世界経営幹部意識調査「ポストコロナの世界と企業経営」CEO版
公益財団法人 日本生産性本部は9月3日、米国コンファレンスボード(TCB:The Conference Board, Inc./ニューヨーク/President & CEO:Steve Odland)と協働した「世界経営幹部意識調査『ポストコロナの世界と企業経営』」から、新型コロナウイルス危機が企業経営に与える長期的影響や変化に対する経営幹部の意識を分析し、公表しました。本調査は、提携先であるコンファレンスボードが1999年より年次調査として行っている「世界経営幹部意識調査(英語名:C-Suite Challenge)」に、当本部がリージョナル・パートナーとして参加しているもので、グローバル視点での生産性課題の解決に向けた国際連携活動の一環となります。
今回の調査は、「新型コロナウイルス後の世界をどう考えるか(What's Next? Shaping the post COVID-19 world)」をテーマに、各国の経営幹部を対象に2020年5~6月に実施したもので、世界44か国1,316名(うち日本は155名)より回答を得ています。当本部は、日本国内での調査とともに、全世界CEO 606名(日本95名含む)を抜粋し、日本と他地域のCEOの特徴を比較・分析した日本分析レポートをTCBとともに作成しました。
分析の結果、自国の経済に関して、日本のCEOは他地域と比較して悲観的な回復シナリオを選択する傾向がみられました。企業経営については、日本のCEOはコロナ危機の長期的影響や変化として「消費者嗜好・購買行動変化」を挙げ、自社への影響や変化として「顧客嗜好変化に合わせビジネスモデルを再考」「デジタル主導の組織への変革ペースを速める」を挙げるなど、危機を変革の機会と捉える姿勢が表れています。なお、世界のCEOの約半数がコロナ危機により「グローバリゼーションは後退する」とみている一方、企業経営への長期的影響として「サプライチェーンの再構築」を選択したCEOは少数でした。また、働き方について、日本のCEOの多くは「時差勤務等柔軟な労働時間勤務」を挙げていますが、欧米CEOと比較して「在宅勤務/テレワーク勤務者の増加」や「ビデオ会議による出張の削減」は特に少なく、新しい働き方に対する意識に差がみられます。さらに、欧米CEOが重視していない「デジタルを活用した従業員管理の強化」を日本のCEOは重視しており、労務管理に対する意識の差も浮き彫りになりました。
日本のCEOの主な特徴は以下の通りです。
【日本のCEOの主な特徴】
1. 国内経済回復シナリオ及び自社収益回復時期について
・国内経済回復シナリオの予想は、他地域CEOと比較して悲観的
世界のCEOの42%がU字型(2020年第4四半期に回復)、約1/3(32%)がL字型(2021年もしくはそれ以降に回復)、16%がW字型(2020年後半に再度、厳格な感染対策をとらざるを得ず経済の緊縮をもたらす)と予想。日本のCEOはほぼ半数(49 %)がL字型を予想し、より悲観的な傾向(U字型は26%、W字型は23%)。
・自社の収益回復時期は2021年以降
自社収益が2020年初頭レベルに回復するのは「2021年以降」と日本のCEOの74%が回答。米国では73%、欧州では76%と日本と同じ傾向にあるが、中国は49%(最多は2020年後半の30%)と相対的に早い時期の回復予想。一方、日本の14%、世界でも10%のCEOが「2020年初頭の収益レベルから低下していない、もしくは既に回復」と回答。
2. 企業経営に与える長期的影響について
・危機を変革の好機に:世界・日本のCEOの約半数が「デジタル主導組織への変革ペースを速める」と回答。ポストコロナの世界において、よりリーン(筋肉質)かつアジャイル(機動的)なデジタルドリブン(主導)組織となるべく、多くのCEOが変革の機会と捉えている。また、米国(32.4%)、欧州(27.0%)と比較し、より多くの日本のCEO(58.7%)が、「顧客嗜好変化を捉えるためビジネスモデルを再考」と回答。また、「組織内コミュニケーションの透明性を高める」との回答が世界(17.8%)と比較して多いのも日本のCEO(28.3%)の特徴。
・コスト管理の強化と予算削減:世界のCEOの35.0%が「コスト管理と予算削減の加速」(日本のCEOは26.1%)を挙げている。他地域のCEOは「ビデオ会議による出張削減」「テレワーク増加によるオフィススペースの削減」も重視する傾向にあり、これらはコスト管理強化の一部と推察される。
日本のCEOは、「人間の仕事の機械化」(23.6%)、「一時的で柔軟な労働力の活用」(21.4%)を特に欧米のCEOより多く選択している(米国はともに13.1%、欧州は7.3%と13.9%)。一方、「ビデオ会議による出張削減」「テレワーク増加に伴うオフィススペース削減」との回答は他地域のCEOと比較して少ない。
・業務遂行体制を再定義:日本でも世界でも仕事や生活への欲求が変化し、それに伴い柔軟な働き方の実現を模索している。人的資源管理において、「時差勤務等新しい働き方を採用」を選択した日本のCEOは64.0%であり、世界のCEO(35.1%)と比較して多い。他方、世界のCEOの32.8%が「在宅勤務/テレワーク勤務者の増加」、31.6%が「アジャイルなプロジェクトチームによる業務遂行」を挙げているが、日本のCEOはそれぞれ20.2%、24.7%と相対的に低い。なお、日本のCEOの24.7%が選択している「デジタルを活用した従業員管理の強化」は、米国(2.0%)、欧州(6.3%)、世界(11.4%)と他地域では回答率が低い。
・消費者購買行動の変容:日本のCEOの約8割が「消費者の製品やサービスに対する評価の視点が変わるため、新しい購買行動が現れる」を選択している。非対面・非接触が好まれるなどの傾向はポストコロナでも継続すると予測され、日本のCEOの多くが選択している「組織のデジタル変革加速」(54.4%)と共に「ビジネスモデルの再考」(58.7%)につながると考えられる。
・優先順位が低いサプライチェーン再構築:企業運営への長期的な影響として、「サプライチェーン再構築」を選択したのは、日本CEOは1.1%、世界でも10.2%のみであった。
3. 経済、ビジネス、社会に与える長期的影響について
・企業ミッションの再定義:CEOの多く(世界63.5%、日本70.1%)は、「顧客、従業員、サプライヤー、コミュニティ、株主などすべてのステークホルダーの利益のために、企業ミッションを再定義すること」をポストコロナの課題として挙げている。
・グローバリゼーションの後退:世界のCEOの約半数(日本48.3%、米国50.0%、欧州59.6%、世界49.3%)がコロナ危機によりグローバリゼーションが後退するとみている。
・脱都市化の流れ:日本では59.8%のCEOが「人々の動向が変化し、密集した都市からより開放的な郊外やさらに離れた準郊外に移動する」を選択。他地域では米国(50.0%)、欧州(42.9%)、中国(22.9%)とばらつきのある回答。
◆本リリースの詳細は、こちらをご覧ください。
(公益財団法人 日本生産性本部 / 9月3日発表・同社プレスリリースより転載)