企業研修、採用、評価、人材開発、労務・福利厚生のナレッジコミュニティ

【ヨミ】シャナイシツギョウ 社内失業

「社内失業」とは、労働者が正社員として企業に在籍していながら仕事を失っている状態を指す言葉です。減産などで一時的に余剰人員が生じるケースと異なり、昨今は、企業が新しく採用した若手人材を適切に教育できず、会社に貢献できるだけの知識も技能もないまま、職場で放置しているという実態が指摘されています。「社内ニート」ともいわれ、特に2008年秋のリーマン・ショック以降深刻化した労働問題の一つです。
(2013/2/25掲載)

社内失業のケーススタディ

キャリアデザイン描けず「窓際族」より深刻
要因は教育訓練のための人材・ノウハウ不足

内閣府は2011年12月に発表した報告書「日本経済2011~2012」で、国内総生産(GDP)などから企業の生産能力に見合う適正な雇用者数を推計し、実際と差し引きして求めた「雇用保蔵者数」の推移を示しています。この雇用保蔵者数が、おおむね企業内で余剰人員になっている“社内失業者”の数に相当します。報告書によると、社内失業者数は2011年7~9月期で465万人。全雇用者の8.5%にあたり、前年同期より50万人増えました。社内失業者数はリーマン・ショック直後の09年1~3月期の698万人をピークに減少していましたが、ここへきて再び増加に転じたのです。

正社員でありながら仕事がないという意味では、オイルショック後に登場したいわゆる「窓際族」も社内失業の一形態といえます。しかし、従来の窓際族は定年間近の中高年層が多く、出世競争に敗れて閑職に回されても年功序列で地位と賃金が保証されていたため、どこか気楽なイメージで語られてきました。これに対し、現代の社内失業者の多くは20~30歳代前半の若手社員だといわれます。貴重な人材がキャリアの入口で十分な教育を受けられないまま、余剰人員のレッテルを貼られて埋もれている――。それが社内失業の実態であり、窓際族よりも深刻だと指摘されるゆえんです。

社内失業に陥ると、専門知識やスキルが蓄積されないため、昇進やキャリアアップなど社内での将来展望は当然描きにくくなります。同僚と接触する機会も限られ、社内人脈をつくることもままなりません。かといって転職しようにも、中途採用で問われるのは前職での実績ですから、業務経験そのものが乏しい社内失業者には転職もまた非常に難しい。辞めるに辞められず、転籍や異動もかなわない中、仕事を与えられないことで働く意欲さえ失い、精神的に追い詰められていく人も少なくありません。

上述したように、若手社員が社内失業に陥る大きな原因は企業による教育・能力開発の不備だと指摘されています。実際、独立行政法人労働政策研究・研修機構が製造業の約3,200社を対象に行った2011年発表の調査では、若手の育成が「うまくいっていない」と答えた企業(「まったくうまくいっていない」「あまりうまくいっていない」の合計)は全体の3割強に上り、そのほとんどが従業員300人以下の中小企業です。うまくいっていない理由を聞くと、「育成を担う中堅層の従業員が不足しているから」(58.9%)「効果的に教育訓練を行うためのノウハウが不足しているから」(44.6%)が上位を占めています。

バブル崩壊以降の長引く景気低迷で、多くの中小企業が新しく人を採り、育てることを後回しにしたため、構造的な中堅社員不足と社内教育の劣化が生じました。そのツケがいま、就職氷河期を勝ち抜いて正社員の座をつかんだ若者たちに「社内失業」という形で回ってきているのかもしれません。

記事のオススメ、コメント投稿は会員登録が必要です

あわせて読みたい

エンプロイメンタビリティ
「エンプロイメンタビリティ」(employmentability)とは、「企業の雇用能力」を意味する用語です。雇用される側からみて魅力的な企業か、継続的に雇用されたいかといった価値に関する概念で、雇用主としての能力や優秀な人材をひきつける吸引力を表します。単に高報酬を保障できればいいということでは...
ユースエール
若者雇用促進法に基づき、若者の採用・育成に積極的で若者の雇用管理状況などが優良な中小企業を、厚生労働大臣が「ユースエール認定企業」として認定する制度が2015年10月から新しくスタートしました。「ユースエール」とは、この認定企業が取得・使用できる認定マークの愛称。若者(youth)にエールを送る事業...
リクルーター
リクルーター(recruiter) とは、リクルート(一般に、企業などが人員の募集[求人]をすること)を行う人という意味。主に企業の若手を中心とした採用担当者を指します。

関連する記事

2. グローバル人材研修の現状
産業能率大学が実施した「グローバル人材の育成と活用に関する実態調査」を見ると、グローバル展開に伴って、多くの企業が日本人の「グローバルリーダー」「グローバルマネジャー」「ローカルマネジャー」が不足していると回答。グローバル人材を取り巻く状況について整理する。
2012/10/24掲載よくわかる講座
若手採用のパラドックス
せっかく採用した新入社員がすぐに辞めてしまう、という悩みを抱える企業は少なくない。そのため“すぐにやめない人材”であることも選考のポイントとなる。人材紹介会社で扱う「第二新卒」に対しても、その点を重視する企業は多いのだが――。
2017/04/03掲載人材採用“ウラ”“オモテ”
従業員を育成できていると「あまり感じない」企業が過半数
『日本の人事部 人事白書2020』から、「育成」の調査結果の一部をご紹介します。
2020/10/27掲載人事白書 調査レポート

関連するQ&A

08年賃上げ
お疲れ様です。 08年度の全国平均昇給額と昇給率のデーターをお持ちでしたら、教えて頂きたくお願い申し上げます。 大企業・中企業・小企業別にあれば、なお幸でございます。
新たに相談する
相談する(無料)

「人事のQ&A」で相談するには、『日本の人事部』会員への登録が必要です。

新規登録する(無料) 『日本の人事部』会員の方はこちら
業務に関するちょっとした疑問から重要な人事戦略まで、
お気軽にご相談ください。
各分野のプロフェッショナルが親切・丁寧にお答えします。

関連するキーワード

分類:[ 人材開発 ]
分類:[ キャリア開発 ]

注目のキーワード解説をメールマガジンでお届け。

「よくわかる人事労務の法改正」ガイドブック無料ダウンロード

50音・英数字で用語を探す

注目コンテンツ

【人事の日制定記念企画】
オピニオンリーダーからのメッセージ

HR領域のオピニオンリーダーの皆さまから全国の人事部門に向けてメッセージを頂戴しました。


人事メディア情報

人事メディア情報

人事・労務関連の代表的なメディアをご紹介いたします。