オールド・ボーイズ・ネットワーク
オールド・ボーイズ・ネットワークとは?
伝統的に男性中心社会であった企業コミュニティーには、それぞれの組織内で培われてきた独特の文化や雰囲気、しきたりがありますが、それらは決して明文化されることなく、マジョリティーである男性メンバーの間で暗黙のうちに築かれ、共有、伝承されているのが普通です。この排他的で非公式な人間関係や組織構造を指して「オールド・ボーイズ・ネットワーク」と呼びます。社内派閥や飲み仲間、業界の勉強会、経営者の親睦団体などネットワークの形態はさまざま。男性がこうした人脈を通じて情報交換をしたり、ときに仕事上の便宜を図ったりしているのに対し、女性はほとんどの場合ネットワークからはずれているため、組織の文化や暗黙のルールも伝わりにくいといわれます。
女性活用を阻害する男社会の見えない絆
女性も積極的にネットワークの構築を
働く女性向けの月刊誌『日経ウーマン』がまとめた「企業の女性活用度調査」によると、2012年は前年に続き、日本IBMが“女性が活躍する会社”NO.1に輝きました。女性活用をはじめとするダイバーシティマネジメントを、同社が経営戦略として本格的に導入しはじめたのは1998年から。当時、日本企業の中で、同社の女性管理職登用数はすでにトップでした。しかしそれでも女性社員の割合はわずか13%、入社後5年以内の女性の離職率は男性の2倍に達し、管理職比率は男性の1/8に過ぎない――こうした実態は、IBMグループ全体の基準でみると最下位だったのです。
そこで社内に女性社員の能力活用に関する諮問機関「ウイメンズ・カウンシル」を立ち上げて、調査したところ、女性のキャリアアップを阻害する次の三つの理由が浮き彫りになりました。ひとつは社内に目指すべきロールモデルがいないため、自分の将来像が見えにくいこと。二つ目はワーク・ライフ・バランスの問題。そしてもうひとつ、阻害要因に挙げられたのが「オールド・ボーイズ・ネットワーク」の存在でした。
日本IBM初の女性取締役としてウイメンズ・カウンシルを指揮し、現在は日本企業のダイバーシティ推進に尽力するNPO法人J‐Win(ジャパン・ウィメンズ・イノベイティブ・ネットワーク)の内永ゆか子理事長は、かつてこんな経験をしたといいます。ミーティングに参加すると、男性社員の議論を聞いていても、何について話し合っているのかよくわからない。曖昧なまま議論が進行しているように感じて、最後に「結局、今日は何が決まったんですか」と尋ねると、そのたびに男性たちから嫌な顔をされたというのです。実はそうした会議は“顔合わせ”の意味合いが強く、何かを決定するための議論の場ではありませんでした。それが男性陣にとっては暗黙の了解であったことを、内永さんは後になって知ったのです。
いわゆるその場の“空気”や組織内の暗黙のしきたりにそぐわない言動をとった場合、男性の新入社員であれば、アフターファイブの飲み会などで上司や先輩から気軽に教えてもらえるでしょう。しかし女性にはそうした機会が少ないため、男性中心社会で培われた男性独特の組織文化についていけなくなるわけです。
女性社員がこの「オールド・ボーイズ・ネットワーク」の障壁を乗り越えるためには、企業側のダイバーシティ推進に頼るだけでなく、自らも男女を問わずネットワークを重視し、組織内のキーパーソンとの人脈を積極的につくるなど、女性自身の意識改革が必要と内永さんは述べています。
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