ホワイト企業
ホワイト企業とは?
「ホワイト企業」とは、社員に劣悪な環境での労働を強いる企業を指す「ブラック企業」の対義語。社員の待遇や福利厚生などが充実し、数ある企業の中でも働きやすさにおいて特に優れている企業、という意味合いで使われる言葉です。就職や転職の際にブラック企業が避けられるのとは対照的に、安心して仕事に打ち込めるホワイト企業は、入社することが好ましいと奨励され、実際に新卒社員の定着率も高いのが特徴です。
白か黒か――二極化が進む企業の色分け
新卒定着率が働きやすさのバロメーターに
法令を無視して長時間労働などを強いる、いわゆるブラック企業問題で、厚生労働省は今年8月、疑いのある企業に立ち入り調査を実施し、悪質な労働基準法違反などがあった場合は社名を公表すると発表しました。若者を“使い捨て”にするブラック企業の活動を抑止するのが目的です。立ち入り調査を行うにあたり、“ブラック容疑”の主な根拠となったのは若手社員の離職率でした。待遇や労働環境が劣悪であるほど、離職率は当然、高まるからです。同省によると、大卒社員の3年以内の離職率は平均28.3%。これを極端に上回っている企業を中心に、取り締まりのメスが入りました。
離職率は、職場の働きやすさ/働きにくさを反映する重要なポイントです。したがって「ホワイト企業」とは、ブラック企業の反対で、若者の離職率が低い=新卒定着率が高い企業だと位置づけられます。
東洋経済新報社の調査(同社発行の『CSR企業総覧』2013年版掲載企業のうち、男女ともに入社者数・在籍者数を開示している799社について、新卒3年後の定着率の業種別・企業別ランキングを作成)によると、新卒定着率が最も高い“ホワイト業種”は「電気・ガス業」でした。電力会社やガス会社はとりわけ地方での人気や信頼度が高く、定着率は実に97.7%にのぼっています。さらに個別企業のデータを見ると、新卒後3年間で誰も辞めていない定着率100%という“超ホワイト企業”が92社ありました。その中でも入社者が最も多かったのが四国電力。09年春に男女合わせて122人が入社し、3年後の春まで全員在籍しています。ちなみに調査対象企業中、新卒入社者数が最も多いトヨタ自動車では、男性1,931人、女性558人が入社し、3年後にそれぞれ1,859人、515人が在籍。全体では95.4%という定着率になっています。
ブラック企業問題が深刻化する一方で、こうした高い定着率を誇るホワイト企業の存在にも注目が集まれば、“白か黒か”という就活生による企業の色分けは今後いっそう二極分化していくでしょう。そうした中、悪意で法令違反を犯しているわけではなく、法律知識や経営技量の不足から“ブラック化”してしまった企業を支援し、“ホワイト化”へ向けた体質改善を促す取り組みも始まっています。
今年9月、労使双方の立場で労働事件を扱った経験を持つ弁護士10人が「ホワイト弁護団」(代表・大川原栄弁護士)を設立しました。経営者や従業員の話を聞いた上で経営改善策を提案し、その実行の度合いを「ホワイト認証」という独自制度で評価、一定の基準をクリアした企業には認証マークを交付するほか、希望に応じ社名をホームページで公表するなどの活動を展開しています。代表の大川原弁護士は「悪意の企業は退場させる必要があるが、そうでない企業まで追い詰めれば、働く人のためにもならない」と述べています(東京新聞9月26日付)。白と黒だけでなく、その中間に位置する数多くの企業が“グレー体質”をどう脱却するか――生き残りをかけた対応が問われています。
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