組織社会化
組織社会化とは?
組織研究において、新しく組織に加わったメンバーが、組織の目標を達成するために求められる役割や知識、規範、価値観などを獲得して、組織に適応していくプロセスのことを「組織社会化」といいます。個人が組織に参入するときは、必ずこの組織社会化の過程を通過しなければならないと考えられています。
急がれる新人の適応と“一人前”化
組織が変われば何度でも学び直しを
「組織社会化」とは平たくいうと、新参者が職場になじんで一人前になっていくプロセスのこと。新入社員がわかりやすい例として挙げられるでしょう。入社直後は学生気分が抜け切らず、右も左もわからなかった彼らが、新入社員研修を終え、それぞれの職場に配属される頃には、組織社会化の途上にあるわけです。
さらに平たくいうと「組織人になる」、あるいは「会社や組織の色に染まる」といった意味合いも含まれるでしょう。考えてみれば、新人教育とは本来、この「組織社会化」を図り、促す取り組みです。新人をいかに早く、効率的に組織に適応させて必要なスキルを習得させるか――直属の上司やマネジャーはもちろん、新人を迎えた現場のメンバーなら誰もが日々心を砕いているに違いありません。ビジネス環境が厳しさを増すなか、新人が自然と成長して一人前になるのを待つ余裕など、どの組織にもないはずです。
現に昨今、多くの企業で、新人の組織社会化をスピードアップさせる傾向が顕著になってきました。新卒内定者研修や入社時研修を早期化・強化し、メンター制度の導入やOJT制度の見直しを進めるなど、いずれもその方針に沿った施策といえます。新人の戦力化が急務であることだけが、理由ではありません。組織社会化が進まない、あるいは不十分な新入社員は、職場環境に適応できていない状態で働いていることになります。それが続けば、多くが“3年3割”といわれる早期離職の道を辿るか、メンタルヘルスの不調に陥りかねません。そのリスクを抑えるためにも、会社として組織社会化を強く促進し、職場への順応を急がせなければならないというわけです。
もちろんほとんどの場合、組織社会化のプロセスは、新人のときに一度くぐれば終わりではありません。終身雇用が当たり前だった時代でも、誰もが異動のたびに新しい組織や職場環境に順応する必要に迫られ、あらためて組織社会化され直していたのです。まして現在は雇用の流動化が進み、組織間の人材の移動が激しくなる一方、M&Aや事業再編も繰り返され、組織そのものが揺れ動いています。ひとつの組織で社会化され、せっかく一人前になっても、その組織自体が変化してしまうかもしれないのです。
組織社会化のプロセスを経て修得した知識やスキルは、その組織でしか機能しないものであることが多いといわれます。また一定の経験や能力を培っても、職場によってそれを発揮するための手続きや方法論が違うというケースもあるでしょう。前の職場での実績をかわれて栄転した人が、新しい職場で行き詰まり、ついにメンタルを害してしまった……というような話に触れると、組織社会化の重要性と難しさを痛感せざるを得ません。キャリアを積み重ねていくためには、私たちは何度でも学び直す必要があるのです。
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