ジョブホッピング
ジョブホッピングとは?
「ジョブホッピング」(job-hopping)とは、労働者が好待遇やスキルの向上を求めて、あるいは職場の人間関係や業務分担への不満などから、比較的短い期間に転職を繰り返すことを言います。また、ジョブホッピングを行う人は「ジョブホッパー」と呼ばれています。世界的に見ると、よりよい条件を求めて転職を重ねること自体は、働く人の当然の権利としておおむね受容されているものの、終身雇用と年功序列制度の下で成長を遂げた日本の労働観では、職を転々とする行為にネガティブなイメージがつきまといやすく、キャリアへの悪影響や社会的に不利な評価を受けることも少なくありません。
「海外では転職を繰り返すのが普通」は本当か
アジア人材は厚遇を求めて転々と。日本は例外
転職を繰り返すことを英語で「ジョブホッピング」といい、ジョブホッピングする人をジョブホッパーと呼びますが、「繰り返す」とは、どの程度のことをいうのでしょうか。表現の発祥地であるアメリカでは一般的に2~3年以下のサイクルで職を転々としたり、転職の回数が4、5回以上になったりすると、ジョブホッパーと見なされるようです。
欧米では転職でステップアップするのが当たり前と、私たち日本人は思いがちですが、転職を“繰り返す”という点については、あえてそれを「ジョブホッピング」と表現するくらいですから、けっして当然視されてはいないのでしょう。特に、収入や技能の向上といった明確な目的がある場合はまだしも、漫然と転職を重ねたり、未経験の職種・職務を転々とするなど、キャリアビルディングにつながらない形のジョブホッピングに対しては、欧米でも実はネガティブな印象を持たれることが多いといわれます。
いずれにせよ、人材難が深刻化する中、企業側にとっては、時間と費用をかけて採用し教育した社員に、短期間でジョブホッピングされることは大きな損失でしかありません。また、そうした社員が同業他社を渡り歩くことで、情報やノウハウの流出につながりかねない点も問題視されるゆえんです。
近年は、海外とくにアジアの新興国に進出した日本企業が、幹部候補となる優秀な現地人材の確保・流失防止に苦しみ、現地化の推進に支障をきたしているというニュースをよく耳にするようになりました。少しでも待遇のいい勤め先があれば迷いなく転職を重ねる、現地のジョブホッパーに悩まされているというのです。新興国人材のジョブホッピングについては、13年にリクルートワークス研究所の荻原牧子研究員が発表した論文「彼らは本当に転職を繰り返すのか」に、興味深い調査結果が示されています。アジア8ヵ国と日米の20代、30代のビジネスパーソンに転職に関するアンケート調査を実施したところ、日米でも、アジアでも、転職を繰り返す人は“一部”でした。タイやインドネシア、マレーシアではその“一部”の割合が比較的多いものの、彼らが何度も転職を繰り返すために全体の転職率が引き上げられているのであって、新興国の人材全般にジョブホッピングの性向があるわけではないと考えられます。また、初職の退職理由については、日本を除くすべての国で「賃金への不満」がトップ。しかし日本では「賃金への不満」で退職した人はごく少なく、逆に最も多いのは「人間関係への不満」でした。日本では転職の回数が多いほど管理職である確率は下がりますが、他の国々では転職経験者が管理職である確率は、転職未経験者より高いか、もしくはほとんど差がありません。中途入社が生え抜きに比べて昇進で不利を受けやすいのは日本だけの話なのです。
参考文献:
リクルートワークス研究所・研究員 荻原牧子「彼らは本当に転職を繰り返すのか―アジアの転職実態,転職要因・効果の実証分析―」(Works review : リクルートワークス研究所研究報告)
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