野村総合研究所、上場企業の社長・従業員を対象に
経営理念・ビジョンに関する意識調査を実施
野村総合研究所(東京都千代田区、藤沼彰久・社長、以下「NRI」)は、2006年5月に東証一部上場企業を対象に「社長アンケート」を、2006年6月に東証一部上場企業に在籍している正社員と一般企業に在籍している契約・パート・アルバイト・派遣社員(以下、非正規社員)を対象に「従業員アンケート」(役員含む)を実施しました。
この2つのアンケートで、「経営幹部は理念・ビジョンを実践していると思うか」を聞いたところ、「そう思う」と回答したのは、「社長アンケート」では61%だったのに対し、「従業員アンケート」では自分が勤める会社の経営理念を知っている人のうち15%と、大きな差が出ました。社長は経営理念・ビジョンを明示し、実践しているつもりでも、従業員からはそう見えていないということがわかります。
また、「従業員アンケート」では、5年前と比較して、自分の会社への忠誠心・帰属意識を「より感じる」「どちらかといえば感じる」という回答が、合わせて18%だったのに対して、「感じなくなった」「どちらかといえば感じなくなった」という回答が合わせて39%でした。役員を除く正社員と非正規社員では、傾向に違いはありませんでした。勤務期間が長くなり、役職が高くなった人材も多く含まれるなかで、会社への忠誠心・帰属意識は下がっていることがわかります。この結果から、5年前とは異なる人材マネジメント手法が必要なことが伺えます。
さらに、「従業員アンケート」で、「今の仕事にやりがいを感じているか」という問いに対して、役員・管理職以外の正社員と非正規社員では、「感じている」と回答したのは3〜4割に過ぎません。そして、やりがいを「感じている」と回答した人にその最も大きな理由を聞いたところ、役員以外の正社員に「今の仕事が自分のやりたい事に近い」という回答が多い(課長職以上の管理職37%、役員・管理職以外の正社員38%)一方で、非正規社員に「仕事とプライベートのバランスがとれる」という回答が多い(契約社員15%、パート・アルバイト社員43%、派遣社員23%)など、働きがいの求めどころに違いが見られました。NRIでは、雇用・就労形態や労働時間、雇用契約期間、処遇水準といった労働条件の多様化が、人材の働き方、仕事観の多様化を生んでいると分析しています。
このような状況において、会社が多様な職種や勤務形態の人材をマネジメントして求心力を高めるには、あらゆる人材の心に響く理念・ビジョンを明示し、浸透させることが有効であるとNRIは考えています。なぜなら、理念・ビジョンは、従業員にとって、報酬や求められる能力と自分の能力とのマッチング以外で、その会社で働く積極的な理由となるからです。
「従業員アンケート」で、役職・職種別に自社の経営理念の周知度を聞いたところ、非正規社員では4〜6割程度が、役員・管理職以外の正社員でも2割が「自社の経営理念を知らない」と回答しています。また、日々の業務の中で「会社の存在意義や、自分の仕事の社会的意義を実感できること」が重要か否かを、非正規社員に限定して、かつ正社員との業務分担(同じ業務を分担しているのか、異なる業務を担っているのかなど)区分別に聞いたところ、いずれの区分でも、そのことが「働く上で重要」「働く上でどちらかといえば重要」と回答している割合が7割を超えています。正社員の求心力を高めるために企業理念・ビジョンを活用する余地はまだ十分にあり、さらに非正規社員も会社の存在意義や、自分の仕事の社会的意義について積極的に理解したがっているということがわかります。
今回の調査結果から、NRIでは、人材の多様化がますます進む2010年以降、理念・ビジョンを起点にした経営モデルが日本の企業経営に不可欠であると考えています。
今回の調査結果を含む、2010年代の日本企業の経営に関するNRIの提言を、単行本「2010年 日本の経営−ビジョナリー・エクセレンスへの地図−」としてまとめ、11月10日に東洋経済新報社から発行する予定です。NRIでは、今後も、日本企業のあるべき経営の姿を探り、その実現を支援していきます。
■ 調査の詳細はこちらまで。 http://www.nri.co.jp/news/2006/060920_1.html
(野村総合研究所 http://www.nri.co.jp//同社プレスリリースより抜粋・9月22日)