マイナビ「2012年度 就職戦線総括」を発表
新卒採用環境が大きく変化するも、企業の採用意欲は回復傾向。
一方、学生の業界・企業研究不足など新たな課題が露呈
株式会社マイナビ(本社:東京都千代田区、社長:中川信行)は、2013年春卒業予定学生を対象とした、企業の新卒者採用状況と学生の就職活動状況をまとめた「2012年度 就職戦線総括」を発表しました。概要は以下の通りです。
<調査結果の概要>
■ 【新卒採用環境】新卒採用を取り巻く環境が変化する中、雇用意欲は緩やかに回復し、
選考基準は高止まり。グローバル人材への関心が高まる
2013年卒の新卒採用は、2012年卒以前と異なり、広報活動の開始が2カ月遅れの12月からとなった。日本経済団体連合会が広報開始時期を12月1日、選考開始時期を4月1日と定めた事により、就職情報サイトを含めた広報開始が10月から12月に移行した。また、同改定ではインターンシップに関する定義も明確化され、採用選考活動とは一切関係ないこと、実施期間は5日間以上、学生を企業の職場に受け入れるプログラムであること等が明記され、これまで多く実施されていた短期間のインターンシップに、一定の制限がかけられる事になった。
2013年卒採用において、企業の新卒採用意欲は前年よりやや上昇傾向だった。「採用予定数の増減」では、「減らす」が2年連続で減少し、「増やす」が「減らす」を1割前後上回り、新卒の採用は緩やかに回復している(図1)。但し、学生に対する企業の採用基準は、引き続き高い水準を維持している。採用予定調査の「採用基準」を前年と比較した設問においては、年々「厳しくする」が減少し、「前年並み」が増加しており、高止まりの傾向にある。また、昨今話題となっているグローバル人材への関心も年々高まっている。2013年卒において、留学生の採用を実施予定と回答した企業の割合は日本人・外国人留学生共に8.8%。検討中の企業を合わせると3~4割が関心を示している(※1)。
【図1】 採用予定数の増減:2013年マイナビ企業新卒採用予定調査
■ 【学生の動向①】インターンシップ参加学生の減少。早期化是正の一方で、学生の準備不足を懸念
「インターンシップに参加した学生の割合」は、前年比20.3pt減の28.4%と半減した(※2)。学生一人当たりの延べ参加社数も2.5社から1.4社へと減少した。その要因は実施企業の減少にある。倫理憲章によるインターンシップ定義の明確化に加え、就職情報サイト各社がインターンシップ情報の掲載に際し、就業体験を伴う内容の記載を必須化したことも影響し、各就職情報サイトのインターンシップ情報掲載企業数は前年比64.2%に減少した。大学においても学内会社説明会の開始時期を12月以降とした割合が前年比17.8pt増の89.4%となった(※3)。学生が企業と接触する時期は2カ月後ろ倒され、早期化に一定の是正効果がみられた一方、企業との接触機会の減少により学生の準備の遅れが表れ始めた。マイナビの登録時期分布においても10月の登録者が前年比7.4pt減の10.4%であったが、12月の登録者は前年比14.7pt増の20.5%になるなど、広報活動開始直後に登録する割合が増加した。結果、早くから準備を行う層と、広報活動開始直後に準備を始める層とで、学生の意識醸成に差が出る状況であった。
■ 【学生の動向②】エントリー件数は前年比の約8割。学生の大手企業志向がさらに減少
12月に「エントリーを行った」学生が9割を超え、5月末までの延べエントリー件数(69.0社)の内、約6割(57.7%)を占めるエントリーが12月の1カ月間に集中したが、5月末の延べエントリー件数は前年比の約8割(82.8%)と、前年より減少した。特に従業員5,000人以上の企業で、前年よりエントリーが「減った」とする回答が66.1%になるなど、従業員規模の大きな企業ほどエントリーの減少傾向が強くみられた(※6)。広報開始時期の後ろ倒しにより、学生がハードルの高い大手企業へのエントリーを控え、自分の身の丈にあった企業へのアプローチを優先させたと考えられる。学生の企業選択基準において、今期は早くから中堅・中小企業を意識する傾向が見られた。「絶対に大手企業がよい」と「自分のやりたい仕事ができるのであれば大手企業がよい」の合計が前年比7.2pt減の36.1%に留まり、その分中堅・中小企業を志望する割合が年々高まっている(※5)。この要因としては、期間短縮による現実的な企業選択を行うようになった学生の意識や、キャリアセンターの指導等が影響していると考えられる。
また、学生の合同企業説明会への参加が大幅に増加した。過去2年の5月末までの延べ参加回数は約5回だったが、2013年卒は12月の1カ月間で7.7回参加している。「合同企業説明会は役に立ったか」とする設問に「知らなかった企業を発見できた」が前年比3.9pt増の53.8%、「知らなかった業界を知る上で役立った」が前年比4.3pt増の51.4%と、業界理解・企業発見に役立ったとする回答が増加した(※4)。年内の企業との接触機会が減少した分、合同企業説明会が業界理解や企業発見の役割を担う割合が高まったと推察される。
【図2】 大手企業志向の推移:2013年卒マイナビ大学生就職意識調査
■ 【企業の動向】選考時期は後ろ倒し、上場企業は4月に集中
一次選考の実施時期は、4月に入るまで2011年卒の数値を下回るなど、3月以前に選考を受ける割合は減少した。一方、4月中の選考回数及び選考期間については、1社あたりの平均選考回数が2.9回と前年と変わらず、2011年卒比では0.5回減となった。選考期間も1次面接から内々定まで「2週間以内」が前年比12.8pt増の43.8%と、比較的短期間で進んだことがわかる(※4)。企業の選考は、4月以降に面接を開始する割合が前年比6.2pt増の55.9%となった(※6)。上場・非上場で比較すると、非上場企業は5月以降に開始する割合が前年比5.5pt増の25.7%と、後ろ倒しの傾向を示している。一方、上場企業は3月以前の開始割合が前年比6.7pt減少する代わりに、4月が前年比5.5pt増の42.4%と、4月に集中している。震災により選考時期が分散化した前年、5・6月に選考を開始した企業の満足度が、4月実施企業と比較して相対的に低かったことを受け、4月に選考を行う企業が増えたと推察される。
■ 【内々定状況】6月末時点の内々定率は50.3%。
文系を中心に内々定を保有しながら活動を継続する学生も増加
学生が内々定を受けた時期は、3月以前に内々定を受けた割合が2011年卒比5.8pt 減の15.1%と、全体的に後ろ倒しとなっている。その分、ピークは4月上旬(23.3%)となり、3月以前の内々定が4月上旬に集中する傾向にあった(※4)。6月末時点の内々定率は前年比4.2pt増の50.3%となり、震災前の2011年卒比でも0.6pt増と過去2年を上回った。内々定保有者の内、活動を終了する割合は前年比1.3pt増の64.2%となっている。文理男女別では、理系が活動を終了する割合が高く、文系が活動を継続する割合が高い(※7)。文系男子は内々定率が2011年卒より高く、内々定保有数も増加しているものの、多くの内々定を保有したまま活動を継続している。これは2カ月後ろ倒しの影響で、企業理解の不足及び、企業選択基準の不明確化が助長され、未だ意思決定に至っていないと推察される。
■ 【2014年卒の採用に向けて】
学生の目的に応じた発見・認知の機会創出、個別接触の精度向上が重要
先日、日本経済団体連合会が発表した2014年度入社対象の「採用選考に関する企業の倫理憲章」では、現行の倫理憲章の見直しは行わないことになった。2013年卒では合同企業説明会の在り方が変化し、学生の業界理解や企業発見の役割を担う割合が高まった。そのため、2014年卒では、企業の初期認知を高めるには早期から複合的な採用広報の強化が求められる。これまでの就職情報サイトやホームページを通じた学生とのコミュニケーションを軸に、合同企業説明会や学内会社説明会を通じて発見や認知の機会を拡げる施策が必要となる。学生が合同企業説明会に参加する目的は、業界や企業の発見、特定企業の話を聞くという二つに分かれる為、学生の目的に沿った複数プログラムの準備なども求められる。また、学生は短期間で業界や企業を理解・判断することを迫られる為、情報提供の在り方についても再考する必要があり、他社との明確な差別ポイントの説明や、社風を踏まえた業務内容の紹介など、自社の「らしさ」を的確に伝えることが重要となる。限られた期間で採用対象学生に自社の認知を高め、志望度を入社意欲にまで向上させるには、学生対応が可能な社員の育成が重要となる。2014年卒以降も、議論が始まった秋入学への対応や、後半における選考機会創出の必要性が高まると予想される。今後は、広報活動開始前の活動の在り方と併せて、通年化を視野に入れた採用計画の見直しが求められるのではないだろうか。
≪ 参考資料1 ≫ 【注目されるインターンシップの現状】
2013年卒学生の自社や業界への興味・関心が高いと感じた企業が9.0%であるのに対して、低いと感じた企業が48.5%と大幅に上回った(※8)。また、2014年卒での追加対策を実施する必要性を感じるかと尋ねたところ、84.7%の企業が必要だと考えており、そのうち54.7%が「業界理解・企業理解の促進」を、31.4%が「インターンシップを含めた11月以前の対策」を挙げた(図3)。2013年卒で実施されていたインターンシップの中で最も興味を惹いていたのは、実際の仕事体験を伴ったプログラムである。しかし、参加したインターンシップの中で印象の良かった内容を聞いてみると、グループワークであっても良い印象を持ったという回答も多く、「入念に事前準備をされていた」「働くイメージがわいた」といった回答が目立った(※2)。大学等のキャリア・就職支援の立場からも、採用広報開始時期が後ろ倒しとなった今年は学生の仕事理解が不足していたという認識が強いようで、現状に対する危機感や、その解決手法としてインターンシップを示す声も挙がった。実体験に近い学びの場としてのインターンシップが、より理解度の高い学生を創出する機会として機能し、企業と学生双方に恩恵がもたらされることが望まれている。
【図3】 2014年卒で必要だと思う対策:2013年卒採用広報開始時期2カ月後ろ倒しが採用活動にもたらした影響についての意識調査
≪ 参考資料2 ≫ 【注目を増すグローバル人材採用】
近年、経済のグローバル化の進行を背景に、新卒採用においても、ますますグローバル人材が注目されている。新卒採用市場におけるグローバル人材のターゲットとしては、「留学経験を持つ日本人学生」「日本の有名大学在籍の外国人留学生」「海外拠点の現地大学生」などが考えられる。採用手法として外国人留学生の採用を導入する企業は増加傾向にあり(2012年卒:12.0%→2013年卒:13.8%)、特に上場企業においては顕著(2012年卒:25.2%→2013年卒:31.3%)である(※6)。また2013年卒で外国人留学生について「採用する予定」か「検討中」と答えた上場企業は58.6%、現地大学生についても46.2%となった(図4)。幅広い外国人学生の採用を重視する理由は2つ考えられる。1つはグローバル市場における最重要地域がアジアであり、そこで活躍する人材を育てるには、その地域出身の学生を採用するのが得策と考えるからである。もう1つが良質な人材をより広いターゲットから採用したいという志向である。グローバル人材の採用においては、採用戦略はもちろん、企業内の環境においても、グローバル化の障壁となる壁を取り払うための戦略を講ずる必要がある。グローバル人材の採用と企業のグローバル化は密接に関連していると言えるだろう。
【図4】 上場企業の2013年卒における採用方針:2012年卒マイナビ企業新卒内定状況調査
(※1)2012年卒マイナビ企業新卒内定状況調査(2011年10月発表)より
(※2)2013 年卒マイナビ大学生広報活動開始前の活動調査(2011年12月発表)より
(※3)2012 年度キャリア・就職支援への取り組み調査(2012年6月発表)より
(※4)2013年卒マイナビ学生就職モニター調査(2012年1月から2012年8月まで毎月発表予定)より
(※5)2013年卒マイナビ大学生就職意識調査(2012年3月発表)より
(※6)2013年卒企業新卒採用予定調査(2012年4月発表)より
(※7)2013年卒マイナビ大学生就職内定率調査(2012年4月から2012年10月まで毎月発表予定)より
(※8)2013年卒採用広報開始時期2カ月後ろ倒しが採用活動にもたらした影響についての意識調査
(2012年6月発表)より
○ 「2012年度 就職戦線総括」の詳細は『採用サポネット』で公開しています
◆ 本リリースの詳細は、こちらをご覧ください。
(株式会社マイナビ http://www.mynavi.jp/ /8月2日発表・同社プレスリリースより転載)