「男性育休」に関する意識調査
2022年10月より “男性版育休”制度 が施行
男性育休に関する自社制度の認知度は3割未満 一方、認知している人の育休取得意向は7割超え
男性育休浸透のカギは、会社のサポート体制
2021年6月、育児・介護休業法が改正されました。そして2022年4月から段階的に施行されている男性の育休に関する法改正において、2022年10月より、「産後パパ育休(出生時育児休業)」「育児休業の分割取得」が施行されます。
今回の法改正に伴い、江崎グリコ株式会社は、育休を取得した経験者及び今後取得予定の男女400名に「男性育休」に関する意識調査を行いました。主な調査結果は以下の通りです。
【主な調査サマリー】
- 男性育休に関する自社制度の認知度は3割未満。一方で、認知している人の育休取得意向は7割越え。会社の育休制度が整っており、なおかつ内容が周知されていることが重要。
- 育休取得前に最も不安だったことは、「職場の反応」。その理由として「育休を取得する人が少ない」と感じる人が5割も。また男性は、ハラスメントや嫌がらせに対し、より不安を抱く傾向。男性の育休取得に対する会社の理解や、取得しやすい社内の雰囲気醸成が重要。
- 一方、職場復帰後には男性の約5割が「育休取得者に対する理解が生まれた」と回答。男性育休に対する満足度は、取得者本人の6割以上、パートナーの約6割が、高い満足度を示した。
- 職場の女性の育休支援が進んでいると回答したのは7割以上。一方で、男性育休支援が進んでいると回答したのは約4割。男性の育休支援が不十分と回答した理由は、「人員不足」、「育休を取りたいと声を上げづらい」 、「会社の支援制度が充実していない」。
- 育休経験者が求める、仕事と育児の両立に必要な会社の支援は“柔軟な働き方“。産休・育休前に知っておきたかったのは“金銭的な情報や経験者の体験談“。
【調査コメントサマリー】 大妻女子大学 人間関係学部 准教授 田中俊之先生
- 父親の育休を有意義にするためのキーワードは「ケア」。ジェンダー平等の時代である今日では、男性にも子育てを含めてケア役割が期待されている。
- 父親によるケアは出産前から始まる。そして誕生からの1年は、愛情に基づいた親子関係の形成に重要な期間。「父親になる」のであれば、男性も育休を取るのが当たり前であるべき。
- 夫として、そして、父親としてケアを担うことが、家族の幸せにつながる
- 育休を通じてケアの重要性に気づいた男性は、家庭や地域といった他の社会領域の価値を理解できるようになるはず。広い視野を持った「社会人」は、多様な人が一緒に働く職場においても貴重な人材となりえる。
【調査詳細】
■男性育休に関する自社制度の認知度は3割未満。一方で、認知している人の育休取得意向は7割越え。 会社の育休制度が整っており、なおかつ内容が周知されていることが重要。
経験者・予定者であっても、育休の法改正を詳細まで知っていると回答したのは30.5%と決して高くないことが分かりました。また、男性版育休(パパ育休)に関する会社の制度を知っていますか?という問いに対しても、詳細まで知っているのは25.3%と、3割未満の結果となりました。
一方、利用意向について聞いたところ、男性版育休(パパ育休)に関する自社制度について、「詳細まで把握している」と回答した人の積極的な利用意向が73.3%と最も高く、会社の育休制度が整っており、なおかつ内容が周知されていることが重要なカギであることが分かります。
■育休取得前に最も不安だったことは、「職場の反応」。その理由として「育休を取得する人が少ない」と感じる人が5割も。また男性は、ハラスメントや嫌がらせに対し、より不安を抱く傾向。男性の育休取得に対する会社の理解や、取得しやすい社内の雰囲気醸成が重要。
育休取得への不安を聞いたところ、実に49.3%が「不安」と回答しました。不安に感じる内容として、「職場の反応(58.9%)」、「復帰後の仕事への影響(配置転換、昇進等)(58.9%)」という回答が多く、職場の反応については男性の70.2%が不安に感じていることが分かりました。男女ともの理由としては、「育休を取得する人が少ない(51.3%)」、「会社の制度が整っていない(38.1%)」と感じる人が多く、制度があっても利用しづらい実態や、仕組み自体が整っていないという課題が浮き彫りとなりました。また、男性はハラスメントや嫌がらせに対し不安を抱く割合が高く、男性の育休取得に対する会社の理解や、取得しやすい社内の雰囲気醸成が重要であるとうかがえます。
■一方、職場復帰後には男性の約5割が「育休取得者に対する理解が生まれた」と回答また、半数以上が「上司や同僚が取得対象者に協力的」と回答。
休取得前の不安は5割近い結果となりましたが、実際に育休後の職場復帰では「育休取得者に対する理解が生まれた」と回答したのが全体の35.3%、特に男性は45.0%という結果となりました。
また、育休を取得した際の職場の雰囲気は、「上司が取得対象者に協力的(65.5%)」、「同僚が取得対象者に協力的(54.1%)」と半数以上が、周囲が好意的だったと感じていることが分かりました。一方、「制度はあるが育休取得に申し訳なさを感じて取得しづらい(16.2%)」、「制度はあるが人員不足で取得しづらい(15.4%)」など実際の経験者でも肩身の狭い思いを強いられている人たちがいる現実も浮き彫りとなりました。
育休の復帰後ネガティブに感じた要素でも、「時間が足りない(37.8%)」の次に、「急な休みなどで肩身の狭い思いをしている(23.5%)」と続くことから、復帰後も一定数の人が子育てにおける職場の課題を感じていることが明らかになりました。
■男性育休に対する満足度は、取得者本人の6割以上、パートナーの約6割が、高い満足度を示した。約8割が「パートナーと協力し、子ども・家族との時間を大切に過ごせた」と回答。
育休取得者は男女ともに満足度が高く、約6割の結果に。中でも男性は「パートナーと協力し、子ども・家族との時間を大切に過ごせた」と回答する人が79.7%にも上りました。その他、「子育てに集中できた(60.9%)」、「家事(料理・掃除等)を十分に行えた(56.5%)」と本来の育休の目的を果たせている人が多く見受けられました。また、「資格取得など自身のキャリアに活きるスキルアップができた(9.4%)」、「自身のキャリアを見直せた(5.8%)」と一定数、仕事への意識・新しい挑戦のきっかけにもなることがうかがえました。
■職場の女性の育休支援が進んでいるのは7割以上。一方で、男性育休支援が進んでいると回答したのは約4割。男性の育休支援が不十分と回答した理由は、「人員不足」、「育休を取りたいと声を上げづらい」 、「会社の支援制度が充実していない」。
昨今、男女ともに育休推進企業も増えている中で、女性の育休支援が進んでいると回答したのは71.6%と高い結果が出た一方、男性の育休支援が進んでいると感じる人はわずか38.8%と大幅に下回る結果になりました。男性の育休支援が進んでいない理由として、「人員不足(62.0%)」が最も多く、次いで「育休を取りたいと声を上げづらい(53.5%)」、「会社の支援制度が充実していない(43.0%)」、「制度はあるが実態として取得が難しい環境(41.5%)」と続きました。充実した育休取得のためにも、会社のサポートは今後ますます重要になってくると思われます。
■育休経験者が求める、仕事と育児の両立に必要な会社の支援は“柔軟な働き方“。産休・育休前に知っておきたかったのは“金銭的な情報や経験者の体験談“。
育児は1年で終わるものではありません。育休を過去に取得した経験者に、産休・育休以外に便利と感じる福利厚生を聞いてみると、「時間単位で取れる有給制度(48.5%)」、「子どもの病児休暇制度(47.8%)」、「フレックス制度(44.3%)」、「リモートワーク制度(41.5%)」などが上がりました。子どもが体調を崩した際に、フレキシブルに対応できる制度を求めていることがうかがえます。
また、産休・育休前の社内の子育て研修についてあったらいいなと感じるものについては、「補助金などの制度について(61.3%)」、「出産や育児にかかるお金について(48.3%)」と金銭的な情報や、「育休取得経験者の体験談について(46.5%)」という経験者の生の声も求められていることが分かりました。
【調査概要】
調査名:育休経験者及び育休取得予定者の育休意識調査
調査方法:インターネット調査
調査対象者:現在妊娠中もしくは0歳~2歳までの末子を持ち、本人またはパートナーが男性育休取得済み・または取得予定の男女
調査期間:2022/08/01~2022/08/03
サンプル数:事前調査4,316名 本調査男女200名 計400名
※構成比の数値は、小数点以下第2位を四捨五入しているため、個々の集計値の合計は必ずしも100.0%とならない場合があります。