女性の意識を変え、生産性向上・コスト削減を実現する「子連れ出勤」
授乳服のモーハウスに聞く、子どもをだっこして働くことのメリットとは?
有限会社モーハウス代表取締役
光畑由佳さん
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「半育休」によるさまざまなメリット
授乳服があれば、育休中も出社できそうですね。
実際に弊社でも、半育休のようにして、育休中も出社している社員がいます。企業のメリットを考えれば、育児休業給付金がもらえる範囲で子連れで出社することで休みの穴を埋められるし、ときどき出社する方が社会とつながれて気分転換にもなり、仕事をある程度継続して行っていれば、復職へのハードルは下がり、引き継ぎの心配もありません。何より、育休中も戦力となってくれるメリットはかなり大きいですね。
法律では、1ヵ月あたり80時間以内、10日以内の出社であれば、育休の給付金は受けられますので、本人と相談しながら仕事の範囲を決めています。
半育休は素晴らしい方法だと思いますが、広まらない理由はなんでしょうか。
事業規模やチームの人数にもよると思いますが、給料計算やシフトを組むのが面倒だからではないでしょうか。弊社では、半育休の人がシフトに入っていません。必要に応じてその都度、仕事をしてもらっています。定期的に来られそうになった時に、シフトに組み入れるようにしています。
子連れ出勤を始めた当初は、周囲にも本人にも戸惑いがあり、慣れるまで時間がかかるかもしれません。しかし、良い環境作りには時間がかかるものです。しっかりと指針を定め、トラブルが起こることを大前提に、問題が起きればその都度、解決していくことが大事です。
あるシンポジウムで、「シフトの大変さと採用の大変さと比べたら、シフトを組む方が楽だ」という発言がありました。子連れ出勤のメリットもまさにそうで、教育のコストや採用のコストを考えなくて済みますし、経験を積んだ社員は代替できません。子連れ出勤が選択肢にあることにより、人事にとってはリスクやコストが管理しやすくなります。
人事にとっても、育児中の働き方に関して複数の選択肢を提示できるのは、メリットと言えますね。
働き方の選択肢の他に、人事ができる制度として「服一枚でできる働き方改革」というものもあります。産休に入る社員に授乳服を1枚プレゼントする、という人事の方向けに進めているプロジェクトです。実際に授乳しない方でも着られるし、男性社員に渡して奥さんに使ってもらってもいい。子どもが小さいうちはなかなか外出できない、というイメージを抱きがちですが、授乳中の赤ちゃんと外に出るための服があれば、家に閉じこもらずに育児ができるので、気分も開放的になると思います。
育休・産休に関する制度が整ってくると、女性に限らず、権利主張ばかりして会社への貢献意識が低い「ぶら下がり社員」がでてくる心配もあると思いますが、どうお考えですか。
ぶら下がり社員の問題を解決する上でも、子連れ出勤は良い方法だと思います。社員にとって、活躍できる選択肢が増えるわけですから。授乳服の本質にあるのは、女性が外に出られるようになり、自分らしく子育てをすること。子育てを楽しむことなんですね。開放感は、大きなきっかけになります。自分の力を試し、自立できるようになれば、会社にぶらさがるようなことには、決してなりません。
光畑さんが「授乳服で文化を変えたい」とお考えになった背景には、女性に幸福な生き方を追求してほしい、というお気持ちがあるのですね。働き方を考えることは生き方を考えることですから、本当の意味での働き方改革だと思います。「服一枚でできる働き方改革」の素晴らしさを感じました。本日はありがとうございました。
取材:小酒部さやか(株式会社natural rights 代表取締役)
2014年7月自身の経験からマタハラ問題に取り組むためNPO法人マタハラNetを設立し、マタハラ防止の義務化を牽引。2015年3月女性の地位向上への貢献をたたえるアメリカ国務省「国際勇気ある女性賞」を日本人で初受賞し、ミシェル・オバマ大統領夫人と対談。2015年6月「ACCJウィメン・イン・ビジネス・サミット」にて安倍首相・ケネディ大使とともに登壇。2016年1月筑摩書房より『マタハラ問題』、11月花伝社より『ずっと働ける会社~マタハラなんて起きない先進企業はここがちがう!~』を出版。現在、株式会社natural rights代表取締役。仕事と生活の両立がnatural rights(自然な権利)となるよう講演・企業研修などの活動を行っており、Yahooニュースにも情報を配信している。
ライター:水野宏信- 1
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