NQF(国家資格フレームワーク)
NQF(国家資格フレームワーク)とは?
「NQF」とは「National Qualifications Framework」の頭文字をとった略語で「国家資格フレームワーク」のこと。学位や資格を、国家による公式な認定制度の枠組み内でレベル分けするものです。学習の達成水準や技能の難易度を分類し可視化することによって、学位・資格の透明性を高め、比較を容易にします。それにより学位・資格の取得を促進したり、学術・職業の流動性を高めたりするなどの効果が期待されています。現在は英国をはじめ、欧州や東南アジア各国など、世界的にNQFの導入・導入検討がなされています。日本でも導入が検討されていますが、2024年5月時点では導入に至っていません。
NQFを導入するメリットと
日本での導入に立ちはだかる壁とは
世界的に導入が進められているNQF。例えば、欧州で定められている「EQF(European Qualifications Framework)」では、学位が8レベルに分類され、レベル8に「博士」、レベル7に「修士」などが設定されています。NQFが世界的に広まった理由には、グローバル化やIT化、働き方の多様化が進むなどの社会構造の変化があります。
NQFを導入することでどのようなメリットがあるのでしょうか。二つのケーススタディを紹介します。
(1)大工歴20年のAさん
Aさんは、日本国内で20年以上の経験を持つ大工。日本の伝統建築に精通しており、一級建築士の資格を取得しました。このスキルを生かして、海外でも活躍の場を広げたいと考えています。しかし、NQFがないために、Aさんのスキルが国際的にどの程度のレベルかを証明することが難しいという壁に直面。書類や推薦書を集めるのに時間と労力がかかり、海外での仕事の獲得がスムーズにいきませんでした。NQFで日本の資格難易度が国際的に証明されれば、海外でのキャリア研さんをしやすくなります。
(2)進路選択に悩むBさん
Bさんは、日本の高校に通う高校生。IT分野に関心があり、プログラミングの資格を取得したいと考えています。しかし、どの資格を目指すのが自分の理想とするキャリアに適しているか判断することが難しく、複数の資格取得の勉強をすることに。参考になる情報にアクセスできず、時間と労力を浪費することになってしまいました。資格の難易度やキャリアとの結びつきが明瞭になることで、適切な資格を選定しやすくなり、キャリアパスも明確になります。
日本でもNQFの導入が検討されています。例えば内閣府では、「実践キャリアアップ戦略」に基づく「キャリア段位制度」を進めており、現在、3分野で検討が進められています。文部科学省でも「キャリア形成のための新たな学習・評価システム」の構築が進められています。高度技能人材を輩出するために、キャリア形成を企業の人材育成だけに任せるのではなく、大学などの教育機関もキャリア形成を支援していく方針です。
しかし、日本での導入には壁があります。日本には既存の国家資格や民間資格が多く存在しており、独自の歴史や評価基準があります。それらをNQFの枠組みに統一するには労力がかかります。また、日本の公的な資格制度は、複数の省庁が管理。教育関連の資格は文部科学省、医療関連は厚生労働省と管理元が違うため、導入のハードルが高くなっています。
日本では、少子高齢化による労働力不足が深刻化。現在の社会基盤を維持するには、一人当たりの生産性を高めたり、海外から労働力を確保したりする必要があります。NQFに準ずる枠組みが導入されると、外国人労働者が日本で働くハードルが下がり、日本人労働者が海外で活躍しやすくなるなど、流動性・互換性が高まると考えられます。また、働きながら大学院に通う人や、休職してリスキリングにはげむ人が増えるなど、学習と職業生活の行き来が活発になり、高度なスキルを持った人材が生まれやすくなります。昨今の国際競争力や人材獲得競争の激化に鑑みても、日本でNQFを導入する必要性は高まっているのです。
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