4コマ漫画でみる「役職定年」あるある~キャリアは終らず始まる
役職定年制度とは、一定の年齢に達した時点で役職から退く制度のこと。終身雇用や年功序列の崩壊に伴い、世代交代や組織活性化を期待すべく導入している企業も多いかと思います。しかし、役職定年制度によって、モチベーション低下を招いてしまったというご相談をお聞きします。少子高齢化の背景より若手の採用や定着に苦戦する一方で、65歳までの雇用延長が義務化され、今後のミドルシニア層の活躍は必要不可欠ともいえます。このことより、近年では役職定年制度を廃止する動きがみられ、役職定年制度ではなくポストオフ制度を採用しているケースも増えてきています。
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役職定年の実態
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独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構が2017年行った『高齢化時代における企業の45歳以降正社員のキャリア形成と支援』に関するアンケート調査(有効回答3,355社)によると、50代後半の役職者に対して約3割弱の企業が役職定年制度を導入しており、役職定年の役職位については課長・部長が上位となっています。
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●役職定年制度の状況
・導入している企業の割合…28.1%(従業員数301人以上規模では35.2%)
・対象年齢…平均57~58歳(課長平均57.2歳・部長平均58.1%)
・仕事に対する意欲…約48%が意欲減少(課長・部長の数値平均)
・会社に尽くそうとする意欲…約44%が意欲減少(課長・部長の数値平均)
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また、役職定年制を導入している企業の割合は大企業の方が多いものの、役職を降りた後の「仕事に対する意欲・会社に尽くそうとする意欲」に関しては、従業員規模の大きな企業ほど意欲の減少率が高い結果となっており、シニア世代の活躍が推進される昨今では、大企業を中心に役職定年制を廃止する動きが広がってきています。そしてその背景には、年齢にとらわれない「ジョブ型雇用」への移行も影響していることが考えられます。
出典:独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構「役職定年制度の導入状況とその仕組み」
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役職定年とポストオフの違い
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役職定年制度は一定の年齢に到達すると役職から外れてもらうという仕組みですが、役職定年後は給与や待遇がしばしば悪化することがあります。一方でポストオフ制度は年齢に応じた判断だけではなく、役職の解任後に別のポストを用意したり、別の部署に異動したりする機会を与えたりと、別のミッションを持ち働き続けることを前提とするため、専門性の高さやこれまでの社内への貢献度などで処遇が決定され、給与や待遇が大きくは変動しないことが特長です。
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●役職定年制度…年齢軸/給与水準が下がることが多い/退職するケースも多い
●ポストオフ制度…総合評価/給与水準が大きく変わらない/新たな形で活躍を目指す
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ポストオフ制度は、年齢だけが判断基準ではないため、その役職(ポスト)に必要性のある人材であれば、役職がついたまま定年まで働くこともできる制度です。しかし、年功序列で評価を行っていた企業であれば、50代後半の時点で勤続年齢給が加味されているケースが多く、ポストオフのタイミングで各々の専門性や貢献度により判断するとしても、実態として給与水準に影響することも多いため、モチベーション維持の課題はあるのではないでしょうか。
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役職を退いた後も活躍し続けるためのポイント
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リクルートマネジメントソリューションズが2021年に実施した「ポストオフ経験に関する意識調査」によると、役職を退いたあとの「労働価値観の変化」に関して、元部長・元課長ともに同じ内容が上位となっており、さらに「仕事に対する意欲・やる気の推移」については、6割近くの方が「一度はやる気が下がった」と回答しています。
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●ポストオフ(前)の「仕事をする上で重要と考えるもの」
・十分な賃金を得る良い生活をする・自分が成長する能力が活かせる・達成感を得る
●ポストオフ(後)の「仕事をする上で重要と考えるもの」
・人の役に立ち感謝される・自分が楽しみ面白いと思う・職場環境快適でストレスが少ない
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前後の変化をみてみると「仕事での結果重視の価値観」から「自分自身の素直な感情」へ意識が変わっており、見方を変えれば役職についていた頃に重視していた価値観との落差が喪失感やモチベーション低下の源泉となる可能性があるといえます。
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●一度やる気が下がった後の意欲・やる気
・下がったまま…約4割 ・やる気が再浮上した…約2割
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一度やる気が下がった後に新たにやる気が浮上した理由については、「仕事で成果があがった」「会社や仕事に対する考え方が変わった」という回答が上位となっており、新たなキャリア観で充実度や満足度を上げることが役職を退いた後もイキイキと活躍し続けることに繋がります。一方でこの価値観やキャリア観を見いだせないまま、制度への不満や諦めばかりの思考では、本人・会社ともに良い状態とは言えません。会社は役職定年後のミドルシニアの活躍を求め、本人も役に立つことを望んでいるからです。65~70歳までの雇用が見込まれる昨今、役職定年を迎えた後もまだまだキャリアの舞台は続きます。ポイントは、その「活躍の仕方」なのです。
まずは本人がこれからどうなっていきたいか新たなキャリア観と向き合ってみること、そしてそこにフォーカスした活躍の場がどこにあるのかを本人と会社で相談していくことが必要なのではないでしょうか。
出典:株式会社リクルートマネジメントソリューションズ「ポストオフ・トランジションの促進要因 −50〜64歳のポストオフ経験者766名への実態調査」
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これまで人材紹介、研修企画、人事評価コンサル等、HRサービスに従事。現在は、キャリア自律プログラム「じぶん戦略」の研修提案・運営サポートを担当。その他、"仕事あるある"にまつわる4コマ漫画や"人事課題"に関するトーク動画を制作し発信している
中川 絵美(ナカガワ エミ) 株式会社エイチ・ティー(HxT) コンサルタント
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