企業研修、採用、評価、人材開発、労務・福利厚生のナレッジコミュニティ

人事キーワード 掲載日:2020/08/26

【ヨミ】メンバーシップガタコヨウ メンバーシップ型雇用

メンバーシップ型雇用とは、先に人材を確保し、後から仕事を割り当てる雇用のあり方を指します。終身雇用を前提とする日本の企業の多くは、メンバーシップ型雇用といえます。年功序列や終身雇用に見られるメンバーシップ型雇用は、これまで多くの日本の企業が取り入れてきた雇用形態です。これと対比されるのが、職務に応じて雇用するジョブ型雇用です。

1. メンバーシップ型雇用とは

労働政策研究・研修機構労働政策研究所長の濱口桂一郎氏は、メンバーシップ型雇用を以下のように示しています。

「職務、労働時間、勤務地が原則無限定。新卒一括採用で『入社』、社内に配転可能である限り解雇は正当とされにくい。一方、残業拒否、配転拒否は解雇の正当な理由。実定法規定にかかわらず、労使慣行として発達したのものが判例法理として確立」

引用元:濱口桂一郎(2013)|産業競争力会議雇用・人材分科会ヒアリング用資料 「今後の労働法制のあり方」

メンバーシップ型雇用では新卒一括採用などに見られるように、主に人物を重視して雇用し、入社後に転勤や部署異動を繰り返しながらキャリアアップしていきます。入社時に職務内容や労働時間、勤務地を限定しない一方で、職務能力を理由とした解雇は難しいという特徴があります。メンバーシップ型雇用のもとでは、人事部の打診や辞令により従業員を異動させることが可能とされます。

メンバーシップという言葉に表れているように、職務ではなく組織への帰属を求めるため、採用時には組織内での立ち居振る舞いやコミュニケーション力などが重視される傾向にあります。

メンバーシップ型雇用は「人に仕事を」、ジョブ型雇用は「仕事に人を」付ける

では、メンバーシップ型雇用とジョブ型雇用は何が異なるのでしょうか。関西外国語大学の吉川雅也氏は、以下のように述べています。

「メンバーシップ型社会とジョブ型社会とは何か。端的に言えばメンバーシップ型社会とは組織には人があり、その人に対して仕事を付けるという考え方で、日本の労働システムのベーシックな形である。対してジョブ型社会とは組織には仕事があり、その仕事に対して人を付けるという考え方である」

引用元:吉川雅也(2019)「メンバーシップ型社会におけるキャリア権」

メンバーシップ型雇用では、人材の採用が先にあって、仕事を後から割り当てるというステップを踏みます。典型例は新卒総合職で、まず採用となってから部署に配置されます。

一方のジョブ型雇用は、組織に必要な職務をこなせる能力のある人材を採用するという考え方です。厳密には異なりますが、中途採用で欠員を補充したり、新規プロジェクトを立ち上げたりする場合を考えるとイメージしやすいでしょう。

日本ではメンバーシップ型雇用が主流ですが、2020年に入り、株式会社日立製作所や富士通株式会社などがジョブ型雇用への移行を進めています。一方、アメリカなど海外ではジョブ型雇用が主流となっています。

2. メンバーシップ型雇用の課題

メンバーシップ型雇用には安定雇用につながるという良い点もありますが、一方で課題もあります。ここでは、二つの課題を取り上げます。

従業員のキャリアを人事部(企業)が担う

メンバーシップ型雇用の課題として挙げられるのが、従業員のキャリア形成に関する面です。メンバーシップ型雇用では、採用後に育成していくことを前提に、長期的なキャリア形成を見通した採用を行います。そのため、人事部が主体となって社員の配属や異動を決めるジョブローテーションの育成計画が立てられるケースが多くなります。

社員にとってはキャリア形成のステップになる半面、自身が望む・望まないにかかわらず、人事部の辞令に従わなければならない状況が起こり得ます。社員の能力と業務が必ずしも一致しない配属になる可能性がある、また、社員が希望するキャリアを自身で選択できない、といった課題もあります。

長期的に見ると若手人材を確保しにくくなる

メンバーシップ型雇用の前提には、組織に帰属する限り安定して雇用されるという考え方があります。言い換えれば、人材の流動性が低くなるということです。組織の高齢化が進めば生産性や人件費といった課題が浮上し、若手社員の採用や給与アップの妨げとなることもあるでしょう。

優秀な若手社員ほど自身のキャリアを生かせる環境、かつ適正な評価をもらえる職場を求める傾向が強くなります。若手ならではの発想を生かせない欠点は見過ごせません。

3. 従業員を社内で育てるメンバーシップ型雇用は日本経済を支えてきた

メンバーシップ型雇用は、日本独自の雇用制度です。高度経済成長期に日本が競争力を高めていけたのは、安定雇用によって労働力を確保できたからだといえます。

しかし、少子高齢化が進み、生産性向上や競争力の維持が喫緊の課題となっている現在、メンバーシップ型雇用のあり方は、大きな局面を迎えています。テクノロジーの進化が目覚ましい昨今では、多様な働き方が可能となっています。時代の変化に合わせた雇用スタイルを再検討する時期に来ているといえるのではないでしょうか。

記事のオススメ、コメント投稿は会員登録が必要です

あわせて読みたい

ジョブ型雇用
ジョブ型雇用とは、職務に応じて適切な人材を雇用するという考え方のことです。欧米ではすでにスタンダードな方法として定着していますが、日本では一部の大企業での導入にとどまっているのが現状です。日本では新卒一括採用に代表されるように、採用後に職務を割り当てる人事制度が主流となっています。
エンプロイメンタビリティ
「エンプロイメンタビリティ」(employmentability)とは、「企業の雇用能力」を意味する用語です。雇用される側からみて魅力的な企業か、継続的に雇用されたいかといった価値に関する概念で、雇用主としての能力や優秀な人材をひきつける吸引力を表します。単に高報酬を保障できればいいということでは...
障害者雇用促進法
「障害者雇用促進法」とは、正式名称を「障害者の雇用の促進等に関する法律」と言い、障がい者の雇用義務に基づく雇用の促進などのための措置、職業リハビリテーションの措置などを通じて、障がい者の職業の安定を図ることを目的とする法律です。同法では、一定規模以上の企業に対し、法定雇用率とよばれる一定比率以上の割...

関連する記事

外国人を雇用している企業は過半数、「さらに増やす」「今後雇用する」企業も半数近くに
人事担当者に外国人の雇用状況について聞いたところ、現在雇用している企業は過半数で、「さらに増やす」「今後雇用する」企業も半数近くであることがわかった。
2019/08/20掲載人事白書 調査レポート
中途採用の「意義」
多様化する採用市場における中途採用の最新事情とそのメリットとは?
2016/07/15掲載よくわかる講座
「障がい者雇用」をめぐる最新動向と採用&労務管理上のポイント
本記事では、社会保険労務士の松山 純子氏が、「障がい者雇用」をめぐる現在の状況や採用方法、法定雇用率引上げに対する企業の対応などについて、詳しく解説します。
2013/05/20掲載人事・労務関連コラム

関連するQ&A

障害者の雇用
障害者を雇用する際の留意点を教えて下さい。 また、助成金などについても併せて教えて下さい。 当社は、小売業です。 現在、雇用率0.6%です。
定年再雇用の勤務時間について
対象者から週5日9:00~16:00の時間帯での勤務希望が出て来たのですが、週5日9:00~17:30の時間帯であれば再雇用は出来るが、そうでなければ再雇用出来ないと言う事は可能ですか?宜しくお願い致します。
外国人労働者の雇用について
外国人の方を雇い入れる際の注意事項を教えてください。 また、正社員雇用に限らずアルバイトの雇用の際も同様となるのでしょうか?
新たに相談する
相談する(無料)

「人事のQ&A」で相談するには、『日本の人事部』会員への登録が必要です。

新規登録する(無料) 『日本の人事部』会員の方はこちら
業務に関するちょっとした疑問から重要な人事戦略まで、
お気軽にご相談ください。
各分野のプロフェッショナルが親切・丁寧にお答えします。

関連するキーワード

分類:[ 雇用 ]

注目のキーワード解説をメールマガジンでお届け。

「よくわかる人事労務の法改正」ガイドブック無料ダウンロード

50音・英数字で用語を探す

注目コンテンツ

【人事の日制定記念企画】
オピニオンリーダーからのメッセージ

HR領域のオピニオンリーダーの皆さまから全国の人事部門に向けてメッセージを頂戴しました。


人事メディア情報

人事メディア情報

人事・労務関連の代表的なメディアをご紹介いたします。


企業のAI活用に不可欠なリテラシーと人材育成の方法とは?

企業のAI活用に不可欠なリテラシーと人材育成の方法とは?

さまざまな事業領域でAI(人工知能)が活用されています。そのため、ます...