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<株式会社リクルートキャリア主催>ヤフー導入成果発表会 ITエンジニアの「最適育成」と「最適配置」
~スキル可視化が生み出した新しい可能性 ~

近年はITエンジニアのスキルの細分化、高度化が進み、人事が知りたい「実務力」の把握が困難になっています。この状況に対し、株式会社リクルートキャリアではエンジニアの実務力を可視化できる「CODE.SCORE」を開発。2015年9月15日に「ヤフー導入成果発表会 ITエンジニアの『最適育成』と『最適配置』~スキル可視化が生み出した新しい可能性 ~」と題したセミナーを開催し、ヤフー株式会社の事例を通じて、その成果を発表しました。エンジニアの育成や配置において、どのような成果があったのか――当日の模様を、レポート形式でご紹介します。

「CODE.SCORE」とは?
「CODE.SCORE」はリクルートキャリアが開発したITエンジニアの実務力可視化サービスです。ITエンジニア向けのさまざまな試験(10試験61分野263カテゴリ2015年9月時点)を用意しており、これらの試験の受検結果と人事データ(人事評価、年次、職位、年収など)と組み合わせることで、最適な人材育成や人材配置を実現します。
プロフィール
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小林 睦氏 ヤフー株式会社 技術戦略本部長
2000年7月、データベース技術者としてヤフー株式会社入社。リスティングサービス開発、検索サービス開発、地域サービス開発、ビジネスサービス開発、メディアサービス開発を経て、2015年4月より現職。
サカタカツミ氏 photo
サカタカツミ氏 「CODE.SCORE」クリエイティブディレクター
就職や転職、キャリア開発などのサービスのプロデュースやディレクションを数多く手がける。リクルートワークス研究所『「2025年の働く」予測』プロジェクトメンバー。著書に『就職のオキテ』『会社のオキテ』(以上、翔泳社)。連載『なぜ、エンジニアの採用は難しいのか?』をはじめ、寄稿記事や登壇も多数。

ヤフーが「CODE.SCORE」の試験的導入にトライした理由とは?

小林:ヤフーでは社員のキャリアデザインを支援するツールとして、新体制発足後に「人財開発カルテ」を作成しています。エンジニア自身が仕事を振り返り、棚卸しを行い、自分の得意な業務を申告するというもので、上長はそれを見て、最適なジョブアサインのための一助とします。しかし、こういった資料にありがちなことですが、エンジニア本人と上司の「物差し」がバラバラなため、書かれていることは本当に信頼できるのか、という不安がありました。実際に現場では、「人および組織単位でのスキル把握」「人および組織での育成支援」「人それぞれのキャリアの形成と最適なジョブアサイン」「公明正大な評価への支援」という、四つの課題を抱えていました。

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今回、スキルの可視化や最適配置を志向した理由は二つあります。一つ目は会社が新体制となり、経営目標の一つとして「社員一人ひとりの成長サポート」を大きく打ち出したため、人財開発カルテや自己評価といった「スキルの可視化」が急務になったこと。二つ目は、エンジニアを支援するライン長という立場から、判断する際の拠り所となる「決まった物差し」がどうしても必要だったことです。

これまでヤフーではエンジニアのスキルやタイプを把握するために、さまざまな試験や診断方法を使ってきました。知識を見る資格試験や、タイプがわかる性格診断テストなどもありましたが、唯一できていなかったことが、テクニカルなハードスキルの可視化でした。実務レベルを測るソリューションの中に、「これだ」と思えるものがなかったのです。

そんなときに知ったのが、ITエンジニアの「実務スキル」を可視化する「CODE.SCORE」でした。私たちが本当に知りたかった仕事における知恵や、それを実務で使っていく力を測ることが可能ということで、大変関心を持ちました。実務スキルがわかればもっと有効に人財を活用できるのではないか、という期待があったからです。その人が持つポテンシャルとしての向き不向きや得手不得手が、一つの物差しでわかる。そして、実務スキルを実際の仕事で発揮する「実践力」をしっかり把握できる。この両輪が揃えば、成長・育成の支援や適切なジョブアサインに、最大限に近づけると考えました。

試験的に導入してみて、「一つの物差しで測れる」という事実はこんなにも大きい存在だったのかと驚いています。信頼のおける物差しがあるという安心感。この事実の素晴らしさを感じているところです。

組織分析から見えた「実務力の把握」の隠れた効能

サカタ:今回の実験では、試験によるスキルの把握だけでなく、四つの分析手法も同時に行いました。一つは「主成分分析」で、その組織ではどのようなスキル成分が必要なのかを把握するためのものです。私たちがまとめたレポートによってそれが可視化されましたが、実際にお読みになって、どのように思われましたか。

小林:インパクトのあるレポートで、「今回の試みはいけるな」と感じました。なぜかというと、主成分分析がほぼ組織編制と等しいものになっていたからです。また、エンジニアを集めるときのキーワード、あるいはキーファクターも主成分に近いものになっていました。これには驚きましたね。

サカタ:ヤフーでは、これまでもキーワードやキーファクターで似通った人を集めて機能させるという手法を取られていたのですね。

小林:そのように進めていくことで、実際うまくいっていました。いわゆるフロントエンド系やプラットフォーム系、あとはセキュリティーに強い人などをそれぞれチーム化し、各チームに即した実務をやってもらってきました。「CODE.SCORE」での「主成分」は、私たちが求める組織の固まりというか、スキル群みたいなものとマッチしていましたから、「主成分」という考え方はとても参考になる、と感じました。

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サカタ:二つ目に行われた分析は「認知のゆがみ」でした。もともとヤフーでは、スキルタグを、自分の得意なこと、わかっていること、興味があることという三つの区分で自己申告させ、それをデータベース化していたとのことでした。ただ、あくまでも自己申告なので、それが正しいデータなのか、配置などにも利用できるのかを確認するために、自己認知のゆがみを測定する簡単なアンケートを使って分析を行ったのです。その結果、全体的にはゆがみが少なかったものの、成績の高い人は正しい自己認知ができていて、成績の低い人は、ややゆがみが多いという傾向がでました。また、得意と言っていた分野で点数が低くなってしまったり、その逆の現象も見られたりしました。この結果については、どのように思われましたか。

小林:ヤフーでは「人財開発企業になる」という精神に則って、さまざまなツールを用いて人財の情報を集め、個々とコミュニケーションを取り、一人ひとりの成長やキャリア形成を支援しています。その中で自己申告のスキルタグは、何か聞きたいことがあるときに社内で検索したり、上司が参考情報として、本人の好きや得意を把握するためのものとして使っていました。ただ自己認知の精査はこれまで全く行ってこなかったので、それが見えるようになったことは素晴らしい成果だと思います。実感したのは、ゆがみが大きい人の場合はスキルうんぬんよりも、その人自身の特性や考え方といったものが垣間見られるということ。一人ひとりとコミュニケーションをとったり、フィードバックを行ったりする際に、この結果をうまく活用できるのではないかと感じました。また、一人ひとりの特性やチームの人間関係も把握できるので、組織全体をオーガナイズしていくときに参考になると思いました。

サカタ:三つ目に行われた分析は「評価ネットワーク」で、自分と同じレベルのスキルを持ったメンバーを一人選んでもらうというものです。本人とその人が選んだメンバーの点数の差を見れば、自分を過小評価しているのか、過大評価しているのかがわかります。ここではスコアの高い人たちが、一部のスコアの低い人を評価している構図が見られました。特に年齢の近い人同士は、互いに技術力が同じくらいあると思い込んでいることがわかりました。

小林:部署が違うと、実際に横で仕事ぶりを見ていないことも多いので、そのような結果になったのかもしれません。ただ、私はこの結果を見て、当社で行っている「バリュー」という360度評価において、このような関係性が点数を付けるときのバイアスになっている可能性があると感じました。

サカタ:私たちも開発過程で、「他者への評価は本当に正しく行われているのか」という疑いを持って、議論を重ねていました。私たちのサービスでは、仮説として、スキルをある程度正確に可視化できたら、他のデータとかけ合わせることで、配置や育成が「どうしてうまくいっているのか」、逆に「なぜ機能しないのか」が明らかになるのではと考えていたのです。今回のケースだと「同期なら、技術力が同じくらいだろう」といった思い込みを持ってしまうことで、評価も引っ張られることもある、そんな可能性が見えました。「認知のゆがみが360度評価に影響を及ぼすのでは」という仮説が正しいかもしれない、ということがヤフーの試行から垣間見えたように思います。これは、今後評価していく上での参考になるはずです。

「実務力の可視化サービス」に期待されるものとは

小林:今回の結果を見て思ったのは、個々のスキル把握だけでなく、組織全体の健康診断のための資料としても非常に有効だということです。人と人との関係性や、人が互いをどう思っているのかということが、分析の中から垣間見えました。特に、組織の中で「特性をもった人の固まりがはっきりしている場合」や、「その固まりが異質とわかっている場合」に使いやすい。全く組織の概要がわからない状態でも、一度この診断を行えば、多くのことがわかるのではないでしょうか。組織の実力を推し測るために使ってもいいし、ある程度は組織の実力が分かっていて、その状態を確かめるために活用するのもいいと思います。組織をより深く理解するとか、認識のズレの分析に使うとか、組織の健康状態を見る上で有効ですね。また、最適配置や育成計画を考える上でも、この結果は大きな示唆になると思います。企業によっては診断結果から、「もっと違う使い方ができるかもしれない」などと、イメージが膨らむこともあるでしょう。結果を受けてから、社内でディスカッションを行うことも効果的だと思います。私も「なぜこのような結果が出たのか」を話し合うことで、新たにわかったことが多くありました。

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サカタ:そのほかに、診断結果から得られた気付きなどは、ありますか。

小林:実際に試験と分析を行ってみると、「このデータは誰のものか」がはっきりとわかります。示唆に富んでいると思ったのは、データによって個々の性格や状態、思いなどが手に取るようにわかることです。例えば、とても物静かで目立たない人は、それが影響して、周囲へのアピール度が低くなってしまっている。逆に目立っている人は、本来持っている力以上によく見えてしまっている。実務力を把握することで、その人本来の実力に合った活躍の場を、企業側がどんどん提供していければいいと思います。

サカタ:今回のトライアルで「言われてみれば確かにそうだ」という、わかってはいたけれども言語化できていなかったことが、改めて見えてきたように思います。誰もがわかる、はっきりと見えるような問題ではなく、組織の中で普段は見えづらい、けれどもあとで問題を引き起こす可能性が高い「ゆがみ」を見えるようにすることに実は価値があると。このようなサービスが、今後多くの企業で使われるようになると、どのような改革が進むと思われますか。

小林:人財育成においてはより詳細なフィードバックが可能になり、また配置においても適切な再配置が可能になると思います。評価を行う立場にある人が、現場にはゆがみがどの程度あるのかをしっかり把握し、いろいろな施策を考えていくことができます。仕事は人と人との組み合わせで行うものですから、その組み合わせを考えるときに今回の結果からヒントを得て、ベストなマッチングができればいいですね。

サカタ:興味深かったのは、今回のトライアルの結果を見て、小林さんに「主要成分が違う人たちを、組み合わせるといいですよ」と提案したら、「今回提案いただいたのは、実際にペアで活躍しているケースです」というお話でした。補完関係というのでしょうか、それぞれの長所を組み合わせていくことで、より高度な仕事ができるというわけですね。

小林:これは業界全体に言える話かもしれませんが、最近は職場において、若手とベテランの連携がスムーズにいっていないことが多いんですね。ベテランが仕事をしづらくなっている場面が増えています。しかし、ベテランにはすごくレベルが高い人も多いので、戦力として貴重です。「CODE.SCORE」でベテランと若手のベストなマッチングをさらに実現できるのなら、もっとパフォーマンスを上げられる組織が作れるのではないかと思います。

サカタ:今回、試験的に導入いただいたことによる一番大きな発見は、組織を作る際に、現場責任者やマネジメントする立場にいる人が、現場で何が起きているかを理解できていないと、実に怖いことが起こるだろうということでした。実験結果の報告会で、私が気付いたことを小林さんにお聞きすると、「なんとなく気付いていました」「わかっていました」と言われることがよくありました。わかっている人がマネジメントを行う分には問題は起きにくい。けれども、すべての人がわかっているとも考えにくい。そこで仕組みとして、現状の組織の状態を、少しでも正確に把握できる仕組みは重要である、と改めて強く感じられたことは成果だったと思っています。

小林:人というのは面白くて、「あなたはなぜできないのか」という話よりも「会社はあなたに何を求めているのか」という話をしたほうが、パフォーマンスに表れやすい。また、「自分は何ができないのか」という事実を会社に理解してもらっているほうが、本人は安心して仕事ができる。互いに正しく理解しあえている状況こそが健全なのです。今回のような調査結果もただ分析して終わるのではなく、正しく理解し、どう使っていくのかをきちんと考えなければいけませんね。

サカタ:組織が個人を理解し、個人が組織の中での役割を把握する。求めていること、求められていること、そのそれぞれが、属人的ではなく、誰もがわかりやすく見えるように可視化し、育成や配属に最適な形で利用できるようする。今回、ご一緒させていただいたトライアルからの発見は、まだ可能性の一つではありますが、さらに使いやすいサービスの開発へとつなげていけるよう、引き続き取り組んでいきたいと思っています。本日はどうもありがとうございました。

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※本記事は、2015年9月15日に開催されたセミナーと、別途、小林氏とサカタ氏に行ったインタビューを基に構成しています。

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