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イノベーションを生み出すためには何が必要か

イノベーションとは「新たな仕組みや習慣を取り入れ、革新的な価値を創造すること」です。戦後、技術力を高め諸外国をけん引してきた日本企業ですが、近年は、イノベーションの創出において低迷しています。なぜ日本でイノベーションが生まれないのかを整理し、イノベーションを生み出すためのヒントを紹介します。

更新日:2023/02/02
グローバルの中の日本

日本国内におけるイノベーションの現状と課題

1)低迷する日本のイノベーション

オープン・イノベーションの普及活動を行うJOIC(オープンイノベーション・ベンチャー創造協議会)とNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)は、2020年5月にオープンイノベーション白書を発表しました。WIPO(世界知的所有権機関)の調査を用いて、日本のイノベーションの低迷について指摘しています。

同調査によると、イノベーション創出における国別ランキングでは、日本はトップ10以下です。また、時価総額ランキングは、1990年代は日本企業がトップ5を占めていましたが、2000年以降になると、GAFAなどの米国企業がトップ5を占めています。

2)短期的成果を求めがちで、長期的な取り組みが行われにくい

同調査によると、日本企業は、短期的(1~3年)な成果を目指す研究が増加傾向にあり、中長期的(3年以上)な成果を視野に入れた研究開発は、消極的な傾向にあります。また、「既存技術改良型」の研究が多くを占めている一方で、リスクを伴う投資や新製品の開発など、「破壊的イノベーション」への取り組みが弱い傾向にあります。

3)自前主義

国内でのイノベーション創出の課題に、根強い自前主義があります。経済産業省が2016年に発表した「イノベーション政策について」によると、企業の研究開発のうち、6割以上が自社単独での開発となっています。

日本ビジネスパーソン

4)人材の流動性や多様性

先述のオープンイノベーション白書では、国内の人材の流動性についても指摘しています。
日本企業の平均勤続年数は10年以上の割合が高く、諸外国と比較して人材の流動性が低い傾向にあります。また、外国人労働者の雇用の割合も欧米に比べ低いことから、組織の同質性が高く、新たな発想が生まれにくい環境だとしました。

イノベーションを創出するために企業に何が求められるのか

イノベーションを起こす組織とは

1)自前主義からの脱却

企業がイノベーションを生み出すには、あらゆる資源を自社で完結する「クローズド・イノベーション」の考え方から抜け出す必要があります。

自社の経営資源だけでイノベーションの創出を図っても、既存製品の延長(持続的イノベーション)でしかなく、新規市場へのアプローチはできないでしょう。また、研究開発から製品を市場に届けるまでに時間がかかるというデメリットも生じます。

さまざまな外部資本を巻き込みながら活用し、市場の変化にあわせてスピーディーにイノベーションを行う「オープン・イノベーション」の考え方は、極めて重要といえます。

2)社内外の人材活用

既存の組織で、すぐにオープン・イノベーションを実現することが困難な場合は、オープン・イノベーション的な発想に基づいた人材活用をするといいでしょう。

中途採用や人材派遣、アウトソーシングの導入や他部門との交流など、社内外の人材と交流することは、組織のイノベーション推進において有益です。オープン・イノベーション的発想に基づいて、部門や自社内に留まることなく、人を交流させる仕組みや組織の体制を整える必要があります

イノベーションのための組織づくりに、どう取り組むべきか?

※経歴・所属は取材・講演当時のものです

1)調査からみるイノベーションのための取り組み

人事白書2019のイノベーション創出の取り組みに関する調査によると、具体的な取り組み内容として「経営層によるコミットメント・メッセージの発信」「社外の勉強・交流会などへの参加促進」「部門を越えた交流の促進」が上位を占めました。この調査結果から、イノベーションを創出するためには、企業のトップが率先して組織の改革に取り組む必要があることがわかります。

2)経営トップのコミットメントと人材交流

これまで紹介した論文や調査から、イノベーションを創出するためには、組織文化を変えていく必要性が見えてきました。また、組織文化の改革を推進する部門は人事や現場だけでなく、経営者主導で推進することが重要です。

株式会社日本M&Aセンター常務執行役員の有賀誠氏は、大企業がイノベーションを起こすには「リーダーの意志が重要」であり、「社長がリーダーシップをとるべき」と語っています。

では、人事部の観点でイノベーションを起こす場合、何から始めればいいのでしょうか。

株式会社守屋実事務所の守屋実氏は、「今のメンバーではイノベーションを起こすのが難しい場合、『変わった人を仲間に入れる』のはどうでしょうか」と提案しています。

多様性のある人材と従来の従業員を積極的に交流させることで、新たな視点を得ることができれば、人事部門に限らず、従業員の成長へとつながるでしょう。

3)ダイバーシティの推進

イノベーティブな組織にするには、ダイバーシティ(多様性)の推進も必要不可欠です。
マーサージャパン株式会社の中村健一郎氏は「多様性は、組織学習を強化するための取り組みである」と語っています。同氏は、多様な人材が組織内に存在することで、組織の学習効率が高まり、結果としてイノベーションが起きやすい土壌ができると述べています。

4)機会の提供

イノベーションを生み出す人材を発掘し、育成するには機会提供が必要です。株式会社LIFULL執行役員羽田幸広氏は、「挑戦機会をつくる」ことが重要だと説きます。同社では従業員の内発的動機付けを重視し、新規事業提案制度などを整備。従業員が「挑戦しやすい環境」を整えています。

5)コンフリクト・マネジメント

多様性のある組織は、現場の意見の対立も避けられません。しかし、対立=コンフリクトを排除するのではなく、うまくマネジメントすることが重要です。武蔵野大学経営学部経営学科准教授の宍戸拓人氏は、「環境変化が激しい状況では、コンフリクトは不可避」と断言しています。対立から逃げるのではなく、議論を重ねて解決することで、イノベーションが促進され、企業の成長へとつながります

革新に向けてたゆまぬ行動を

社会に変革をもたらすレベルのイノベーションは非常に難しく、長期にわたる多大な投資が必要になります。それでもVUCAの時代に生きる企業は、今がどんなに好業績でもイノベーションに向けての施策を打ちます。革新を起こすためには、研究者の知見や調査による課題の分析、何より長期的な視野による施策の実践が欠かせません。

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企画・編集:『日本の人事部』編集部

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東京都 鉄鋼・金属製品・非鉄金属 2023/02/19

 

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