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【ヨミ】ピープルマネジメント

ピープルマネジメント

ピープルマネジメントとは?

ピープルマネジメントとは、一人ひとりの成功にコミットするマネジメントのこと。従来の目標や成果を中心に据えたマネジメント手法とは異なり、従業員一人ひとりと向き合うことが特徴です。仕事のパフォーマンスだけでなく、キャリア、モチベーション、働き方など、多角的な視点からのサポートが含まれます。組織の成功には多くの要素が関与していますが、ピープルマネジメントはその中でも「人」を最重要視するアプローチです。

掲載日:2025/01/14
ピープルマネジメント

ピープルマネジメントと他のマネジメント

ピープルマネジメントは「人」を中心に据えたマネジメント手法であり、「ワークマネジメント」や「ナレッジマネジメント」「ジョブマネジメント」とは異なる独自の観点を持っています。これらの違いを理解することで、企業におけるピープルマネジメントの重要性を認識できます。

ピープルマネジメントとワークマネジメント

ワークマネジメントは、主に仕事やタスクの進行管理に焦点を当てた手法です。タスクがスケジュール通りに完了するよう丁寧にマネジメントすることで、プロジェクトの目標達成をサポートします。

一方、ピープルマネジメントは、従業員一人ひとりの能力やモチベーションに目を向け、個別性を尊重することが特徴です。たとえば、ゲーム開発のプロジェクトでは、納期内に高品質なゲームを完成させるというワークマネジメントの実施が必須です。しかし、関与する人数が増えるにつれ、ピープルマネジメントの役割が重要になります。

新人の早期戦力化を例に挙げると、ワークマネジメントでは新人にタスクを割り当て、進捗を管理しつつ適宜必要なサポートを提供します。ピープルマネジメントの観点からは、新人が自発的に学びを勧められる環境を整えます。この二つがあることで、新人は与えられたタスクを着実に完了できるようになるのです。また、自身のスキルを伸ばしたり、新たな学びに挑戦したりといったモチベーションが醸成されます。

ピープルマネジメントとナレッジマネジメント

ナレッジマネジメントは、情報や知識の共有と活用に焦点を当てています。組織の生産性向上や、人材のスキルアップには欠かせないものですが、従業員の動機付けには十分ではありません。多様なメンバーをまとめるためには、チームビルディングや個人をモチベートする上で効果的なピープルマネジメントが必要です。

近年の日本では、「部下の育成や動機づけ」といったピープルマネジメントの重要性が高まっており、管理職に求められる負荷も増大しています。単なる知識の共有だけでなく、個々の成長と動機付けを兼ね備えたアプローチが求められます。

ピープルマネジメントとジョブマネジメント

ジョブマネジメントは、特定の役割や職務に対する成果を管理する方法です。新規事業開発のような新たな挑戦においては、組織や人材を生かすピープルマネジメントの視点が欠かせません。

これまでの新規事業開発の成功要因は、ビジネスモデルの優位性が注目されてきましたが、人材や組織に焦点を当てたピープルマネジメントの重要性も増しています。従業員が持つ潜在的な能力を引き出すことが、新しい事業の成功を支える鍵となります。

ピープルマネジメントで大切なこと

ピープルマネジメントでは、価値観が多様な一人ひとりと向き合い、その特性や目標に応じたアプローチを取ることが大切です。一律の仕組みでは対応しきれない個々の違いを尊重し、パフォーマンスの向上やキャリア形成を支援するためのマネジメントが求められます。

従業員の目標達成を個別にサポートする

一律の目標設定や進捗管理では、従業員が持つ多様な背景や価値観に対応しきれません。それぞれの社員が持つ目標や課題を深く理解し、個別に適したリソースや支援を提供することが重要です。たとえば、成長速度が異なるメンバーには、個々に合ったペースでの学びや実務経験を提供することで、より効果的に自己実現をサポートできます。

適切な評価を行う

公平で透明性のある評価制度は重要ですが、一律の基準ではなく、従業員一人ひとりにパーソナライズされた評価が必要です。たとえば、同じ目標を達成する過程で発揮されたスキルや努力は個々に異なります。それらを丁寧に評価することで、従業員のモチベーションを高めると同時に、組織への信頼感を醸成します。

成長を支援する

従来の一律的なトレーニングプログラムには、多様な従業員のニーズに対応できないデメリットがあります。個々のスキルセットやキャリア目標に合わせたトレーニング、もしくは学びの機会を提供することで、従業員の専門能力を効率的に高めることができます。

たとえば、技術的なスキルが必要な社員には技術研修を、リーダーシップを磨きたい社員にはマネジメント研修を個別に計画すると効果的です。

パフォーマンスを向上させる

組織のパフォーマンスを向上させるためには、従業員一人ひとりに最適化された環境づくりが不可欠です。働きやすい環境の整備や、フィードバックの内容を個別に調整することで、各社員の潜在能力を最大限に引き出せます。たとえば、柔軟な働き方を導入することで、個々のライフスタイルに合わせた生産性向上が期待できます。

信頼関係を築く

従業員と信頼関係を築くには、日常的な対話を通じて、それぞれが抱える課題や不安に寄り添う姿勢が必要です。また、迅速かつ個別性を重視した問題解決への対応は、上司と部下、同僚同士の信頼を深めるうえで効果的です。

可能性を信じる

従業員一人ひとりの可能性を信じ、それを引き出すための挑戦の機会を提供することもピープルマネジメントの一環です。一律の評価基準に縛られるのではなく、挑戦のプロセスや学びを評価することで、失敗を恐れずに挑戦できる文化を育むことが大切です。

ピープルマネジメントの核心は、「人をおろそかにせず、最大限に生かす」ことです。一律の仕組みではなく、個々のニーズや可能性に応じて対応することで、従業員の満足度を向上させ、信頼して仕事ができる環境を提供できます。これにより、組織全体が持続的に成長できる基盤を築くことにつながります。

ピープルマネジメントが注目されている背景と実践ポイント

〈 プロフェッショナルに聞く 〉

阿須間 麗氏
阿須間 麗さん
EAGLYS株式会社
プロダクトVP

近年、ピープルマネジメントの難易度と重要性がますます高まっています。データに基づく人的資本マネジメントを実現するHRソリューション「EAGLYS Bianca」を開発提供するEAGLYS株式会社でプロダクトVPを務める阿須間 麗氏によると、その背景には「人材不足による獲得競争の激化」と「価値観や働き方の多様化」があるといいます。

日本企業全体が人手不足に悩まされていますが、今後も労働人口の減少に伴い、この問題は深刻化すると予測されます。そのため、自社に必要なスキルやマインドを持つ人材をひきつけ、活躍してもらうためのマネジメントの重要性が増しています。また、世代やバックグラウンドが異なるメンバーが増えたことにより、一人ひとり異なる価値観に応じた最適なマネジメントが求められるようになっています。さらに、リモートワークの普及や働く時間の柔軟化により、全員が同じ場所で同じ時間に働いていた時代よりも、マネジメントの難しさが増しています。

こうした背景から、ピープルマネジメントを担う管理職の負担が増大しています。管理職になりたがらない人が増えていることも、多くの企業にとって課題といえるでしょう。本来、ピープルマネジメントは生産性が高く、クリエイティブで魅力的な仕事であるはず。それにもかかわらず、避けられる空気が醸成されてしまっていることは大きな問題です。

管理職が特に負担として感じている業務の一つが、フィードバックです。ときには厳しい内容を伝えなければなりませんが、その心理的負担や労力は非常に大きく、経験を積んでも慣れないことが多いことが私たちのインタビュー調査でも分かっています。良かれと思って伝えたことがパワハラだと受け取られてしまうことを恐れて、率直なフィードバックがしづらい状況になっていることも管理職を悩ませています。率直なフィードバックができなければ、従業員のパフォーマンスの改善にはつながりません。また、成長意欲の高いメンバーがフィードバックを求めているのに受け取れない、という弊害も生じてしまいます。

こうした課題があるなかで、従業員一人ひとりのポテンシャルを引き出し、パフォーマンスを発揮してもらうためには、自分で客観的な事実に基づいて気づきを得ることが重要だと考えています。

マネジメントの難易度や負担が高まっている状況において、他者によるマネジメントだけでは限界があります。従業員が自律しセルフマネジメントできる状態をつくることが不可欠です。そのために重要なのがセルフ・アウェアネス(自己認識)。セルフ・アウェアネスと聞くと、自己分析や自分探しのような印象が強く、自分と向き合って内省を深めていくというイメージを持たれる方も多いでしょう。しかし、内省を深めるためには、まずは客観的な自己認識を持つことが必要なのです。自分が他人からどう見られているのか、あるいは自分の行動は客観的に見てどうであるのかを正しく認識して初めて、正しい自己理解につながるからです。

しかし、自分の力だけで客観的な自己認識を得ることは容易ではありません。360度評価やエンゲージメントサーベイといったツールはありますが、他者からの定性的なフィードバックは評価者の主観が入ってしまう側面が否めず、必ずしも客観的ではありません。そのため、事実に基づいて自分を理解できる仕組みが必要です。データの活用はその一例で、従業員がパソコンなどの業務デバイスを用いて行ったアクションが自然と残るログデータ、具体的にはチャットやメールの履歴、アプリケーションの利用履歴、さらにはWebカメラや音声のデータなどを、プライバシーは保護した形で適切に組み合わせ、自己認識を促す客観的な事実をアウトプットすることが技術的に可能になりつつあります。

これらのデータの取り扱いでは暗号技術を用いるなど、プライバシー保護や心理的な抵抗感の軽減のための配慮が不可欠です。こうした仕組みによって、従業員が自分では気づけない事実に基づいて新たな気づきを得て、自発的な改善や成長につなげられる環境を整えることができるでしょう。

経験の蓄積や環境の変化などにより、自分の考えや価値観やスキル、相対的な強みは変わっていきます。そのため自己理解は一度で完結せず、継続的なアップデートが必要です。企業には、従業員が定期的に自己理解を深めることを支援するツールや仕組み、きっかけを提供することが求められます。そのほかにも、異動の際にポストを複数提示して従業員自身が選択できる機会を設けるなど、気づきを基に本人が自律的なキャリア形成を図ることができる機会を作ることが重要です。

企画・編集:『日本の人事部』編集部

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