垂直的評価
垂直的評価とは?
「垂直的評価」とは、上司と部下というタテの関係の中で行われる人事評価のことです。定義としては「部下が上司を評価する」意味も含まれますが、一般的には「上司が部下を評価する」ことを指します。多くの企業では、日常的・直接的に部下の指導監督にあたる直属の上司を第一次考課者として、一次考課者の監督者を第二次考課者として位置づける垂直的評価システムが考課方式の主流になっています。これに対し、同僚など組織階層上のヨコの関係で評価を行うことを「水平的評価」といいます。
上司と部下の評価をめぐる“溝”が拡大
若手は自分の仕事を細かく見てほしい
日本経済新聞社が実施した2011年「働きやすい会社」調査によると、ビジネスパーソンが働きやすい会社の条件として「非常に重視する」と答えた項目のトップ20には、「人事考課の結果伝達の有無、反論・修正機会の有無」(6位)「評価結果・目標達成度フィードバックの有無」(12位)「人事考課の評価基準公開の有無」(13位)など、評価や人事考課に関する条件が3項目ランクインしています。毎年行われるこの調査で、評価システムのあり方はここ数年つねに上位に挙がっていましたが、今回は特に「人事考課結果への反論・修正機会の有無」が前回の17位から大きく順位を上げました。
試行錯誤を繰り返しながらも、いまや多くの企業に成果主義的な評価システムが浸透し、上司の評価ひとつで同期でも給与や処遇に大きな差がつくのが当たり前になりつつあります。垂直的評価システムの中で、自分ははたして適正に評価されているのか――ビジネスパーソンが“上司の評価”に厳しい目を向け、必要ならば反論や修正の機会を得たいと考えるのは無理もないでしょう。
実際、評価する側はちゃんと評価しているつもりでも、される側が「いくら頑張っても評価を上げてもらえない」と不信感を募らせ、お互いの信頼関係に亀裂を生じるケースは少なくありません。査定の際のフィードバック面談で、評価者の管理職が被評価者の若い社員に激しく突き上げられるといったトラブルも増えているといわれます。
評価をめぐるギャップはなぜ生じるのでしょうか。理由の一つは、上司が部下を細かくチェックできていないことにあります。思えば、ほんの20年ほど前までは、職場の上司は部下を厳密に査定などしませんでした。若い社員も上司から事細かくマネジメントを受けることはほとんどなかったのです。むしろ若手のうちは育成期間と考えて評価に差はつけない、昇給も昇格も全員平等だから失敗を恐れずにチャレンジしてほしい――企業にまだ余裕があった時代に、そうした“大らかな体制”の下で育てられたのがいまどきの管理職世代でしょう。彼ら自身は、会社や上司からシビアにマネジメントされなかったにもかかわらず、部下の仕事ぶりを細かくチェックして、適正に評価しなければならないのですから、困難を伴うのは当然です。
とはいえ、垂直的評価は上司から部下という一方的な評価であるため、評価者としての上司個人のスキルに依存する部分が大きく、スキルのばらつきによって評価結果が不安定になる恐れも否めません。垂直的評価を適切に運用していくには、まず「部下の仕事ぶりをしっかり見る」という上司の評価者としてのマインド醸成が大前提。その上でチェックしやすい明確な評価基準の設定や、評価スキル向上のための評価者研修の実施なども検討する必要があるでしょう。
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