多様性が成果を最大化する〜互いの成長を促進する相互支援

大手技術系企業様でスタートした1年間のプロジェクト「次世代リーダー育成研修」が
スタートして3ヶ月が経とうとしています。

多忙な業務の中、育成対象者のみなさんの多くは
前向きに学び、実践課題に取り組んでおられて
とても頼もしく感じている今日この頃。

今回のメルマガでは、その実践課題を通して
よりリーダーとして成長していただくための
仕掛け「相互支援」の重要性について
改めて気づいたことについてお伝えしたいと思います。

 

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■互いの成長を促進する「相互支援」
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今回ご紹介するA社(IT企業・約5,000名規模)では、
全6回のオンライン研修に加えて、それぞれの研修間で
継続的な現場実践を行う内容となっています。

通常業務と並行して常に現場実践があるので
育成対象者の中には負担が大きいと感じる方も
最初は出てきますが、

複数の案件や課題を抱えながらチームを率いて
その都度判断を下していく、という管理職としての
キャパシティ増強のためには欠かせない取り組みとなっています。

とはいえ、1人で現場課題をしていると
ちょっとした迷いや不安に陥ることも少なくありませんので、
実践スピードを落とさない仕組みとして
当社が設定しているのが「グループ内の相互支援」
という仕組みです。

A社のプロジェクトにおいても、
個々人の現場実践結果をグループ内で報告しあい、
互いにアドバイスしたり、がんばりを認め合うなど
積極的に関わることを推奨しています。

今回、育成対象者がそれぞれ提出した課題を
添削しながら改めて気づいたことが、
良い形で相互支援ができているグループは、
全体的にアウトプットの質が高まっているというのが
一目瞭然である、ということでした。

相互コメントする際のコツもオンライン研修で
お伝えしているのですが、その意図を自分なりに
受け止め、実践しているメンバーが1人でもいると、
グループ全体がそれに引っ張られて
お互いの成果・成長を引き出し合っているという
印象を受けたのです。

 

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■多様性が成果を最大化する
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一方で、約50名の育成対象者の中で
全体のお手本となるようなアウトプットを出した
Bさんというメンバーがいたのですが、
Bさんが属するグループのその他のメンバーが
出したアウトプットは、本来の力を発揮できていない
ということが見て取れました。

よく見ると、相互支援のコメントの質が
その他のグループに比べてうまくいっていない
ということに気づいたのです。

たとえ、1人が素晴らしい能力を持っていたり
群を抜いて成果を上げていたとしても、
グループ全体としてアウトプットの質は、
相互支援できているグループと比べると
結果として低く見えてしまうのだと、
改めて相互支援の重要性を強く実感した次第です。

これは、リーダーが仕事をする上で
とても大切な考え方につながっていくと
私は考えています。

こんな言葉を思い浮かべた方もいらっしゃるかもしれません。

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早く行きたいなら、一人で行きなさい。
遠くへ行きたいのなら、皆で一緒に行きなさい。

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たった1人の成果よりも、
チーム全体の多様性を活かし合った結果の
質や量は、想定を超えたものになるのではないでしょうか。

Bさんのグループでは、Bさん以外のメンバーが
実際に自分がどのあたりで理解につまずいているのか、
どうすれば上手くいくのか、ということに
気付くタイミングを失っている状態で、それはつまり
本来の強みや能力を発揮する機会を逃してしまうという
非常にもったいないことになりかねません。

さらに、Bさんにとっても、自分1人では辿り着けなかった
成果を手にするチャンスも失ってしまうということに
他ならないと思いました。

私は即、Bさんのグループでキーパーソンとなりそうな
メンバーを数名ピックアップして、互いにコメントする際、
表面的なコメントにならないための、多様な視点を入れる
コツについて改めて丁寧にお伝えしました。

ここからは、いかに自律的に実践するかどうかです。

 

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■受け取る力と自律性
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組織やチームで多様性を引き出し合うためには、
さまざまな考え方に触れることが大切だと考えます。

A社のプロジェクトにおいて、アウトプットの質が
高かったグループでは、相互コメントの欄が
真っ黒になるほどびっしりと感想やアドバイスが
書かれていました。

メンバーごとのコメント欄の冒頭には必ず
「ここがすごく良いと思った」など、
相手の取り組みを承認するメッセージが
寄せられています。

さらに、
「私の経験ではこんなことがありました」
「先輩がこんな対応をして上手くいっていましたよ」

など、経験談や事例を使ったアイディア提供や、

「私も同じところで悩んでいます。ぜひ連携して取り組みませんか」
といった提案をしている様子も伺えました。

こういった関わり方のコツやポイントは、
私から事前にお伝えしていた内容でもあったので、
それを正面からしっかりと受け取って、
実際に行動に移してくれたことに私はとても感動しました。

アウトプットの質を高め、成果につなげていくためには、
何より「自律性」が重要であることは言うまでもありません。

学んだことを自分事として受け入れて
行動として実践しようという捉え方も含めて
私は「自律性」だと考えています。

学びを受け取り、全力でやってみよう、
というあり方が、必ず成果につながっていくと
私は確信しています。

 

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■「多様性・自律性」をもたらすために
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人材育成の現場では、自律性がなかなか引き出せない、
という課題にぶつかることも少なくないかもしれません。

知識やモノを与えられることに慣れてしまうと、
「教えてもらっていないので、できません」
「言われていないから、やりません」

など、自律性とはかけ離れてしまった状態で
仕事に向き合っていることに気づかないメンバーの
対応に悩んでいる経営者や管理職、人材育成担当者の方も
いらっしゃるかと思います。

相手を変えることはできませんが、
自分自身の関わり方を変えていくことは可能である以上、
相手の気づきを促し、マインドを醸成するような
関わりを続けていく必要が、特に育成に関わる
リーダー層や人事担当者にはあるのではないかと思います。

だからこそ、相手の心の変化をもたらすような施策を考え、
「多様性・自律性」をもたらすための刺激を与えるような、
視野を広げる取り組みについて考えていただく機会を
リーダー層や人事担当者の方には、
ぜひ設けていただきたいと心から願っています。

本人が気づきを得て、そこから自律的な行動として
いかに繋げられるかというストーリーを描くことが、
組織・チームとして飛躍的に成長を遂げるきっかけの
1つになると私は思っています。

このコラムを書いたプロフェッショナル

細木聡子

細木聡子(ホソキアキコ)
株式会社リノパートナーズ代表取締役/技術系ダイバーシティ経営コンサルタント/(公財)21世紀職業財団客員講師/中小企業診断士

元NTT女性管理職10年、約500名のSE部門における人事育成担当3年の豊富な現場経験を持つ。これまで延べ7,700人以上の技術系企業の女性管理職育成に携わる。技術系企業のジェンダーギャップ解消を突破口としたダイバーシティ経営推進を支援。

元NTT女性管理職10年、約500名のSE部門における人事育成担当3年の豊富な現場経験を持つ。これまで延べ7,700人以上の技術系企業の女性管理職育成に携わる。技術系企業のジェンダーギャップ解消を突破口としたダイバーシティ経営推進を支援。

得意分野 経営戦略・経営管理、モチベーション・組織活性化、キャリア開発、リーダーシップ、マネジメント
対応エリア 全国
所在地 千代田区

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