女性管理職の本音とマネジメント行動に関する調査
組織運営の昨今の大きな課題の1つにダイバーシティが挙げられます。中でも女性が働きやすく活躍できる組織づくりは、多様化する顧客のニーズや加速する労働力不足など山積する問題への重要な解決の糸口となるものです。
このたび、JTBグループで様々なコミュニケーションサービスを提供する株式会社JTBコミュニケーションデザイン(以下JCD)は、ワーク・モチベーション研究所にて、~女性管理職の実像と本音~vol.2「女性管理職の本音とマネジメント行動に関する調査」をまとめました。2023年11月に発表したvol.1「部下から見た女性管理職のマネジメントに関する調査」との比較検討も行っています。
<主な調査結果>
【管理職のモチベーション】
1. 女性上司がいる管理職のほうが「今の仕事が好きである」と回答する割合が高い
非管理職の調査結果とも一致
「今の仕事が好きである」という項目について、管理職の51.3%が肯定回答を選択しました(小数点第2位以下を四捨五入した数値であるため、グラフの数値の単純な足し算の結果とは異なる場合があります。以降の数値も同様です)。管理職の上司(上級管理職)の性別による差を見ると、女性上司のいる管理職のほうが男性上司のいる管理職よりも肯定する割合が高く、統計的にも有意な差を示す事となりました。
昨年発表した非管理職の調査結果(vol.1「部下から見た女性管理職のマネジメントに関する調査」)でも、女性管理職のもとで働く非管理職のほうが、「今の仕事に喜びを感じる」「今の上司の下にいるとやる気になる」と回答する割合が高く、今回の管理職自身の調査結果と一致していました。
管理職であっても、自身の上司が女性であるほうが仕事が好きと感じており、モチベーションが高い可能性が示されました。
【組織の女性管理職比率とモチベーション】
2. 女性管理職比率が3割以上の会社では、男性の管理職、男性の非管理職もモチベーションが高い
「今の会社には管理職の中に女性が3割程度以上いる」と回答をした人ほど、モチベーションが高いことがわかりました。管理職と非管理職を合わせた2,062人のデータも同様の結果となりました。さらに男性管理職、男性非管理職だけを取り出しても同様でした。また、「今の仕事が好きである」という項目についても女性管理職比率が3割以上の人のほうが肯定的な回答が多い結果でした。
会社に女性管理職が多く存在することが、管理職にとっても非管理職にとっても、モチベーションに良い影響を与えている可能性が示唆されました。
【管理職がつくる組織風土】
3. 女性管理職のほうが、また女性上司がいる管理職のほうが「人間関係が良い」
「アイデアを提案しやすい」風土を作る意識が高く、非管理職の評価とも一致
管理職にどのような組織風土を作ろうとしているかをたずねました。「自部門の中で、よい人間関係が保たれることを目指している」(肯定割合:女性管理職73.4%>男性管理職66.8%)、「自部門が、新しいアイデアや企画を提案したり、実行したりしやすくなることを目指している」(同:66.9%>60.4%)といずれも女性管理職が優位であり、女性管理職のほうが人間関係に配慮したり、イノベーティブな職場づくりへの意識が高いと考えられます。
管理職の上司の性別で比較すると、女性上司のいる管理職のほうが「自部門の中で、よい人間関係が保たれることを目指している」(肯定割合:女性上司のいる女性管理職80.6%、女性上司のいる男性管理職83.8%)、「自部門が、新しいアイデアや企画を提案したり、実行したりしやすくなることを目指している」(同:70.9%、80.6%)など、いずれも女性上司を持つ管理職の方が肯定割合が高く、管理職自身の性別、そして管理職の上司の性別が組織風土に及ぼす影響が示されました。
非管理職の調査結果(vol.1「部下から見た女性管理職のマネジメントに関する調査」)でも、女性管理職のもとで働く非管理職のほうが自部門の風土に関して、「入社・異動してきたばかりの社員や若い社員が生き生きと働いている」「新しいアイデアや企画を提案したり、実行したりしやすい」と回答する割合が高く、また女性上司がいる女性は「人間関係がよい」と回答する割合が高く、今回の管理職自身の調査結果と一致していました。
【管理職が必要としているもの】
4. 管理職として必要としているもの、1位は職場の良好な人間関係、2位は知識・経験
「管理職として仕事をするために必要としているもの」を3つまで選んでもらったところ、「職場の良好な人間関係」「自身の知識・経験」が上位となりました。
女性管理職についてみると、「適正に評価されること」「私生活や休養の時間がとれること」「相談できる人の存在」が、男性管理職より多く選ばれていました。
非管理職の調査結果(vol.1「部下から見た女性管理職のマネジメントに関する調査」)でも、上司についてよいと思う項目を3 つまで選んでもらったところ、全体での1 位は「相談がしやすい」(39.1%)、次いで「仕事の知識・経験が豊富である」(29.7%)、「部下の私生活を考慮してくれる」(25.4%)という結果となり、相談しやすさという人間関係に関する項目が最も多く選ばれていました。今回の管理職自身が必要としているものとの傾向と共通する点があると考えられます。
【管理職の孤独と人脈】
5. 仕事中の孤立感、管理職の33.2%が持つ
社内人脈に助けられる管理職59.7%、社外人脈を持っている管理職48.8%
女性管理職のほうが社内人脈を持つ割合が高い
「仕事をするとき、孤立しているように感じることがある」について全体の33.2%が肯定回答を示しました。自身の性別、上司の性別では統計的に意味のある差はありませんでした。
「社内の人脈(お互いに助け合う人間関係)に、助けられることが多い」では全体の59.6%が、「今の会社以外に、人脈(お互いに助け合う人間関係)を持っている」では全体の48.7%が肯定回答を示しました。「社内の人脈」については女性管理職のほうが肯定する割合が高いことがわかりました(女性管理職63.1%>男性管理職56.1%)。
6. 「もし経営に携わることになったら、と考える」管理職、全体の34.2%
男性管理職のほうが肯定割合が高く、男女とも若い管理職ほど肯定割合が高い
「自分がもし今の会社の経営に携わることになったら、と考えることがある」の割合は全体で34.2%にとどまりました。男性管理職36.5%、女性管理職31.8%と男性管理職の方が高い結果でした。上司の性別による統計上の有意な差は示されませんでした。
また男女とも、60代を除き年代が若い管理職ほど肯定割合が高いこともわかりました。
【管理職のダイバーシティ感覚】
7. 女性管理職、および女性上司のいる管理職(男女問わず)は、女性管理職の広がりを認識し、ダイバーシティへの意識が高い
「自分の身のまわり(友人や家族・親戚、地域コミュニティなど)では、女性が管理職になることは、違和感なく、受け入れられている」「ダイバーシティを受け入れ、尊重することは大切だと思う」などの意識は、いずれも女性管理職、および女性上司のいる管理職(男女とも)のほうが肯定回答が多い結果となりました。
自身が女性で管理職を務めていたり、上司が女性である場合には、自分の身のまわりでは女性管理職の存在が受け入れられていると認識し、且つダイバーシティの重要性にも意識が高いと考えられます。
なお非管理職の調査結果(vol.1「部下から見た女性管理職のマネジメントに関する調査」)でも、「自分の身のまわりでは、女性が管理職になることは、違和感なく、受け入れられている」について、女性上司のいる部下(男女とも)のほうが肯定回答が多いことがわかっており、今回の管理職対象の調査結果と一致しています。
【調査対象者】
女性管理職、男性管理職それぞれ515人、計1,030人にアンケート調査を行いました。
全国の生活者19,549人に事前調査を行い、女性管理職と男性管理職各515人、計1,030人を抽出しました。
1,030人中、上司を持たない28人を除いた1,002人の管理職について、その上司の性別をみると、上司が女性のケースが19.6%、上司が男性のケースが80.4%となっています。
主な特徴としては、年齢では女性管理職のほうが30代、40代が多いこと、職種では女性管理職のほうが顧客対応・サービス系が多く、男性管理職のほうが技術・開発・製造系が多いこと、役職では女性管理職のほうが係長・主任クラスが多く、男性管理職のほうが部長・本部長クラス、課長・次長クラスが多いことが挙げられます。
◆本リリースの詳細は、こちらをご覧ください。
(株式会社JTBコミュニケーションデザイン/ 1月15日発表・同社プレスリリースより転載)