スパイト行動
スパイト行動とは?
「スパイト行動」とは、「自分が損をしてでも相手の利益を減らしたい」という心理傾向からくる行動のこと。「悪意」を意味する英語の「スパイト(spite)」に由来します。スパイト行動は、嫉妬や敵意が引き金になるケースが多く、利己的でも利他的でもない“第三の選択肢”と言われます。典型的な例は、「同僚の昇進を阻むために、自分の評価も下がるリスクを承知で、プロジェクトを妨害する」といった行為。スパイト行動が発生すると、チームワークを損ね生産性を削ぐなど、組織にさまざまな悪影響をもたらします。
職場に潜む“損して得させぬ”心理
スパイト行動の実像と処方箋
日本で「スパイト行動」という言葉を聞くようになったのは、コロナ禍のマスク着用問題がきっかけでした。マスクの着用は法律で義務化されていないにもかかわらず、未着用者に対して攻撃的な視線を向ける風潮がありました。「私は苦しい思いをしてまで着用している。だから、あなたも着用すべきだ」という心理によるもので、日本人特有の同調圧力が、スパイト行動を引き起こしていたのです。
職場においても、スパイト行動は珍しくありません。成績がふるわず開発チームのリーダーを外されたAさんは、新任リーダーに進捗データを共有せずプロジェクトを遅延させました。その結果、新サービスのローンチは2ヵ月延期。売上は目標に到達することなく、チームもAさんの評価も下がりました。誰の利益にもならないのに、「ライバルが成果を上げるくらいなら、全員で損をしたほうがましだ」という感情がAさんの行動を支配していたのです。
こうした行動が発生する背景には、(1)不公平感や嫉妬、(2)心理的安全性の欠如、(3)不透明な評価・報酬ルールがあると言われています。過去の研究でも、自分の取り分が他の人より不当に少ないと感じると、自分の報酬を減らしてでも他者の報酬を下げようとする傾向が確認されています。ある人の貢献によってチームの成績が上がれば、その人もチームもより多くの報酬(収益)を受け取ることができます。しかし、「誰かの得は自分の損」というゼロサム思考が広がると、スパイト行動が連鎖しやすくなるのです。
人事に求められるのは、評価の透明性を高め、不公平感を減らすこと。目標をOKRなど対話型で設定したり、定期的な1on1やピアフィードバックによりネガティブ感情を言語化できる場を用意したりすることで、心理的安全性が高まります。また、チームや組織の達成指標を個人の報酬に反映することで、「相手の成功が自分の得になる」というプラスサム構造を作ることができます。スパイト行動は“割に合わない”と認識されれば、足の引っ張り合いが起きにくい文化が醸成されるでしょう。
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