がんと共に生きるために 企業が取り組むべき従業員への支援
3月9日、政府はがん対策推進基本計画(第3期)を閣議決定し、「予防」「医療」と並び「がんとの共生」を大きな課題とした。今後は、国としてがんと仕事の両立支援などに取り組みながら、企業にもがん患者の働きやすい環境整備を呼びかけるという。
企業による取り組みも活発化している。サントリーホールディングスは4月、グループ社員を対象に健康保険の適用外となるがんの先進医療にかかる費用を支援する制度を導入する。補助は1人あたり500万円が上限となり、働き方改革によって浮いた残業代の一部を原資にする(日本経済新聞より)。
また、ポーラでは4月から、従業員に加え4.6万名(※2017年12月末時点)のビューティーディレクターとその家族を対象に「がんと共に生きる」ためのサポートプログラムを開始。安心して治療や看護に専念できるよう、心のケアや不安要素の提言をサポートする。また、がんと向き合った経験そのものが貴重なものととらえ、会社全体が理解し、その経験を共有し合える風土の発展に努める。
地域がん登録全国推計のデータによると、20歳から64歳までの就労可能年齢でがんに罹患している人は、2002年の約19万人から、2012年には約26万人に増加。また、がん医療の進歩により、5年相対生存率も年々上昇しているという。
一方で、がん経験者の就労を支援する団体「一般社団法人CSRプロジェクト」が行った調査(2010)によると、がんと診断された後、21%の人が依願退職や解雇、廃業となり、平均年収が約36%減少するなど、がんの治療を行いながら働きつづけることの難しさが浮き彫りになっている。今後は政府や企業の取り組みにより、働きながらがん治療を受けられる環境の整備がさらに求められそうだ。
(『日本の人事部』編集部)