万年ルーキー
万年ルーキーとは?
「万年ルーキー」とは、所属する組織内に後輩がいないビジネスパーソンのこと。職場でずっと最年少のまま、新人の仕事をこなし続けている若手社員を指します。2008年のリーマン・ショック以降、新卒採用を手控えてきた企業において増加しているといわれ、後輩を指導したり、大きな案件を自ら動かしたりした経験がないなど、他の企業に勤める同世代とのキャリア格差が問題視されています。
職場の高齢化のあおりで30代でも“下っ端”
長過ぎる下積みが貴重な若手を指示待ち社員に
「万年ルーキー」社員の増加という現象が物語っているのは、日本企業における“職場の高齢化”の進行です。厚生労働省の賃金構造基本統計調査で、職場で働く人の平均年齢の推移をみると、東京オリンピックが開催された1964年には男性が32.9歳、女性が28.2歳でしたが、2011年には男性が42.3歳、女性が39.9歳と、それぞれ10歳ほど上昇しています。近年の新卒者採用の抑制による若年社員の減少が、高齢化の大きな原因の一つであることは疑いありません。
多くの企業が学生の青田買いや囲い込みに奔走したバブル期の大量採用もいまは昔。とりわけリーマン・ショック以降は、新卒採用の凍結さえ珍しくない“超氷河期”が続いています。帝国データバンクが全国の企業を対象に毎年実施している「雇用動向に関する企業の意識調査」によると、ここ数年は、有効回答約1万社のうち4割前後の企業が「正社員の採用予定はない」と答えています。大企業に限っても、2割前後が採用を凍結。産業別では不動産、卸売業、建設業といった業種に採用を手控える傾向が強く見られました。
組織の新陳代謝が滞り、職場が高齢化していくなか、特に他の部署に比べて新人が配属されにくい管理部門や研究・開発などの専門分野で、長過ぎる下積みに甘んじ続けているのが「万年ルーキー」社員です。彼らの多くは20歳代半ばから30代にさしかかる頃。それでも後輩がいないため、いつまでも職場で下っ端扱いされ、電話とりから会議の議事録づくり、飲み会の幹事に花見の場所取りまで、本来なら新入社員に任されるべき仕事もフル回転でこなさなければならないといいます。
IT関連など伸び盛りの業種では、すでに管理職として大きな仕事を取り仕切っている同年代も多いのに、自分は後輩を指導したことがない――彼らが、そんな焦りを抱くのは無理もありません。むしろ焦りを感じていないとしたら、事態はより深刻でしょう。人材育成や組織開発の観点からすると、万年ルーキーの何が問題なのか――後輩の育成や部下のマネジメントの訓練機会が失われることはもちろんですが、最大のデメリットはそうした“下っ端扱い”に本人が慣れきってしまうことです。主体的に考えて行動する習慣が身につかず、貴重な若手人材が、与えられた仕事を漫然とこなすだけの指示待ち社員になってしまいかねません。
仮に新卒採用を凍結せざるを得ない経営状況であったとしても、後輩のいない社員を万年ルーキーにしないために、業務上の提案を積極的に募ったり、社外の同年代との交流を支援したりするなど、貴重な現有の若手人材の積極性を引き出すために会社として手を尽くすべきでしょう。
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