21%であり、日本よりもはるかに高い水準であることに変わりはありません。
日本のカルチャーや日本人の回答傾向(日本人は中間の回答を選びやすい)などを考慮すると、こうした意識調査で日本のスコアが低く出る傾向にあることは周知の事実です。
しかしながら、今回着目に値するのは、従業員エンゲージメントを構成する3つの要素とその変化です。
本調査では、以下の3つの要素によって従業員エンゲージメントの度合いと状態を把握しています。
1. 会社の目指すべき目標や方針を信じて理解する 「考える (Rational)」
2. 会社に対して誇りや愛着を持っている 「感じる (Emotional)」
3. 求められる以上のことを積極的にやろうとする 「行動する (Motivational)」
この 3要素に関連する9つの設問について、2007年の結果と比較すると次のようになっています。
■ エンゲージメント構成要素とその変化
まず、2007年の日本の従業員の調査で「賛同する」と回答した従業員の比率をみると、「考える」では40%台(42%、35%、43%の平均)あったものの、「感じる」では20%前半(22%、26%、17%の平均)と非常に低くなり、「行動する」の設問では30%台半ば(38%、34%、32%の平均)という結果でした。会社の目指す方向性や方針を頭ではある程度理解しているものの、それに賛同しこの会社で率先して行動しようとは思えないという状況にあったと解釈することができます。
ところが今回の調査では、「考える」の設問で「組織の目標や目的を信じられる」とする従業員の比率が下がり、これまで低かった「感じる」に関する設問および「行動する」に関する設問では好意的回答の比率が上がっています。ここから、会社の方向性への理解や納得感は下がっている反面、会社に対する愛着あるいは自発的に行動しようという意識は高まっているという状況が読み取れます。
経済環境が激変し、雇用の不透明感が増す中、企業は経営の方向性を明示することに苦慮し、従業員は会社の今後の方向性を読み取れないと感じていること、そして従業員の間では、今いる組織への帰属意識、そこで行動を取らなければという意識が高まっていることが本調査結果から伺えます。しかしながら、これは厳しい雇用環境の中で生じた一過性の変化に過ぎないという可能性もあり、今後の継続的な調査検証が待たれます。
■ 従業員エンゲージメントのキードライバー
本調査では、従業員のエンゲージメントと強い相関を持つ要素(エンゲージメントのキードライバー)を統計的に特定しています。日本の従業員のエンゲージメントドライバーのトップに挙がるのは「キャリアディベロップメントの機会」、「リーダーシップ」、「エンパワメント(権限委譲)」、「企業イメージ(CSR、社内外への対応)」、「企業の目標・目的の明確さ」などとなっています。若干の順位の違いはありますが、日本でも世界でも、従業員のエンゲージメントに強い影響を持つ要素は同じであることが分かります。
同調査を担当した、東京オフィスのデータ・サーベイ・アンド・テクノロジー(報酬・社員意識調査)統括ディレクター岡田恵子は次のように述べています。
「日本の従業員エンゲージメントはグローバルに比べると依然として低いことがわかりました。しかし、日本ではエンゲージメントを構成する『感じる』および『行動する』の要素が改善傾向にあり、会社の目標や方針を明確にすることで『考える』の要素を回復させ、従業員のエンゲージメント向上につなげることが可能と思われます。同時に、従業員の意欲につながる要素は日本も世界も同じです。 キャリアの機会、優れたリーダーの存在、そして能力発揮の場が提供される権限委譲。こうした環境を提供することが従業員エンゲージメントの向上につながるのです。グローバル化を進める中において、日本は特殊でグローバルとは異なるという議論から脱し、グローバルビジネスにおける日本の位置づけ、日本人従業員に求める役割という経営の視点から、従業員のエンゲージメントについて議論を進めるべきときを迎えています」。
【 タワーズワトソン「グローバル従業員意識調査」について 】
タワーズワトソンは、ハリス・インタラクティブ社を通して、2010年の世界的な従業員の意識に関する調査を実施しました。今回で3度目となる本調査は、日本(1,000人の従業員が回答)、オーストラリア、中国、香港、インド、韓国、マレーシア、シンガポール、ベルギー、フランス、ドイツ、アイルランド、イタリア、オランダ、ロシア、スペイン、スウェーデン、英国、ブラジル、メキシコ、カナダおよび米国の計22の国と地域で働く2万人超の中・大規模の企業に属する従業員(正社員)から回答を得ています。
【 タワーズワトソンについて(NY 証取/NASDAQ 上場:TW) 】
本社:ニューヨーク。タワーズワトソンは、効果的な人事・財務及びリスクマネジメントを通して企業の業績向上を支援する世界有数のプロフェッショナルサービス会社として、従業員ベネフィットプログラムや人事・報酬制度、企業リスク及び資産管理の分野におけるソリューションを提供しています。全世界に14,000人のアソシエイトを擁しています。
タワーズワトソン http://www.towerswatson.com/ /同社プレスリリースより抜粋・5月17日