働きがい1万人調査
“働きやすさ(柔軟な働き方)”は、検討した転職を思い留まらせる “働きがい(仕事のやりがい)”は、転職を考えさせないカギ
~エンゲージメントが高くても4割近くの人が転職を考える時代~
株式会社日本能率協会総合研究所(JMAR、代表取締役社長:譲原 正昭)では、300人以上の企業に勤務する正社員1万人を対象にアンケートを行い、企業における従業員エンゲージメントの実態や、転職意向とその背景を探り、企業の人事マネジメントに活かしていただくことを目的に、「働きがいに関するアンケート」を行いました。
<調査結果のポイント>
1. 25~34歳は転職活動が当たり前、エンゲージメントが高いと転職にアクティブな層は減少する
◇特に転職活動が活発な年齢層(転職活動中もしくは過去3年以内に転職を検討)は25~34歳であり、そのうち8.9%が現在転職活動中、44.1%が過去3年以内に転職を検討した層である。転職を考えたことがない層は半数を下回り、転職を考えるのは当たり前となっている。
◇25~34歳のエンゲージメント層(会社への誇りと仕事へのやりがいの両方が高い)を見ると、転職活動中は4.2%と半減し、過去3年以内に転職を検討した層は32.7%と10%以上減るものの、転職に関心を持った層が一定層いることがうかがえる。ただし、転職を考えない層が63.1%と、不満層に比べても2割以上多く、エンゲージメントを高めることが、転職を考えないことにつながると考えられる。
2.25~34歳に転職させないためには「仕事のやりがい」が重要、転職の引き留めには、「柔軟な働き方」や「勤務地」が寄与しており、特にリモートワークの頻度が高いと「柔軟な働き方」を理由に現職に留まる傾向
◇過去3年以内に転職を考えたことがない理由としては、「仕事のやりがい」(26.9%)、「勤務地」(26.4%)、「給与」(22.9%)が三大理由となっている。一方、技能職は「給与」を最も重視する傾向が見られる。
◇25~34歳が転職を検討しつつも思い留まった理由としては、「希望する転職先が見つからない」を除くと、「柔軟な働き方」と「勤務地」が上位に来ている。柔軟な働き方ができる工夫は、人材の流出を防ぐための重要なポイントといえる。
3.従業員エンゲージメントを高めることは、管理職志向の向上にも寄与
◇将来管理職になりたいかを尋ねたところ、肯定的な回答は非管理職の25%程度と少ないが、エンゲージメント層は倍近くとなり、管理職になることにも前向きである。したがって、管理職候補になる年代に対しては、エンゲージメントを維持・向上させることが重要である。
4.JMARで定義した従業員エンゲージメント(会社への誇りと仕事へのやりがいの両方が高い)は、人材版伊藤レポートの従業員エンゲージメント(会社の目指す方向性に共感し、貢献意欲が高い)と合致し、特にリテンションにつながる
◇JMARにおける定義の従業員エンゲージメントの高い層と、人材版伊藤レポートの従業員エンゲージメントである「企業が目指す姿や方向性を、従業員が理解・共感し、その達成に向けて貢献しようという意識を持っていること」の肯定層との合致度を検証すると、70~75%は合致していることが検証された。
◇また、JMAR定義のエンゲージメント層を分析すると、転職を考えたことがない人の割合が高くなっており、本定義のエンゲージメント層は転職リスクが少ないことが示唆された。
5.「従業員満足度」と「従業員エンゲージメント」は回答者側からは同義と捉えられている
◇「会社で働くことに満足しているか」と、エンゲージメントとして定義されている内容の「働きがいのある会社か」「貢献意欲が持てる会社か」など、いくつかの項目と関係性を分析しても、かなり相関が高く、回答者にとっては同義と捉えられている。従って、「当社で働くことに満足している」という問いであったとしても、従業員エンゲージメントの高さを問う設問として活用できる。
<調査結果についてのコメント>
エンゲージメントが低いと、転職リスクが高いことが改めて検証されたが、転職活動がアクティブな30代前後の層においては、エンゲージメントが高くても、4割近くは転職活動中もしくは検討して思い留まった層であることが分かった。従って、一定の流出リスクは避けられない時代であることを念頭におきつつも、エンゲージメントが高い層は転職リスクが低いことも事実である。20代後半になるとエンゲージメントが急に低下する傾向があるため、20代前半からのエンゲージメントを維持・向上させる従業員経験が重要であると言える。従業員経験としては、「仕事のやりがい」が重要な転職リスク回避のポイントとなっており、上司は部下の強みや指向を見極めつつ、いかに仕事において充実感を感じてもらうかが必要となっている。また、転職を考えた層を引き留まらせる要因としては、「柔軟な働き方」が重要であり、働く環境の整備が不可欠となっている。
しかし、働きやすい環境の整備は、検討していた転職を踏み留まらせる手段となり得るものの、仕事そのものの充実感がないと従業員エンゲージメントは高まらないため、企業においては、“働きやすさ”と“働きがい”の両輪が求められている。
また、従業員満足度調査からエンゲージメント調査に移行する流れのある中で、企業と従業員の関係性の変化はあるが、日本企業の従業員を対象としたアンケートにおいては、「当社に満足しているか」という問いに肯定している層が多ければ、従業員エンゲージメントが高いと言っても問題はなく、各社において、大切にしている価値観や回答者に伝わりやすい言葉を使った設問が適していると言える。
<調査概要>
調査名称:働きがいに関するアンケート
調査対象:従業員300名以上の企業における会社員・会社役員
対象者数:10,000名
対象者の年代:20代以下:20.1%、30代:30.6%、40代:19.3%、50代以上:30.1%
対象者の性別:男性:58.8%、女性:41.2%
対象者の業種:製造業:30.3%、非製造業:69.7%
対象者の役職:一般職員:60.0%、主任級:13.5%、係長級:9.0%、課長級:11.7%、部長級以上:5.8%
調査期間:2024年7月11日~7月16日
調査方法:インターネット調査
企画・実施:株式会社日本能率協会総合研究所(JMAR)
◆本リリースの詳細は、こちらをご覧ください。
(株式会社日本能率協会総合研究所/9月12日発表・同社プレスリリースより転載)