トランジション
トランジションとは?
「トランジション」(transition)とは移行、過渡期、変わり目といった意味であり、ある段階から次の段階への移行期をあらわします。人事領域では、キャリアの発達の過程において、企業内で期待される新たな役割への転換期といった意味で使われています。
キャリアの移行期には一人で考える
「ニュートラルゾーン」が重要に
米国の人材系コンサルタントであるウィリアム・ブリッジズ氏が提唱した、キャリアにおける「トランジション理論」では、トランジションには「何かが終わる」「ニュートラルゾーン」「何かが始まる」の3段階があると述べています。
第1段階の「何かが終わる」には、自己都合による退社や転職といった自分の意思で終わらせる場合と、企業の都合による解雇、転勤、異動など外部からの影響で終わらせられる場合があります。ここでもたらされる感覚には、離脱、アイデンティティの喪失、覚醒、方向感覚の喪失などがあり、心理的な痛みを伴います。次の第2段階「ニュートラルゾーン」は、何かが終わることに伴うさまざまな喪失感を受け止めながら、それに耐える段階です。ここでは一人で考えながら、自ら方向づけを行います。そして第3段階の「何かが始まる」では、他者との対話などを通じて少しずつ目標に向けたプロセスが始まっていきます。トランジション理論では、これら3段階のうち、次のステージに向けて気持ちを整えるニュートラルゾーンが重要であるとされています。
この「トランジション」についての研究は日本でも行われており、トーマツイノベーションは2017年、女性活躍を長期的視点で推進するために企業の人事部および管理職が気をつけるべきポイントを、女性社員のステージごとにまとめた「トランジションマップ」を発表しました。これは人材開発研究の専門家である東京大学の中原淳准教授との共同調査研究プロジェクト「女性の働くを科学する」の成果の一つとして発表されたもので、マップには女性が働き続けたいと思う職場の特徴や昇進時に男女で異なる課題などが記載されています。
企業を取り巻く環境変化のスピードが加速し、組織がフラット化。準備期間を置かずマネージャーになった人材が会社の期待する役割に応えられていない、という状況に多くの企業が陥っています。「トランジション」における人材の状況を理解することで、人事は職場が今施策を実施するために適切な状況かどうかを判断でき、現場の管理職は社員の能力を最大限に引き出すマネジメントが可能となるでしょう。
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