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優秀な人材の流出を未然に防ぐ ~リテンション・マネジメントの最新技術とは~

「日本は雇用の流動性が低い」とよく言われます。「流動性が低いことは問題だから解雇規制の緩和を……」という議論にもつながっていくわけですが、本当にそうなのでしょうか。たしかに、企業の都合で人を動かすことは難しいものの、働き手自身が望んで職場を移ることには規制がありません。これからの人口減少社会において労働力不足が進行すれば、今後はむしろ、労働者主導による雇用の流動化が進む可能性さえあります。そうした時代に向けて、企業がとるべき人事施策のキーワードは「リテンション」。優秀な人材の離職や流出をどうやって防ぐのか。つなぎ止めるためには何が必要なのか。この問題について、異色の組み合わせのお二人に語りあっていただきました。雇用問題に詳しい日本大学総合科学研究所准教授の安藤至大さんと、メール監査の技術で人材流失を防ぐ新しいサービスを開発した株式会社UBIC情報解析課課長の大西謙二さんです。労働経済学の専門家とビッグデータ解析のプロによるユニークな視点が交わり、リテンション・マネジメントの本質と未来が解き明かされます。

プロフィール
安藤至大さん プロフィールPhoto
日本大学 総合科学研究所 准教授 安藤至大さん
あんどう・むねとも/1976年東京生まれ。1998年法政大学経済学部卒業。2004年東京大学博士(経済学)。政策研究大学院大学助教授などを経て、現在は日本大学総合科学研究所准教授。専門は、契約理論、労働経済学、法と経済学。規制改革会議(2007~2010年)の専門委員、雇用仲介事業等の在り方に関する検討会(2015年~)の委員などを務める。新聞・雑誌への寄稿(日本経済新聞「経済教室」欄など)のほか、著書には『ミクロ経済学の第一歩』(有斐閣・2013年)『働き方の教科書』(ちくま新書・2015年)がある。また、NHK(Eテレ)の経済学番組「オイコノミア」やBSジャパン「日経みんなの経済教室」の講師として活躍するなど、雇用問題に関する分かりやすい解説には定評がある。
大西謙二さん プロフィールPhoto
株式会社UBIC クライアントテクノロジー部 高度情報解析課 課長 大西謙二さん
おおにし・けんじ/外資系コンサルティング会社、知財コンサルティング会社を経てUBICに入社。その幅広い経験と専門知識を活かし、現在は企業や弁護士事務所へディスカバリ・フォレンジックツールを用いたソリューション提案を行う。さらに人工知能を活用した米国などの訴訟時に必要な電子情報開示に関する支援(eディスカバリ)業務、及び内部不正による情報漏えい対策などを目的としたメール監査システムの導入を支援。不正調査から訴訟支援まで幅広く情報リスクに対する企業防衛のための戦略支援サービスを提供している。

「日本は雇用流動性が低い」は誤解、景気が上向くと人は動く

大西:安藤先生は、今後、日本企業において最も重要な人事課題の一つとなるのは「リテンション」――つまり従業員の離職防止であるとおっしゃっていますね。

安藤:リテンションは、何もいまに始まった話ではありません。歴史的な経緯があるわけです。たとえば高度経済成長期にも、働き手の奪い合いがありました。大変な人手不足で、仕事に就きたい人は、探せば簡単に職が見つかる時代でしたから。企業からしてみれば、せっかくの「金の卵」、つまり中卒や高卒のまっさらな状態で採用し、教育してきた従業員を同業他社に引き抜かれたりしてはたまりません。そこで人材の引き留め策として出てきたのが、途中で会社を辞めると経済的に損をする仕組み――年功賃金制度や退職金制度でした。すでにこの時代から、リテンション・マネジメントは行われていたのです。もっとも、バブル崩壊以降、最近までは「失われた20年」と言われ、失業率はそれなりの水準で高止まりしていました。何よりも技術革新のスピードが高度経済成長期の頃とは比べものにならないくらい早まり、昔ほど技能の熟練が重要視されなくなったので、賃金の高いベテランは活躍の場が減り、引き留めるどころか、むしろリストラの対象と見なされたわけです。それでは、これからいったいどうなるのか。

大西:人がどんどん減り、いわゆる人口減少社会に突入すると言われています。

安藤:ええ。それも、すべての世代で均等に人が減っていくのではなく、高齢者は大勢残る一方、働き手となる15~64歳の生産年齢人口が今後10年で1000万人、次の10年でまた1000万人と、減っていくわけです。そうなると当然、限られた数の働き手の奪い合いがまた発生し、企業では労働者の離職防止が大きな問題になります。しかし年功賃金など、これまで機能していたリテンションのツールは、今後は使いづらくなるでしょう。定年のさらなる引き上げが見込まれるなか、年功型の賃金カーブはどんどんフラットに近づいていきます。労働者にとっては、「途中で辞めると損をする」という引き留めのインセンティブが利かなくなるわけです。

大西:これまでにないツールで、貴重な人材をどうやって引き留めるかが重要な人事課題になってきますね。安藤先生は、そもそも人が会社を辞めたり、他社へ移ったりするという行動の要因をどのように捉えていらっしゃいますか。

インタビューの様子

安藤:一つは現状に不満があるから、もう一つは次に移る職場が今よりも魅力的だから、大きく分けるとその二つでしょうね。もちろん実際の行動は、多くの場合、両方が絡み合って起こります。デフレによる長期不況のもとでは、一部の飲食業が低価格により好業績を実現していましたが、それは低賃金と過酷労働に支えられたものでした。その証拠に景気が少し良くなると、不満を抱えていた労働者が離れ、人手が足りなくなって経営に苦しんでいます。こういうことは景気の波によって、過去にも繰り返し起こっているのですね。景気が悪いときは、第一志望じゃない会社や業界で妥協して働く人がほとんどでしょう。これが、景気が上向くとAランクの会社にBランクの会社から人が移り、空いたBランクの会社のポストにCランクの会社からまた人が移ってくる。人材の“玉突き現象”が起こるわけです。よく「日本は解雇規制が厳しいから、雇用の流動性が低い」と言われますが、それは少々ずさんな議論で、これまでも景気が良くなれば労働者はどんどん移っていましたし、今後はもっと移っていくことになるでしょう。それも、残ってもらいたいコア人材ばかりが辞めていくという事態になりかねません。だからこそ、リテンションの重要性が高まっているのです。

大西:たしかに景気が上向くと、キャリアアップの意欲もチャンスも膨らんできますね。私自身も転職を5回経験していますので、実感としてよくわかります。特に私がいたコンサルティング業界では、人が辞めるパターンが三つありまして、そのうち二つは、先生が指摘された現状への不満とより魅力的な職場。いずれも“次”を目指すケースですね。あと一つ、疲れて辞めてしまうというパターンもけっこうありました。非常に仕事熱心で、会社からも優秀と評価されている人が多いのですが、まじめに仕事に取り組んできた結果、疲弊しきってしまうのでしょう。そういう人は何とかケアしたかったなと、個人的にもすごく悔やまれます。

安藤:なるほど。その辺りはきちんと切り分けて考えなければいけませんね。働き手自身が望んで“次”へ進む労働移動を支援したり、前向きなキャリアアップを促したり、そういう意味での雇用の流動化ならあっていいし、社会全体としてはむしろ望ましいことだと私は考えています。特に今後は働き手の絶対数が減ることを考えれば、一人ひとりがより活躍できる仕事や、より生産性が上がる職場にシフトしていったほうがいいわけですから。また、先述したように、技術革新のスピードが非常に早くなっているので、いままでやってきた仕事がなくなり、別の仕事や新しい仕事に移らなければいけないという事態も起こり始めています。これに対して個々の企業の視点からは、人が移ることはマイナス面も大きいでしょう。しかし社会が大きく変化するなかで、優秀な人材を安い賃金で何とかつなぎ留めたいと考えるのは、デフレ時代に凝り固まった企業のエゴと言わざるをえません。動くべき人は、動いていいと思います。ただし、実際は優秀でその会社に向いているのに、不平不満があったり、過重負担で疲弊したりして辞めざるをえなくなるのは、会社にとっても、働き手にとっても非常にもったいない。リテンションすべきケースと、そうでないケースを分けて対応すべきでしょう。

大西:同感です。私たちもまさにそうした観点から、弊社独自の最先端技術とノウハウをもって、企業様の新しいリテンション・マネジメントの構築に貢献していきたいと考えています。

人材流出はいかにして起こるのか――ささいな兆候を発見する技術

大西:UBICのメイン事業は、人工知能を駆使したビッグデータ解析です。たとえば国際訴訟に不可欠な業務であるドキュメントレビュー(証拠閲覧)を支援したり、人工知能を搭載したメールの自動監査システム「Lit i View EMAIL AUDITOR(リットアイビュー・イーメールオーディター、以下EMAIL AUDITOR)」を提供しています。そしてこの度、それらの技術を応用し、社員のメールや報告書、お客様からのお問い合わせへの対応などのさまざまなコミュニケーションを分析することで新たなビジネス機会の創出やリスク回避を可能にする「Lit i View AI助太刀侍(リットアイビュー・エーアイスケダチザムライ、以下AI助太刀侍)」を新たにリリースしました。HR向けには人材流出やハラスメントを未然に防ぎ、メンタルチェックまで行えるリテンションツールとして利用することができます。

安藤:人工知能を用いたメール監査技術の応用として、リテンションに注目したのはなぜですか。

インタビューの様子

大西:直接のきっかけはあるお客様からの問い合わせです。弊社には、カルテルや情報漏えいの調査など、約1400件におよぶ有事対応の実績があります。そこで培った経験をもとに、不正を実行する人間が、どの過程で、どんなコミュニケーションを行うかを、やりとりしたメールなどの実データから詳細に研究し分析したところ、実際に何らかの不正が実行されるまでには、「醸成」「準備」「実行」という三つのフェーズがあることがわかりました。いきなり思い立ち、すぐに実行するわけではない。誰にでも必ず「醸成」の段階があるんです。それはどういうことかというと、たいていは会社への不平不満。具体的には、待遇や職場の人間関係に対する不満ですね。個人的な問題を抱えているケースも少なくありません。借金や家庭内のもめ事、異性をめぐるトラブルなど……実はそうした不安や不満、悩みが起因となって、不正の動機が醸成されるわけです。そして、いったん不正実行を企図した人はあらゆる機会をうかがい、どのような手段を使ってでも、これを実行してしまいます。だからこそ、不正を考える起因となる不安や不平不満などのささいな兆候をいち早く見つけ、醸成のフェーズで手を打たなければなりません。われわれは、この醸成の兆候を効率よく発見するためのメール監査システムとして、「EMAIL AUDITOR」を開発しました。そしてこれがテレビで紹介されたとき、ある企業から不正調査のためではなく、人事面のケアとして社員の不平不満や悩みを把握できないか、というご相談をいただいたのです。はたしてその会社は離職率が高く、人材の流出が大きな損失となっていました。それが、リテンションへの用途拡大に目を向けたきっかけです。

安藤:かつては“飲みニケーション”なんていう言葉がありましたね。高度経済成長期の頃なら、会社への不平不満などささいな離職の兆候も、そうしたウェットな人間関係の中で、上司や先輩がさりげなく聞き出したり、ケアしたりしていました。長期雇用を前提とする日本的雇用においては、飲みニケーションも一つの引き留め策として、それなりに機能していたのです。昔はこのような仕掛けがもっとたくさんありました。たとえば、なぜ企業に社宅があったり運動会があったりしたのかというと、単なる福利厚生ではありません。気づいていなかったかもしれないけれど、無意識に会社を辞めにくくする、巧妙な仕組みでもあったのです。経済学で「マルチマーケットコンタクト」と呼ばれる手法ですね。会社という一つの場面で接触するだけなら、その関係や取引を途中でやめるのは難しくないのですが、社宅に入ったりすると、職場だけでなくプライベートでも、上司や同僚としょっちゅう接することになります。奥さん同士も知り合いなら、子ども同士も知り合い。そうなると、会社を辞めるのはなかなか難しいでしょう。さまざまな関係を切り捨てないといけませんからね。ところが最近は社宅も、社員旅行も、運動会もあまり見られなくなりました。パワハラなどを恐れるせいか、上司と部下が接触する場面はどんどん限られてきています。それにより不平不満など離職の兆候が見逃がされやすくなっているのは間違いありません。

大西:仕事の仕方もずいぶん変わりました。いまは職場でのやりとりも、直接的なコミュニケ―ションよりメールが中心ですから、「元気がないな」とか、そういうお互いの様子や雰囲気にはどうしても疎くなりがちですよね。在宅勤務やフレックスタイムなど勤務体系も多様化して、昔に比べると、社員同士の接点がだいぶ減ってしまったような気がします。

安藤:だからこそ、このような新しいリテンションのツールが必要になるわけですが、企業がこの「AI助太刀侍」を導入した場合、社員にはそれを知らせるのですか。

大西:社員に公表する、公表しないはお客様の方針次第で、本当にまちまちです。ただ企業活動におけるコミュニケーション・ツールとして電子メールの重要性が高まるにつれ、コンプライアンス監査の観点から社員のメールを監査する企業はとても増えています。

安藤:おそらく、社員がメールのやりとりを会社に見られていると分かっていて、意識的に文面に気をつかったりしてもなお、そこには離職の起因になり得る不平不満やトラブルのタネみたいなものが、図らずもにじみ出てしまうのだと思います。そのささいな兆候を人工知能で拾い上げるのが、先ほどおっしゃった、「醸成」のフェーズでいち早く手を打つということなのですね。

プロの暗黙知を学習した人工知能が従来比4000倍の効率を実現

大西:これまで不正防止などの有効な手段として使われてきた一般的なメールフィルタリングは、関連するキーワードをあらかじめ設定し、該当するメールを検索・抽出して止めるというものです。人事の話でいうと、「疲れた」「やっていられない」など。そういう言葉をキーワード検索して、絞り込むわけですが、そもそもキーワードが適切に設定できていないと漏れてしまいますし、また、キーワードを必要以上に設定した結果、抽出され過ぎて、監査に大量の人手と時間を要してしまうなど、対策としては必ずしも十分ではありません。現に、既存のフィルタリングのみで不正対応を行っていたある大手企業では、一日1000人規模で10万通のメールが送受信されていながら、絞り込みが甘く、ほぼ監査できていない状況でした。弊社の「AI助太刀侍」は従来のキーワード検索と違い、実際に離職した人がやりとりしたメールなどの実データをナレッジ(知識、知見)として蓄積しているので、文章全体のニュアンスから解析してメールの絞り込みを行います。また、われわれは暗黙知と呼んでいますが、監査のエキスパートが直観的に「こういう言葉づかいは危ない」とかぎ分ける独特の監査手法ですね。弊社のサービスでは、そういうプロの暗黙知を人工知能に学習させていますから、従来のキーワード検索では探せなかったメールまで、すばやく適切に見つけ出すことができます。その処理能力は従来の約4000倍。他の監査ツールには実現できない、UBICだけの独自技術です。

インタビューの様子

安藤:経済学では「事前、事後」という言い方をすることがあります。情報漏えいやカルテルなどの不正調査は、事件が起こってからの対応、つまり「事後」なので、ある程度調査対象も絞られていて、目星はつけやすいでしょう。ところが、リテンションは、まだ起こってもいない人材流出を未然に防ぐという「事前」の話ですからね。見つけ出すのは大変だと思います。

大西:扱うデータが膨大になるので、そこがまさに人工知能の使いどころです。

安藤:エキスパートの暗黙知を人工知能に学習させて、検索の精度を高めるというのはおもしろい発想ですね。暗黙知とは、言葉にできない知恵やセンスのことを言います。できる人はみんなわかっているけれど、それを言語化したり、理論化したりして、できない人に教えるのが難しい。いわゆる奥義とかコツみたいなものです。よく例に上がるのが、プロ野球の長嶋茂雄さんの教え方でしょう。「来た球をじっと見て、ガッとやって、カーンだ!」とか(笑)。擬音だらけで、言語化されていないから、どんなに熱心に教えられても、若手にはさっぱりわからない。そういう達人の領域を人工知能に学習させるというのは、本当に興味深い試みだと思います。また、暗黙知というのは、実は今回のテーマであるリテンションとも大いに関係していて、これが人材の移動に伴って失われてしまうことも、企業にとって重大な損失といわざるをえません。暗黙知は、個人が自分独りで獲得できる知識やスキルではなく、企業と労働者が長い時間をかけて、一緒に築き上げていくものですからね。

大西:おっしゃる通りです。特に優秀な人材が組織を離れる場合、単に人手が減るだけでなく、それにともなって、さまざまなものが失われていきます。暗黙知を含めた技術やノウハウ。場合によっては、大切な顧客を持っていかれることもあるでしょう。職場の士気やモチベーションが低下することも少なくありません。

“犯人捜し”のツールではない。大切なのは社員を「見守る」視点

安藤:さて、企業がこのシステムで社員の離職リスクを適切に把握し、それを経営にどう活かすかですが、リテンション・マネジメントの観点からいうと、できることは三つあります。一つ目は、賃金などの処遇や労働条件、職場環境、これを良好な状態に改善することです。その改善が十分かどうか、社員の満足度をチェックできるという意味でも、このサービスは効果的だと思いますね。二つ目は、成長機会の保障です。現在は給料も労働条件もいまひとつだけれど、経験が積めて成長が望める、長い目で見れば報われる。会社にそういう仕組みがあれば、社員もずっと働き続けたいと思うのではないでしょうか。そして三つ目は法律的な話ですが、競業避止義務規定というものがあります。要するに、自社の従業員が競合する他社に移ることを、法律や裁判例で許容されている範囲においてですが、契約で制限できるわけですね。ただ、対象者や対象となる期間、地域などを限定する必要があり、転職先が海外だと法律も違うので、この方法はあまり使い勝手がいいとは言えません。やはり契約などで縛るより、それなりの処遇と成長の機会を用意するほうが効果的でしょうね。社員とより良い関係を作りたければ、“ムチよりアメ”だと思います。

インタビューの様子

大西:もし弊社のサービスをお試しいただけるとしたら、経営者の方、人事担当者の方にはぜひこの「AI助太刀侍」を通して、社員の皆さんを家族のように見守ってほしいと思います。このシステムは、決して“犯人捜し”のためのツールではありません。むしろ社員を守るために使っていただきたいのです。カルテル監査などに弊社のメール監査システムを使って醸成段階をチェックするのも、犯人捜しではないんですよ。過去の有事対応の経験から申し上げると、不正を実行する人には、愛社精神が強く、会社や組織のためにとことんまで頑張ろうとするタイプが多いんです。けっして私利私欲のためじゃない。特に、日本企業ではそうですね。そういう人に対し、「これ以上進んだら、コンプライアンス規定に違反してしまいますよ」という意味で、まだ不正を実行しないうちに兆候を見つけてケアしてあげる。離職につながるような不平不満のケアも同じではないでしょうか。このシステムをお使いいただくにあたっては、人を「守る」という視点を忘れないでほしいですね。

安藤:経営者になる人や上司になる人はみんな、相対的に強い人です。能力も高い。だから、出世できたわけです。しかし、自分を基準にして物事を考えすぎるので、強い自分にできたことを普通の人にも平気で求めてしまう。「なぜこんなことができないんだ!」と。そして、パワハラにおよび、部下の離職を招いてしまうわけです。昔はそれで良くても、現在の基準では完全にアウトですからね。このシステムを使えば、メールのやり取りや日報などから部下のメンタルヘルスの変化を察知し、そうしたハラスメントの被害も未然に防ぐことができるでしょう。「守る」という意味で言えば、それは被害者の側の部下を守るだけでなく、上司に事件を起こさせない、つまり上司を守ることにもつながるわけです。

大西:私も、自分の部下にはつい多くを求めがちになります。一人の上司として、真摯に反省しなければいけません。

安藤:雇用や働き方に関する議論で難しいのは、まっとうな会社や経営者がダメな社員を攻撃し、まっとうな労働者が困った会社を批判する、そういうすれ違いの状況ができてしまっていて、なかなか分かり合えないことです。分かり合えないから、いつの間にかまじめで優秀な人の中に、不正や離職の動機が醸成されてしまうのかもしれません。こうした新しいツールを活用することで、分かり合えない溝を少しでも埋め、より良い関係を構築していければいいですね。

安藤至大さん 大西謙二さん Photo
■提供企業
株式会社UBIC
株式会社UBIC ロゴ

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