マーサー 「グローバル年金指数ランキング (2013年度) を発表
日本の年金制度は20ヶ国中17位
マーサーは、2013年度グローバル年金指数ランキング「マーサー・メルボルン・グローバル年金指数」を発表した。
・日本の指数・ランキングに変化なし
・デンマークは指数が低下するも首位を堅持
・日本は定年後の問題解決への根本的な改善が求められる
・「マーサー・メルボルン・グローバル年金指数(2013年度)」 は20ヶ国を対象に実施し、
対象範囲が世界の人口の55%超に拡大
当ランキングは世界各国の年金制度を比較したもので、日本の年金制度は昨年2012年の指数、ランキング共に変化がなく、制度の安定性はみられるも、高齢化人口をめぐる課題に対する取り組みなど引き続き改善の余地があることが明らかになった。
日本の総合指数は2012年、2013年ともに44.4であった。しかしながら日本の”十分性(Adequecy)“の項目は改善がみられ、指数は2012年の46.1から47.9に上がった。一方、”健全性(Integrity)“の項目指数は2012年の63.3から60.5に若干下がった。
デンマーク、オランダ、オーストラリアはトップ3の順位を維持。デンマークは昨年2012年に最高ランク“A”の評価を得た最初の国だが、2013年も総合指数を82.9から80.2に若干落とすも首位を堅持した。同国の十分に積み立てられた年金制度、優れた資産構成と掛金の水準、十分な給付レベルおよび法令の整った個人年金制度が高く評価された。
シンガポールの順位は13位から7位と飛躍的に上がり、上位10位に入った。シンガポールの総合指数は2012年の54.8から2013年の66.5と伸び、ランク評価も“C”から“B”へと上がった。これはOECDが中央積立基金(CPF)への取り組みと個人年金のデータを改正したことに起因する。
マーサージャパンの年金コンサルティング部門代表を務める北野信太郎は以下の通りコメントしている。
「ランキング上位の国々においても老後の生活保障の問題は山積しており、例えば総合評価で“B+”評価を得ているオーストラリアにおいても、貯蓄を促進させる法整備を行うなど、更なる対応が求められています。世界的にも類を見ない「長寿社会の最先進国」である日本においては、制度の永続的な安定のために適切な措置を講じることは勿論、それらを迅速に実行に移していくことが待ったなしに求められます。NISA(小額投資非課税制度)の導入や、消費税率の引き上げと社会保障と税の一体改革などの法整備により、来年は日本の総合評価の改善が期待されますが、とても十分とは言えません」
「一方で、海外の事情に目を向けると、確定給付(DB)型の企業年金制度から、確定拠出(DC)型の制度への移行というのは、最近20年ほどの間、世界でも大きなトレンドとなってきました。しかしここにきて、果たしてDC制度で老後を支えるに足る十分な所得補償を実現出来るのか、と問い直す声が上がってきています。日本でも企業年金をDCへと移行させる動きは加速してきましたが、それでも世界全体で見ればまだまだDB型の制度が広く用いられています。老後の生活保障の術としてのDC制度の有効性が問われる中、DB型の企業年金が数多く存在する日本だからこそ、DB制度を維持する意義を再検討してみるのは、価値のある議論ではないでしょうか」
「マーサー・メルボルン・グローバル年金指数」は今年で5年目になり、2013年の対象国はメキシコとインドネシアが追加され、2009年実施当初の11ヶ国から20ヶ国に増加した。世界の人口の55%超を対象とするまでに拡大している。各国の公的ならびに私的年金制度の積み立てや、個人貯蓄などの年金以外の資産についても客観的な評価をしている。この指数はマーサーならびに豪州ビクトリア州政府の機関であるオーストラリア金融研究センター(ACFS)によって開発され、指数自体は50以上の質問項目から構成されており、「十分性 (Adequacy)」、「持続可能性 (Sustainability)」、「健全性 (Integrity)」に大別される(※調査方法の詳細は別表”FACT SHEET”を参照のこと)。
日本の制度の年金指数を改善する上で、以下のような方策が考えられる:
・低所得の年金受給者に対する最低年金額の引き上げ
・年金給付額の引き上げに伴う、所得代替率の改善
・(企業年金などの)老齢給付の一部を年金所得として取得するよう定める規制の導入
・平均寿命の増加に伴い、公的年金制度の支給開始年齢の更なる引き上げ
オーストラリア金融研究センター(ACFS)でエグゼクティブ・ディレクターを務めるデボラ・ラーストン教授は本指数について、政府関係者、実業界あるいは学術関係者等にとっても高年齢化社会の課題対策のために非常に価値のあるグローバル・データであると説明する。
2013年度のレポートには、確定拠出(DC)型の制度について1章が追加されている。
マーサーのシニア・パートナーであり当レポートの責任者でもあるデービッド・ノックス博士は次の通り述べている。「世界的な長寿化の波、貯まり続ける公的債務、不安定な経済環境、そしてDC制度への移行の流れの中、老後の生活保障における新たなソリューションの開発や学ぶべき教訓が未だ沢山残されています。」
「DC制度はいくつかの国では確立されて既に長い年月が過ぎ、さらにそのトレンドは他の国々に波及しています。オーストラリアはその中でも最先鋒と言えるでしょう。ただし、そのオーストラリアにおいても、他の国々同様、DC移行により人々の老後を支える十分な所得補償を実現できるか、という問いについてはほとんど未解決のままです。それは世界中の政治家や年金業界の関係者等にとっても解決すべき最重要の課題であるにも関わらず、です。」
「DC制度というのはこれまで資産形成という観点で語られることがほとんどでしたが、そうではなく、老後の所得の形成という視点へと、見方を根本的に変える必要があります。それには老後の生活保障にかかわる様々な不確実性に対応する、効率的かつ公正な所得配布の枠組みを検討しなければなりません。」
「社会的、政治的、歴史的あるいは経済的影響にかかわらず、高齢化時代における課題というのは実は良く似ています。結果的に、各国で採用されている対策も非常に似通ったものになりますし、当指数もそのように有効性が実証されている、優れた施策に焦点を当て、広くグローバル規模で共有することを目的としています」(ACFS:デボラ・ラーストン教授)
◆ 本リリースの詳細は、こちらをご覧ください。
(マーサー ジャパン株式会社 http://www.mercer.co.jp/home /10月7日発表・同社プレスリリースより転載)