エンゲージメント・サーベイの分析結果
自ら“仕事を創意工夫すること”は、給与アップや福利厚生よりも 社員のエンゲージメント向上につながる
人材の“採用”から“定着”、その先の“活躍”までを支援する人材サービス事業を展開する株式会社ヒューマネージ(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:齋藤 亮三、以下ヒューマネージ)は、企業で実施されたエンゲージメント・サーベイの分析結果を発表した。本結果は、2022年(2021年12月~2022年11月)にヒューマネージが提供するエンゲージメント・サーベイ『Qraft』(クラフト)を受検した68,659名のデータを分析したものとなる。
自ら“仕事を創意工夫すること”は、エンゲージメント向上に大きく影響。
年代が上がるほど、強い相関がある結果に。
「エンゲージメント」とは、社員が仕事にのめり込んだり、やりがいを感じている状態。社員のエンゲージメントが高いと企業業績や社員の定着にプラスの効果があることは多くの研究で明らかになっており、一人ひとりのエンゲージメントをどう高めるか?は、これからの人材マネジメントにおける大きなテーマとなっている。また、社員のエンゲージメント向上に取り組む企業では、社員のエンゲージメント状態を測定するために「エンゲージメント・サーベイ」を実施、サーベイの結果を組織の現状把握や課題抽出、施策の効果検証に活用している。
さて、従来、エンゲージメントを高める施策は、給与を上げたり福利厚生を充実させたりといった“組織改善”が主であったが、そのようなアプローチには限界がある。そのようななか、昨今、エンゲージメントを高める要因として、その人自身が持つ自ら“仕事を創意工夫する力”=ジョブ・クラフティングが注目されている。ジョブ・クラフティングが社員のエンゲージメントにどれほど影響しているか、2022年に企業で実施されたエンゲージメント・サーベイの結果を確認したところ、(1)いずれの年代においてもかなり強い相関があり、(2)年代が上がるほど相関が強いことがわかった。つまり、自ら“仕事を創意工夫すること”は、エンゲージメント向上に大きく影響しており、年代が上がるほどその影響が強いといえる。
[ジョブ・クラフティング(仕事を創意工夫する力)]と[エンゲージメント状態]の相関係数;
20~29歳:0.68、30~39歳:0.70、40~49歳:0.74、50歳以上:0.76
※相関係数は、二つの変数の関連性を表す係数。比例関係の強さを1から-1の間で表す。
相関係数が1に近いほど正の相関(正比例の関係)が強く、-1に近いほど負の相関(反比例の関係)が強い。
0.0~0.2 ほとんど相関がない
0.2~0.4 弱い相関がある
0.4~0.7 やや相関がある
0.7~1.0 かなり強い相関がある
給与アップや福利厚生が、社員のエンゲージメント向上に与える影響は自ら“仕事を創意工夫すること”よりも小さい。
一方で、給与を上げたり福利厚生を充実させたりといった“組織改善”のアプローチが、社員のエンゲージメント向上に与える影響はどの程度か。同様に、2022年に企業で実施されたエンゲージメント・サーベイの結果を確認したところ、0.59~0.66といずれも「やや相関がある」水準であり、年代が上がるほど相関が弱まっていることがわかった。つまり、給与を上げたり福利厚生を充実させたりといった“組織改善”のアプローチは、社員のエンゲージメント向上に一定の影響はみられるものの、その影響は自ら“仕事を創意工夫すること”=ジョブ・クラフティングよりも小さく、かつ年代が上がるにつれ効果が弱まるといえる。
[組織資源]と[エンゲージメント状態]の相関係数;
20~29歳:0.66、30~39歳:0.62、40~49歳:0.61、50歳以上:0.59
<考察>
今回の分析にて、給与アップや福利厚生といった取り組みは、社員のエンゲージメント向上に一定の効果が見られるものの、年代が上がるほどその効果は弱くなり、他方、社員が自ら“仕事を創意工夫すること”は、全年代で“組織改善”よりも高い効果があり、さらに年代が上がるほどエンゲージメント向上に効果があることがわかりました。現在、多くの企業が賃上げに取り組まれています。もちろん、賃上げもエンゲージメント向上に寄与するものですが、「持続的に社員のエンゲージメントを向上する」という視点では、組織改善のアプローチよりも、社員一人ひとりがもつ“仕事を創意工夫する力”=ジョブ・クラフティングを促進することが有効といえそうです。
ジョブ・クラフティングとは、その人が持つ、自ら仕事を面白くする特性(思考や行動の“癖”)を指し、(1)目標を達成するために仕事のやり方を工夫する“プロセスのクラフティング”、(2)上司や部下、取引先とメリットを交換し合える関係を構築する“関係のクラフティング”、(3)自分の関わる仕事や業務についてその意味を考えたり意義を再発見したりする“意味のクラフティング”の3種類があります。
今回の分析では、20代社員のエンゲージメントが最も低いという結果も得られています。社員がいきいきとやりがいをもって働くために、企業は、プロセスに創意工夫の余地がある業務を任せる、部署を横断し関係構築を促進するようなプロジェクトをアサインする、担当業務について1on1で改めて意味づけをおこなう…等、一人ひとりの“仕事への創意工夫”を支援するようなアプローチが求められるのではないでしょうか。
<分析対象>
調査時期 2021年12月~2022年11月
調査票 エンゲージメント・サーベイ『Qraft』
対象者数 68,659名
◆本リリースの詳細は、こちらをご覧ください。
(株式会社ヒューマネージ/ 3月31日発表・同社プレスリリースより転載)