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【ヨミ】コウカソクテイ

効果測定

効果測定とは?

ビジネスにおける効果測定とは、費用や人的工数を要した何かしらの施策や取り組みに対して、どのような成果があったのかを測定し明確にすることです。効果測定というと、運転免許取得の際に使われている印象がありますが、ビジネスシーンやWebマーケティングでも用いられるようになりました。さらに近年ではHRにおいても注目され始めています。
 
HRにおける効果測定は、採用の歩留まり率を計算する、研修の内容を実践できているか測定する、労働生産性を計算する、従業員エンゲージメントを測定するといった方法があります。測定を行うときには、定量データ・定性データの両面から判断し、経営判断の参考となるデータを出すことが大切です。

掲載日:2022/12/19

1. 効果測定とは

ビジネスでの効果測定は、資源や時間、費用などを施策やツールに投資した結果、どのような成果を上げているのかを測り、明確にすることを指します。営業・販売の業務では売上数値、Webマーケティングでは問い合わせ数やその後の商談数、成約数などで、成果を測ることができます。これらは、効果測定の方法がわかりやすい業務です。

HRにおける効果測定

近年では、社内外への人的資本の情報開示のガイドラインである「ISO30414」など、企業のデータ収集や分析が重要視される傾向にあります。HR施策を戦略的に行うための効果測定が重要度を増していると言えるでしょう。

HRにおける効果測定の課題として、方法のわかりにくさが挙げられます。例えばブランディング、人事制度改定などでは、何をもって改善したと見なすのか、数値をどのように設定するのか、データをどうやって収集するのかなど、方法が確率していない部分が多くなります。HRの施策では大きなコストが伴うことも多いため、事業および売上にどのように貢献しているのかを可視化することが大切です。

●HR領域において効果測定が重要な分野
  • 採用
  • 人材教育/研修
  • 生産性向上(労務・勤怠管理)
  • 人事制度や評価、福利厚生などによる従業員モチベーション

HRにおいてなぜ効果測定が重要なのか

●コストに見合った成果か確かめるため
採用活動や従業員研修、制度改変など、HRの施策を行う際には多大な費用や人材を投入しなければなりません。採用を例に挙げると、人材紹介企業への手数料や求人媒体掲載料、オフラインセミナーの会場費、ホームページの更新費用といった金銭的コストがかかります。面接の日程調整や求める人材像の共有といった、人的コストも重要です。経営観点で考えて、大きなコストをかけるだけの成果があるのかを検討しなければなりません。

施策をただ行うだけではなく、コストに見合った効果は出ているのか、削減できる部分はあるか、今後どのぐらい予算を確保しなければならないのかなどを、分析・判断することが必要です。成果に応じたコスト配分なのかを見極めることで、来期以降の予算を検討することができます。

●次の施策へとつなげるため
HR領域における施策の目的・狙いたい効果はさまざまです。成果を可視化して振り返ることで、目標達成に対して適切な施策だったのかを分析することができます。施策前後でどのような変化があったのかを明確にしなければ、PDCAサイクルを効果的に回すことができず、検討すべき課題や取り組むべき改善策が見えてきません。HRの施策においては、定量的データだけではなく、従業員の声など定性的視点から分析することも重要です。

PDCAサイクルを効果的に回す

PDCAサイクルとは、もともと管理業務の効率化を目指すために提唱されたフレームワークのことです。現在は、業務改善や目標達成のために活用されています。Plan(計画)→Do(実行)→Check(評価)→Action(改善)の4ステップを何度も繰り返すことで、目標達成に近づけていきます。

Actionで終わりではなく、再度PlanやDoに戻り、継続していくことで、施策実行から振り返りまでの速度を高められます。同時に、計画と実行にずれがないかを随時チェックすることで、よりレベルの高い取り組みが期待できるようになります。結果によっては施策を中止するという判断をすることも重要です。

PDCAサイクルを効果的に回していくポイントは、定期的に数値や指標に基づいた定点観測です。数値や指標を正しく読み解くことができないと、根拠が十分でない改善案が採用されてしまう可能性があります。効果をきちんと把握し仮説を立てることで、次の打ち手を検討していくことが重要です。

2. HRにおける効果測定方法

多くの企業では、教育研修制度の整備や人事システムの導入などの施策に取り組む一方で、どのような状態を成果とするかを定めていないまま進めてしまっていることも少なくありません。効果測定を行う際には、施策を実行している途中から測定を開始するのではなく、施策の実行前から測定の準備をすることが大切です。

効果測定を行う上でのポイント

経営視点も意識する

効果測定は、「施策自体/対象者の視点(短期的視点)」だけではなく「経営の視点(長期的)」も持って分析することが大切です。施策は課題を解決するために行われます。課題は解決したのか、解決していないのであれば何が原因なのかなど、現状を把握しなければなりません。同時に、施策が企業の経営にどのように貢献したのかを測らなくてはなりません。

次世代リーダーとなる人材の採用・育成、従業員の生産性向上、エンプロイーエクスペリエンス向上といったHR部門での投資はすべてにおいて、企業の売上・業績につながると言えます。効果測定の結果は経営陣にも共有し、従業員や組織の変化を随時把握することが大切です。

効果測定の目的・範囲・対象を明確にする

効果測定と言っても、ただ数値データを出すだけでは意味がありません。収集・分析するデータの種類が多くなると、より多くの工数がかかります。ポイントを絞らずにデータを収集すると、分析しきれない可能性があります。なぜこの効果測定を行うのか、効果測定を通じてどんな結果を知りたいのか、目的を明確にすることが大切です。目的をベースに「どの範囲で実施するのか、対象者は誰にするのか」を決定した上で進めると、過不足なくデータを収集することができます。

人事システムやツールの利用も検討する

特に大企業において、全従業員からデータを収集する場合、膨大な時間や分量となることが想定できます。近年はタレントマネジメントシステムや勤怠管理、採用管理、評価ツールなど、さまざまな人事・労務システムが用意されており、うまく活用することで工数を削減することができます。選定では、効果測定で知りたい内容をよく整理しておくことが大切です。

採用の効果測定方法

母集団確保や動機形成などが難しくなる中、採用活動にもマーケティングの考え方を取り入れる動きがあります。採用マーケティングとも言われ、企業が求める人材を理解した上で接点を広く持ち、選考活動を通じて自社への興味関心を醸成することを目指す動きです。マーケティング活動では、「認知→興味→検討→購入→ファン化」といったプロセスごとに応じた施策を実施することが一般的ですが、このフレームワークを採用活動に導入することが有効だと考えられています。

採用における効果測定は、それぞれの施策に対しての応募数(参加数)とその関連数値、各選考フェーズでの「採用歩留まり(※)率」を計算することが重要です。

※歩留まりとは、製造過程において、原料や素材を投入した量に対して、実際に得られた生産数(生産量)の割合のことを指します。採用の現場で使われる場合は、選考対象者数に対する、通過者数の割合のことを意味します。

各項目に対する効果測定

以下の選考フェーズごとに数値を算出し、通過率を算出します。

  • 自社採用コンテンツや各種媒体の閲覧数
  • 説明会エントリー数、参加数
  • 応募数/エージェント経由の推薦数
  • 書類選考数、通過人数
  • 各面接参加数、通過人数
  • 内定通知数
  • 内定承諾数

採用歩留まりの計算方法

それぞれ通過率(歩留まり率)の算出方法は以下の通りです。

・歩留まり率=選考通過数÷選考対象数×100
※内定率=内定者数÷受験者数×100
※内定辞退率=内定辞退者数÷内定者数×100

これらデータを計測すると、どの段階に課題があるのかを可視化することが可能になります。

●課題と解決策の例

例1
二次面接の辞退率が高い
⇒一次面接の様子をヒアリングして、必要であれば面接官にトレーニングを実施する

例2
説明会参加後の選考希望者が少ない
⇒説明会の内容を見直す

例3
応募者数が少ない
⇒既存の求人媒体以外からの集客を検討する

採用における効果測定のポイントは、応募者数、内定者数といった数値だけではなく、選考に要する日数や採用候補者の辞退理由など、期間や定性面も確認することです。選考スピードを上げるために採用管理システムを導入する、辞退理由で見えてきた不足情報をコンテンツに落とし込むなど、ボトルネックになる要素を多角的に検証することで、より具体的な改善策を打てます。

研修の効果測定方法

企業ではさまざまな研修を実施していますが、研修が成功しているのか、改善する必要があるのか、このまま同じ研修を続けていいのかがわからないという声が従業員から出ることもあります。研修は実施して終わりではなく、従業員が研修で学んだことを実務に生かし、業績に貢献することが大切です。

研修の効果測定の際に参考になる考え方に、「4段階評価法(4段階評価モデル)」があります。4段階評価法とは、1975年アメリカの経済学者であるカーク・パトリックが提唱した評価測定方法です。4フェーズで研修の成果を測定します。

●レベル1.反応(Reaction)
受講後すぐにアンケートやヒアリングを実施し、研修の満足度を測定します。率直な感想や反応を聞くことで研修テーマや内容、難易度、講師の評価を行うことが可能です。また、受講者が主体的に取り組んだか、業務との関連性を見出せたかなど、意志・意欲もチェックすることができます。
測定実施時期:研修直後〜翌日

●レベル2.学習(Learning)
実施した研修が理解できるかを測定するために、筆記テストやレポート、ロールプレイングを行います。受講者がどのぐらい研修を理解しているのか、求めている基準に到達しているのかを確認することができます。eラーニングのシステムとして搭載されていることもあります。
測定実施時期:研修から数日後

●レベル3.行動(Behavior)
研修で学んだことを職務や職場で実践できているかを測定します。本人だけではなく、部署の上司や同僚などにアンケートやヒアリングを行い、行動変容について分析するため、職場を巻き込んだ効果測定となります。
測定実施時期:1ヵ月〜6ヵ月後

●レベル4.結果(Results)
人事評価や実際の売上、顧客満足度、ROIなどから研修の成果が表れているのか、効果的だったのかを見ていきます。純粋に研修だけの評価とは言えない部分がありますが、あらかじめ出したい成果や行動について明確に目標を立てた上で、研修を企画・実施し、想定通りの結果となっているのかを検証することが大事です。
測定実施時期:一定期間後(1年〜)

労働生産性の測定方法

近年では働き方改革関連法の影響もあり、労働時間の管理・見直しも大きなテーマになっています。従業員の生産性を上げることにより、時間に余裕が生まれイノベーション創出に時間を費やすこともできるようになります。

ヨーロッパ生産性本部(EPA)によると、生産性とは「生産諸要素の有効利用の度合い」と定義されており、「産出(output)÷投入(input)」という式で算出できます。生産性にはさまざまな種類がありますが、従業員のパフォーマンスを可視化する場合は「労働生産性」を指標とするのが一般的です。労働生産性とは、労働者数、もしくは、総労働時間に対して生産される成果物の割合を示したものです。

労働生産性を算出する方法

労働生産性とは、労働者数や労働時間など費やした労働によってどのぐらい生産できたのかを数値で示したものです。

・労働生産性=成果(売上など)÷労働量(労働者数または総労働時間)

労働生産性は、さらに「物的労働生産性」と「付加価値労働生産性」の二種類に分けることができます。

<物的労働生産性>
物的労働生産性は、労働者数や労働時間などの費やした人的工数に対しての物的な生産量を算出したものです。物的な生産量とは、大きさや重さ、個数などの物量を単位とするものです。

・物的労働生産性=生産量÷労働量(労働者数または総労働時間)
<付加価値労働生産性>
付加価値労働生産性は、労働者数や労働時間などの費やした人的工数に対して付加価値の生産量を算出したものです。ここでいう付加価値とは、事業によって生み出した価値を数値で表したものであり、売上高から原価を差し引いた額とするのが一般的です。

・付加価値労働生産性=付加価値額(売上-原価[材料費、運送費など])÷労働量(労働者数または総労働時間)

いずれも算出数値が高い場合は、高い生産性で価値を生み出していると考えられます。生産量や売上の数値を上げることと、労働量を適切な量にすることの両方が重要です。

生産性を算出するには正しいデータが必要です。勤怠管理システムなどを導入すれば、正確なデータを容易に取得することができます。

従業員エンゲージメントの測定

HR領域では、従業員のエンゲージメント(帰属意識)を向上させることも重要なミッションの一つです。従業員エンゲージメントが高い企業では、従業員が主体的に仕事をするため、生産性の向上や離職率の低下が期待でき、企業全体として成長し続けることが可能になります。人事制度や職場環境を整備した際にも、従業員エンゲージメントを測定することで、その施策が有効であるかを検証できます。

従業員エンゲージメントの測定方法として、サーベイ(アンケート調査)が挙げられます。HR部門が行うサーベイはさまざまな種類があり、1年に1〜2回行われる大規模型の従業員エンゲージメントサーベイ、週次や月次で実施するパルスサーベイ、従業員の組織や同僚に対する満足度や問題意識を洗い出すモラールサーベイなどです。他にもストレスチェックや離職率の定点観測などで、間接的に把握することも可能です。

従業員エンゲージメントの指標

代表的なものとして「eNPS(Employee Net Promoter Score)」が挙げられます。従業員が自身の職場を家族や友人に勧めたいかを、点数で表す指標です。その他にも、「熱意」「活力」「没頭」というキーワードをもとに、従業員の仕事へのやりがいや意欲を測る「ワークエンゲージメント指標」、組織と従業員の関係(組織ドライバー)、職務の難易度(職務ドライバー)、個人資質による影響度(個人ドライバー)から測る「エンゲージメントドライバー指標」などがあります。

3. 効果測定を行うときの注意点

いくら効果測定を行っても、企業や従業員に活かせなければ意味がありません。成果を出すためには、効果測定だけで満足せず、継続的に改善〜評価を繰り返すことが大切です。

施策実行前後で比較し、ノウハウとして蓄積する

効果測定を実施するときは、施策の導入・実施前に現状の数値データを取得することが重要です。効果測定前後や一定期間などに比較検証できるよう、いつ最初の測定をするのか、どれくらいの頻度で測定するのかといったスケジュールを設定する必要があります。

また、効果測定データを蓄積すると、他施策の参考として活用することもできます。わかりやすくデータをまとめて、保存するとよいでしょう。

定性的データとの両面で判断する

数値データだけでは急激な変化が見えなかったり、要因が分からなかったりすることもあります。その際は、数値だけではなく、定性データも参考にすると状況が明確になり、改善策を考えやすくなります。例えば、従業員へのヒアリングや面談・アンケートなどを実施することで、数値からは見えないちょっとした変化や気づきが得られる可能性があります。

経営判断の参考となるように効果測定を行う

経営陣は、人事施策を行った結果どのくらいの売上が見込めるのか、もしくは、どれだけのコストが削減できるのかを判断しなければなりません。判断するための数値データが要求されることもあるでしょう。経営判断の参考になることを前提に、難解なデータを用いず、だれでもわかるような形で効果測定を実施することが大切です。数値からどのような変化を読み取れるのか、それによって何が変わったのかなどを明確にして、レポーティングするとよいでしょう。

企画・編集:『日本の人事部』編集部

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