計画停電と労基法第26条(休業手当)について
~人事担当者が労務管理上、留意すべき点とは?~
特定社会保険労務士 森 紀男
社会保険労務士 岡安 邦彦
3. 計画停電により部分的に休業するケース
計画停電の状況によって、部分休業の場合も大きく2つに分けることができます。
1. 計画停電による休電により操業できない時間について休業する場合
計画停電以外の時間は操業するものの、計画停電が朝、もしくは夕方に偏っていた場合などにより、始業を遅らせるもしくは終業を早める(図表2 例1)などの措置によって、停電時間=部分休業時間とする場合です。
この場合については、計画停電が直接的に操業に影響しており、前掲基監発0315第1号における、1の「電力が供給されないことを理由とする休業」に該当し、26条の問題は発生しないと考えられます。
2. 計画停電の時間帯を含む一部の時間を休業する場合
次に、計画停電によって直接的に操業ができなくなるわけではない時間についても、経営的合理性からの判断により、直接的に操業できない時間も含め、操業し ないとした場合です。例えば、昼から夕方にかけて計画停電の対象となっているため、その前後の時間も含め、午前のみの操業とし、午後は休業とする(いわゆ る「半ドン」)とすることもあります。
(1)計画停電以外の時間帯の休業手当の必要性の判断
この場合について、まずは計画停電以外の時間帯(図表3 例2における予備的休業時間)について、休業手当が必要であるか判断する必要があります。
前掲基監発0315第1号では、2で「計画停電が実施される日において、計画停電の時間帯以外の時間帯を含めて休業とする場合であって、他の手段の可能性、使用者としての休業回避のための具体的努力等を総合的に勘案し、計画停電の時間帯のみを休業とすることが企業の経営上著しく不適当と認められるとき」と判断したときは、「法第26条の使用者の責に帰すべき事由による休業には該当しない」ため、休業手当は必要ありません。
この判断は、地域、業種、停電の実施状況、休業の必要性等によって、会社ごとに個別に判断を行います。この場合、計画停電による操業不可の時間はもちろんのこと、全体を含め、26条に定める休業手当の支払義務を免れることができると考えられます。
(2)計画停電以外の時間帯の休業手当の計算
一方で、「計画停電の時間帯のみを休業とすることが企業の経営上著しく不適当と認められないとき」、すなわち、計画停電の時間帯のみの休業で十分であると判断されたときは、計画停電の時間帯以外の部分については、休業手当が必要となります。その場合の休業手当の計算はどのようになるのでしょうか。
まずは、計画停電の時間帯については、前掲基監発0315第1号1により、休業手当の対象とはなりません。それ以外の時間帯の休業手当の対象となった部分については休業手当が必要となり、原則「平均賃金の60%以上」の支払義務が発生すると考えられます。
原則的な平均賃金の計算は、「事由の発生した日以前3ヵ月間に、その労働者に支払われた賃金の総額を、その期間の総日数(暦日数)で除した金額」となります。
ここでのポイントとしては、平均賃金は、(ア)当該休業した日の賃金とは関連性がないこと、(イ)時間という概念がなく「日数」で割るということの2点が挙げられます。
そのため、当該休業した日において、「計画停電による休業時間」と、「使用者の責に帰すべき事由による休 業」が混在する場合であっても、平均賃金は時間による影響を受けることはありません。したがって、「使用者の責に帰すべき事由による休業」を行った日につ いては、計画停電の時間のあるなしにかかわらず、「平均賃金の60%以上」の支払がある必要があります。
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