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【ヨミ】フューチャーサーチ フューチャーサーチ

「フューチャーサーチ」とは、ホールシステム・アプローチと呼ばれる、大規模なダイアローグ(対話)を通じた組織開発の方法論の一つで、テーマに係わるさまざまなステークホルダー(利害関係者)が一堂に会し、対立や利害の不一致を超えて、より望ましい未来への合意とアクションを探求するためのファシリテーションの技法を言います。欧米では企業や行政、国際機関などで広く活用が進められ、複雑な状況下における組織開発や紛争解決、地域コミュニティーの活性化などの領域で大きな効果をあげています。
(2017/1/10掲載)
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フューチャーサーチのケーススタディ

課題を共有しながら利害が異なる人々を一堂に
影響力をもつメンバー限定の対話で変革を推進

解決が難しいテーマに対して、関わりのあるステークホルダーが一堂に会し、短期間で合意形成を図る「フューチャーサーチ」の手法は、組織開発コンサルティングの専門家であるマーヴィン・ワイスボード氏(Marvin Weisbord)とサンドラ・ジャノフ氏(Sandra Janoff)によって、1987年に初めて提唱されました。95年に現在のアプローチの基本が出来上がり、その後も小さな工夫や改良が加えられています。

具体的には、参加者が全員で過去と現状への認識を共有した上で、理想的な未来のシナリオを描き、これだけは守りたいという共通の価値観やよりどころ(コモン・グラウンド)を明確化、自己責任のもとにアクションプランを作成していく、という取り組みです。実施形態としては、そうしたタスクやプロセスが構造化された3日間程度のカンファレンスで構成されるのが一般的でしょう。

「フューチャーサーチ」の大きな特徴は、「ホールシステム・イン・ザ・ルーム」と呼ばれる参加者の構成や集め方の原則にあるといわれます。ホールシステムとは、対象となる組織に関連して相互作用する諸要素の全体という意味で、課題を共有しながら利害関係を異にするステークホルダーをすべて一堂に集めることが対話の大前提になっています。そうすることで、多様な視点を取り込むとともに、その場に組織全体の縮図を反映させ、参加者がテーマの全体像を自ずと把握できるようにするのがねらいです。

基本形としては、8名ほどのメンバーからなる関係者のグループが6~8個形成され、全体で60~70名程度の参加者が集まることになります。それぞれのステークホルダーの参加人数を同一にすることで、健全な多様性が担保され、組織内のマイノリティーや知識・情報量の乏しい参加者にも居心地の悪さを感じさせません。また、各グループには誰でも自由に参加できるわけではなく、それぞれのステークホルダーを代表するオピニオンリーダーやイニシアチブを発揮している人、そのテーマに強い影響を与える人を、主催者側が名指しで招くことも「フューチャーサーチ」の特徴の一つです。そうした影響力の大きいメンバー同士が数日間をともに過ごし、合意形成を探ることで、組織変革や課題解決への実効性が高まります。これは、主体性や自律性を最大限に重んじ、テーマについて関心と情熱を持つ人の自由参加を基本とする「アプリシエイティブ・インクワイアリー」(AI)や「オープンスペース・テクノロジー」(OST)など、ホールシステム・アプローチの他の手法とは大きく異なるポイントです。

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