夜勤の従業員の休憩時間はどのようなルールがあるか
業種によっては、夜勤が必要になる企業があります。病院などのように、従業員が夜勤のため長時間拘束されるケースも多いでしょう。夜勤であっても、1日8時間・1週40時間の法定労働時間を守る必要があります。
労働基準法では、休憩は労働時間の途中で取得することを義務付けています。しかし、夜勤をする従業員は、勤務時間が18:00~翌朝の9:00までなどと長時間になることが珍しくありません。夜勤の従業員の休憩時間にはどのようなルールがあるのでしょうか。休憩時間になるケースとならないケースを、具体的に解説します。
夜勤が「宿直」であるか判断する
病院や介護施設など、業種によっては夜勤で宿直が必要な企業も多いでしょう。宿直といっても、労働時間に該当するケースもあれば、例外的に労働時間としてカウントしないケースもあります。ここでは、宿直時の休憩時間の必要性について解説します。
宿直であれば休憩時間は必要ない
労働基準法には「宿日直許可」と呼ばれるものがあり、宿直や日直を行った時間は労働時間の対象から除外できます。ただし「宿日直許可」を得るためには、労働基準監督署長からの許可を得る必要があります。
宿直とは、夜間に職場で待機することや宿泊を伴う当直のような働き方を意味し、工場やコンビニエンスストアのような24時間稼働する業種や職種で、夜間に通常業務を行う夜勤とは区別する必要があります。宿直は、夜間に緊急時に対応する必要があるための要員を確保するもので、非常時に備えて待機することを目的としています。
労働基準監督署長からの許可を得た上での宿直なら、休憩時間は必要ありません。宿直の対象となる業務に従事する時間は労働基準法の労働時間の対象から除外される仕組みになっており、宿直の時間すべてを労働時間としてカウントしなくてもよいことになっているからです。
宿日直許可に該当する条件
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ほとんど労働する必要がない業務
定時的巡視、緊急時の文書や電話の収受、非常事態に備えての待機が目的であり、通常の勤務とは完全に切り離されていることが必要 - 宿日直手当の支払い
宿日直手当の最低額は、通常の労働者に支払われる賃金の1日あたりの平均額の1/3以上であることが必要 - 宿日直の回数
宿直勤務は週1回が限度 - 仮眠設備
宿直勤務は睡眠設備の設置が必要
宿直でない場合は労働時間の長さで判断する
夜勤の時間が労働基準法上の宿日直許可の基準を満たさず、すべてが労働時間と判断されれば、1日6時間を超えれば45分以上、1日8時間を超えれば1時間以上の休憩時間が必要になります。宿直ではない場合の休憩時間は、労働時間の長さで判断する必要があります。
労働密度が低く、休息を取ることが十分可能と認められなければ、宿直の許可は得られないことに注意が必要です。通常の勤務を継続して宿直をするケースでは許可が下りません。また、始業・終業時刻に密着した時間帯に顧客からの電話を受けるようなケース、盗難・火災防止の業務を行うようなケースについても、通常勤務の延長上の業務や通常勤務に必要な業務と判断され、宿直とは認められません。宿直勤務中であっても、通常と同様の業務を行った場合は、その時間は労働時間となるため、宿日直手当とは別に本来の賃金を支払う必要があります。
夜勤中に通常の業務と同様の業務が発生することがあったとしても、頻度がまれであれば宿日直の許可が得られる可能性があります。しかし、頻度が多いと宿直とは認められず、夜勤勤務となり、休憩時間を設定することや割増賃金の支払いが必要になります。
休憩時間が十分取れなかった場合、時間外労働に
労働基準法では法定労働時間を1日8時間・1週40時間までと定めており、法定労働時間を超える労働時間については、時間外労働に対する割増賃金を支払う必要があります。また、深夜22:00~翌朝5:00までの深夜労働に対しても、割増賃金を支払う必要があります。ただし、割増賃金は実労働時間でカウントして支払うものであり、休憩時間は労働時間に含まれないため、無給とするのが原則です。
夜勤勤務は日をまたいで労働しますが、労働は1日の労働時間(前日から引き続く労働時間)としてカウントするため、休憩時間は夜勤1回あたり1回で問題ありません。また、仮眠時間も業務対応不要で休息が取れるのであれば、労働時間には該当しません。しかし、何らかのトラブルがあって休憩時間として定めた時間に満たなかった場合や、休憩を取れずに働いた時間は、労働時間としてカウントしなければなりません。そのため、休憩時間が十分に取れなかった場合、実労働時間でカウントして1日8時間・1週40時間を超えれば、時間外労働が発生し、割増賃金の支払いが必要になることにも注意する必要があります。
手待ち時間は休憩時間にはならない
就業中に、何も作業を行っていないように見える「手待ち時間」が発生することがあります。「手待ち時間」は、会社から指示があれば直ちに業務に従事しなくてはならない時間のことを指し、休憩時間とは異なります。使用者の指揮命令下にある時間、つまり労働時間に該当するため、注意が必要です。
手待ち時間に該当するケース
- 作業と作業との間にある不活動時間
- 休憩中でも電話対応や顧客対応が必要となるケース
- トラックのドライバーなど荷物を積むために待機している時間
- タクシードライバーの客待ち時間 など
仮眠時間も注意
手待ち時間と同じように、ビルなどの管理業務における夜間の仮眠時間も、仮眠室での待機と警報などへの対応が義務付けられていると労働からの解放が保障されているといえないことから、労働時間と判断した裁判例もあります。労働時間と判断されれば、時間に応じた賃金や割増賃金の支払いが必要です。休憩は労働から完全に開放されることが保障された時間となるように、厳密に取り扱わなければいけない点に留意する必要があります。
夜勤が一般的な業界では独自の見解が出されることも
夜勤が一般的な業界では独自の見解が出されることがあり、各業界で公表されているガイドラインや遵守事項などの情報収集も必要です。そもそも休憩は法定の1時間では足りないとする研究もあり、夜勤と日勤を繰り返すようなケースでは、不規則な生活習慣により健康を損なう恐れがあります。勤務形態や業務の特殊性にもよりますが、企業には労働者の健康を守るために必要な十分な配慮が求められます。
日本看護協会の推奨時間
看護師の働き方として夜勤が一般化しているため、日本看護協会では、夜勤時には2時間以上の仮眠時間を確保することを推奨しています。夜勤ではなくとも、健康上の配慮から、労働時間が長くなる場合には労働時間に合わせて休憩時間も延長するなどの必要性があります。
看護師を必要とする業界では看護職のためのガイドラインが整備されていることから、看護職に従事する従業員の健康を守るためにもガイドラインを遵守する必要があります。
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