アンダーマイニング効果
アンダーマイニング効果とは?
「アンダーマイニング効果」とは、それまで内発的動機で行っていた行為に対して、報酬などの外発的動機付けが行われることにより、逆にモチベーションが低減してしまう現象のことをいいます。「undermine」とは英語で「下を掘る」という意味のほかに、「損なう」「傷つける」という意味があります。例えば、趣味として行っていたランニングに対して、金銭的な報酬を与えられることで、モチベーションが外発的なものへと変わってしまい、結果的にやる気がなくなってしまうことなどがこれにあたります。
行為そのものが「目的」か
それとも報酬を得るための「手段」か
子どもが自発的に良い行いをしたとき、ご褒美にお小遣いをあげることは望ましくないといわれています。例えば、子どもが掃除機に興味を持ったとします。自動的にゴミが吸い込まれていく様子が楽しくて掃除機をかけていたら、親が「えらいね」とお小遣いをくれました。子どもは喜んでお小遣いを受け取りますが、それが続くと、次第にお小遣いなしでは掃除機をかけなくなっていきます。はじめは楽しんでいたはずが、お小遣いをもらうようになったことで、「ただ働きをしたくない」という意識が生まれてしまったのです。
こうした現象こそ、アンダーマイニング効果によって起こるもの。「好き」や「楽しい」といった気持ちがモチベーションになる「内発的動機」から、評価や利益など外部からもたらされる「外発的動機」へと意欲の源泉が変化したのです。
企業内での評価や報酬においても、同様のことが起こりえます。従業員の行動や成果に対して会社から褒賞を与える場合には、その従業員の内発的動機を損ねないよう、注意することが必要です。一般的に外発的動機と比べると、内発的動機の方が持続的で効率よく結果を得ることができるとされています。しかし、内発的動機はちょっとしたことで外発的動機に変化してしまいます。
とはいえ、成果を出した従業員に報酬を与えなければ、会社全体の従業員満足度や士気の低下につながりかねません。内発的動機づけを損なわず、適切に報酬を与えるには、どうすればいいのでしょうか。
ポイントとなるのは、従業員に「自分で決めている」「選択して行動している」という感覚を持たせること。アンダーマイニング効果は「期待させられた報酬」によって起こる、という研究結果があります。ニンジンをぶら下げた状態で、報酬を目的に行動させられてしまったとき、アンダーマイニング効果が発生するのです。
つまり「報酬のためにがんばれ」というのではなく、まずは従業員が内発的動機づけに基づいて成果を上げられる環境を整える。物質的な報酬ではなく、褒めたり期待を伝えたりすることで、言語的な報酬を与えることも有効です。上司と部下がしっかりと信頼関係を築けていれば、部下にはやらされ感がなくなり、内発的動機付けも高まるでしょう。その上で、仕事を評価していることを伝える一手段として物質的な報酬を与えれば、アンダーマイニング効果は起こりづらくなります。
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