【ヨミ】エンプロイーエクスペリエンス エンプロイー・エクスペリエンス
「エンプロイー・エクスペリエンス」(Employee Experience)とは、直訳すれば「従業員の経験」であり、従業員が企業や組織の中で体験する経験価値を意味します。従業員のエンゲージメントや組織文化といったものを超えた概念であり、従業員の健康や組織としての一体感などに影響する要素すべてを対象としています。その背景にはマーケティングの考え方があり、改善するには、いかに従業員が満足できる体験を与えられるか、という従業員の立場に立った視点が求められます。
(2017/9/28掲載)
エンプロイー・エクスペリエンスのケーススタディ
企業と従業員を結び付ける新たな概念
多様性の時代、企業の人事に求められる役割
人事部門・人材活用の課題とトレンドをまとめた「デロイト グローバル・ヒューマン・キャピタル・トレンド 2017」によれば、「エンプロイー・エクスペリエンス」は経営活動、人事施策、職場環境のような、仕事の中で“人”に影響を及ぼす因子によって醸成されるものであるとしています。企業の顧客満足度に対して新たにカスタマー・エクスペリエンスが生まれたように、企業と従業員を結びつける新たな概念として生まれた考え方です。
カスタマー・エクスペリエンスとは、商品やサービスの購入前後のプロセスや、それを利用するときに顧客が体験する「心地よさ」「驚き」「感動」「誇らしさ」といった感覚的、感情的な付加価値のことです。日本でいえばここに「おもてなし」というニュアンスも含まれます。「エンプロイー・エクスペリエンス」はカスタマー・エクスペリエンスの考え方を、企業とそこに働く従業員との関係に当てはめたものといえます。いわゆる従業員満足やエンゲージメントだけではなく、企業と従業員との接点で発生する、すべての経験を対象とします。
デロイト トーマツ コンサルティングが発表した「働き方改革の実態調査~Future of Workを見据えて~」によれば、働き方改革を実施する割合は 2015 年から倍増。その目的には「生産性の向上(87%)」に次いで「従業員の心身の健康の向上(76%)」、「従業員満足度の向上(74%)」といった「エンプロイー・エクスペリエンス」の視点から改革を志向する傾向が見られ、その重要度は年ごとに増しているといいます。
一例をあげると、世界的に有名な民泊仲介サイトを運営するAirbnbでは、人事部を会社の健康と幸せの向上のために日夜働く部署と位置付け、エンプロイー・エクスペリエンスチームと名付けています。これまで採用・教育・福利厚生と、分業で行われることが多かった日本の人事部門。従業員と企業を結び付ける部署として、そのあり方を見直す時が来ていると言えるでしょう。