M字カーブ
M字カーブとは?
日本人女性の年齢階級別の労働力率(15歳以上の人口に占める求職中の人も含めた働く人の割合)をグラフで表すと、学校卒業後20歳代でピークに達し、その後、30歳代の出産・育児期に落ち込み、子育てが一段落した40歳代で再上昇し、アルファベットの「M」のかたちに似た曲線を描く傾向が見られます。「M字型カーブ」とはこのグラフの形態を指し、日本人女性の就業状況の特徴を表す用語としても定着しています。
出産で仕事をあきらめる女性が6割
活用状況の「見える化」で逆U字型へ
労働力人口の本格的な減少が見込まれる中、女性の就労促進は日本経済の喫緊の課題であり、成長戦略としてもその潜在力の開発・活用に期待が高まっています。厚生労働省がまとめた「平成23年版 働く女性の実情」によると、平成23年の女性の労働力人口は2632万人で、前年に比べて11万人減少(前年比0.4%減)しました。また生産年齢(15~64歳)の労働力人口は前年より10万人少ない2419万人で、生産年齢の労働力率は前年と同じく63.0%でした。労働力率を年齢階級別にみると、「25~29歳」(77.2%)と「45~49歳」(75.7%)が左右のピークで、「35~39歳」が谷底になるかたちの「M字型カーブ」を描いていますが、M字型の谷底の値は67.0%で前年より0.9ポイント上昇、過去最高を更新しています。
女性の年齢階級別労働力率がこうしたM字型カーブを描くのは日本独特の傾向で、他の先進国にはほとんど見られません。欧米諸国では早くからM字型の底の部分にあたる出産・育児期の落ち込みが消え、逆U字型の曲線で推移していました。積極的な女性活用や柔軟な働き方の普及など、女性が出産・育児を経ても継続して働けるための環境整備が進んでいるためです。
一方、日本では改善されつつあるものの、依然としてM字型カーブが残っており、日本の現状では、仕事と出産・育児の両立はまだまだ容易ではありません。実際、内閣府の調査報告書などによると、第1子出産前後に離職する女性は正社員で5割近く、パートなどの非正規で8割以上、全体では6割にも上り、逆にこれを解消すれば国民総生産を1.5%押し上げるとの試算もあります。
政府が2012年6月に策定した「女性の活躍促進による経済活性化行動計画――働く『なでしこ』大作戦」においても、20代後半から40代女性の労働力率を高めてM字型カーブを逆U字形に変えることが、最大の目的の一つに掲げられています。カギをにぎるのが仕事と子育ての両立を支援する企業の施策や組織風土づくりの推進。厚労省ではそのための方策として、女性の活用状況の「見える化」に力を入れています。企業に、男女の平均勤続年数や管理職比率、男女間格差の解消に向けたポジティブ・アクションの取り組み状況などの情報開示を促すことで、意識改革を波及させていくのがねらいです。同省が運営する専用サイトでは、2013年1月末時点で、同省の要請に応じた800社近くが情報を公開しています。
こうした先進企業の多くは女性活用を、単に労働力確保という視点からだけでなく、重要な経営戦略として位置づけているのが特徴です。独立行政法人経済産業研究所が国内1677社を対象に行った調査では、育児・介護の両立支援や柔軟な職場環境推進に取り組む企業は、何もしない企業に比べて生産性が2倍以上高く、業績もよいことがわかっています。調査結果の分析を手がけた米・シカゴ大学の山口一男教授(社会統計学)は、「女性が管理職で活躍できるような企業は生産性が高いということ。女性の活躍を妨げる長時間労働や柔軟性に欠ける勤務体制などは改革すべき」と述べています(読売新聞2012年7月3日付)。
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